論文タイトル

40.東洋医学の小経験 ーほてり・のぼせ等の訴えへのアプローチー ーそれからわかった2~3の事柄ー

 

東洋医学の小経験

 

ーほてり・のぼせ等の訴えへのアプローチー

ーそれからわかった2~3の事柄ー

 

第4部 東洋医学ひぐちクリニック

 

樋口 理

 

 

手足のほてり・顔や上半身のぼせ等の訴えは、西洋医学では更年期障害の部分症状、或るいは自律神経失調症の診断はつくものの、積極的には治療できない訴えに入るものと思われます。東洋医学では、五心煩熱、陰虚、陰虚火旺、気分熱盛、肝鬱化熱などの概念とその治療法を使えば、10年以上悩んでいた症状を、早ければ1~2週間で解決することができます。そのような症例がかなり溜まりましたので、報告致します。

 

 

 

≪症例1≫O.Y. 63歳、女性

 

C.C.;のぼせ感と眩暈

 

P.I.;結婚して以降30年以上のぼせ感と眩暈の症状が有り、諸々の医療機関を受診検査したが、異常はなく、治療したが一進一退で、芳しくなく放置。ひょっとしたら、漢方や鍼治療でどうにかなるかもしれないと考え受診。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)、頸背部の凝りに置鍼。漢方薬は裏寒が強く、温裏剤投与し、棒灸を関元と大椎に施行。その後女神散を投与。3日後、のぼせ感と眩暈が軽減。「信じられない」と一言あり。1週間後、症状消失治癒配薬。

 

【コメント】
女神散は浅田宗伯の家方に属しますが、別名「安栄湯」と称し、女性の血の道専用処方です。ストレスから肝鬱化熱した状況に使うと著効を現します。嫁姑の戦々競々には持って来いの処方です。嫁姑の両方に服用して貰うと、お互いに優しくなります。不思議です。

 

 

 

≪症例2≫ K.G. 33歳女性

 

C.C.;のぼせ感と動悸、人込みに入るのが怖い

 

P.I.;1年ほど前より、上半身ののぼせ感と動悸、人込みに入るのが怖い感じが出現。
心療内科で自立神経失調症と診断され、投薬を受けるも変わらず。胃腸の調子がおかしくなり、当院受診。車の運転や買い物等ですぐ緊張し症状が出現するとの由。

 

【コメント】
動悸には桂枝加竜骨牡蛎湯の方が良さそうです。その方もやはりストレスが根本原因(肝鬱化熱)で加味逍遙散や女神散が効果的でした。

 

 

 

≪症例3≫K.S.72歳、男性

 

C.C.;足裏のヒリヒリ感、夜にひどくなる

 

P.I.;10年前より足裏のヒリヒリ感があり、複数の医療機関を受診したが、自律神経失調症、年のせいと言われ、治療法はないといわれた。ほっとらかしていたが、知り合いが同じ症状で治ったと聞いて受診。自分は以前よく足の裏にホッカイロをしていたので、低温やけどと思っていた。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。舌は紅(鏡面様)で無苔。腎陰虚として六味丸を基本に三物黄芩湯を併用。3日後、少し違って来た。1週間後気にならなくなった。

 

【コメント】
陰虚の典型例です。六味丸がヒットしました。漢方の手帳では病名は汎尿困難、頻尿、むくみ、かゆみです。これでは全く使えません。

 

 

 

≪症例4≫T.I. 74歳、男性

 

C.C.;足がホテッテ夜眠れない

 

P.I.;6年前から、足がホテッテ夜眠れないので、あちこち受診したが、原因はわからず自律神経失調症と言われ、睡眠導入剤を飲んでいるが、それでも気になって寝れない。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。舌は紅(鏡面様)で無苔。腎陰虚として六味丸を基本に三物黄芩湯を併用。10日程で、気にならなくなり治癒。

 

【コメント】
陰虚の典型例です。舌診が参考になります。この方は6年間睡眠導入剤を服用されていました。が、もっと早く治る治療法があるのにーー可哀想だと思いました。

 

 

 

≪症例5≫M.K. 71歳、男性

 

C.C.;左肩のこわばりとシビレ、手足のほてり

 

P.I.;数年前から左肩のこわばりとシビレが有る。手足のほてりは10年以上前から有る。どこで検査や治療しても変わらないので、ほったらかしている。家内が鍼治療と漢方で膝の調子がよくなったので、薦められて受診する。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。胸鎖乳突筋に圧痛著名で横刺施行。左肩のこわばりとシビレに対しては、八邪、天宗に吸い玉施行。漢方薬は疎経活血湯に桃核承気湯を加味。2週間ほどで軽減し、回旋も良好となる。手足のほてりは腎陰虚として六味丸を基本に三物黄芩湯を併用し、2週間ほどで気にならなくなる。

 

【コメント】
陰虚の典型例です。又左頸背部の痛みは血熱がらみですから、清熱剤を使用すると比較的早期に症状の軽減をみます。この付近は東洋医学で治療する方が効果的と思います。

 

 

 

≪症例6≫Y.O. 57歳、男性

 

C.C.;体がほてる、手足がほてる

 

P.I.;半年くらい前より体がほてり、手足がほてる感じが出現。検査したが異常なく自律神経失調症、男性更年期障害などと言われたが、治療法はない。時々漢方治療をしていたので、ひょっとしたらと思い受診する。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。漢方薬は六君子湯、六味丸、三物黄芩湯を投与。反応は今一つ。詳しく問診しなおすと、手足よりも胸の付近が熱いとの由。清熱の穴へ瀉法を施行。大椎より刺絡後吸い玉施行。漢方薬は黄連解毒湯に石膏を加味して投与。3日後だいぶ良い。1週間後治癒。

 

【コメント】
当初、陰虚として六味丸をベースに開始しましたが、経過が今一つで、実のほてりとして黄連解毒湯に石膏を加味し、効果をしめしました。最初は虚として治療を開始した方が失敗がないと思います。虚の方に黄連解毒湯を投与すると症状を悪化させて、とんでもない目に会います。

 

 

 

≪症例7≫Y.S. 73歳、女性

 

C.C.;足裏のほてり、尿漏れもある

 

P.I.;4~5年前から足裏のほてりが出現。ほてって寝れないので、サロンパスを貼って寝ている。友人から、漢方と鍼治療で手足のほてりがよくなったと聞き、受診する。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。腎陰虚として六味丸をベースに投与。1週間後かなり良い。サロンパスを貼らなくても寝れている。2週間後治癒。

 

【コメント】
隠虚の典型例です。尿漏れも陰性食品の制限と六味丸で起こらなくなりました。

 

 

 

≪症例8≫H.S. 72歳、男性

 

C.C.;ムズムズ足で不眠、イライラする、排尿障害もある、手足のほてりもある

 

P.I.;1年くらい前からムズムズ足で不眠で、治療しているが、一向に効かない。
医者からは『鬱病』かもしれないと言われた。全然変化が無く、疲れ果てたところ、友人から漢方や鍼治療も治療手段としてあるよと紹介されて受診。

 

治療&経過;目は血走っており、人間の正常は頭寒足熱で、バランスが狂い頭熱足寒で不眠やイライラ等の症状が出現すると説明。半信半疑ながらーー足はものすごく冷える感じが強いとの由。ムズムズ足症候群は、東洋医学では熱産制の治癒反応と説明し、夕食や入浴後寝る前の陰性食品の制限を指示。4日後にはムズムズ足は起こらなくなりました。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。裏寒強く、棒灸を30分施行。漢方薬は裏寒にたいして温裏剤を投与。目の血走りに黄連解毒を投与、4日後目の充血は消失。陰虚として六味丸、三物黄芩湯を投与。2時間位熟睡感が有った。その後は反応今一つ。不眠は心、排尿障害を腎として心腎不交として、清心蓮子飲をなめて貰うと非常に甘いとのこと。清心蓮子飲を中心に投与。すると翌日には夜眠気が出て来て、もう少しで眠れそうな気分がするとの弁有り。そしてーーH27年7月中旬の大分地震では筑後地区は3度の揺れでした。翌日受診され、本朝家族全員が地震で目がさめた話で盛り上がったのに、話に加われずに「自分一人が熟睡していて気付かなかった」と、嬉しそうに言われました。以後、グッスリ眠れており、不眠の訴えは止みました。又排尿障害の訴えも言われなくなりました。清心蓮子飲ーー不思議な効き方です。不眠と排尿障害と全く関係なさそうな症状を簡単に解決してくれました。日常臨床では漢方治療では1剤で複数の症状を解決してくれる事をしばしば経験します。西洋医学では、症状の数だけ薬剤が必要です。此のような症例を経験するたびに、ヒョットしたら西洋医学は対症療法のオンパレード?。東洋医学は本治(本当の原因治療)があるから、一剤で全く関係なさそうな諸々の症状を解決するのかもと一人勝手に愚推しています。

 

【コメント】
ムズムズ足が原因で不眠と思われていましたが、本態は心腎不交でした。目が血走っている時はイライラ感が強く、言葉も攻撃的かつ不満に満ちていました。安眠の穴を教えて、毎日指圧し、踵の失眠穴にお灸をするように薦めると、精神的に安定され穏やかになられました。そして清心蓮子飲は非常に甘く、一剤で問題を解決してくれました。漢方治療では甘く感じる処方がヒットの可能性が高くなります。そして、味が不味くなれば証が変わった証拠です。今後は、腰の手術後、左の前脛骨筋が委縮して下垂足を呈しているので、脾の治療と足三里へのお灸を予定しています。

 

 

 

≪症例9≫K.S. 53歳、女性

 

C.C.;首から上ののぼせ&ほてり感、睡眠薬を止めたい

 

P.I.;2~3年前から首から上ののぼせ&ほてり感が出現。近医で更年期障害と言われホルモン剤投与を薦められたがーーー。ここ5~6年睡眠薬を飲んでいるが息子の体調が漢方薬や鍼治療で良くなったので、薦められて受診。

 

治療&経過;顔面の紅潮が有り、目も充血。人間の正常は頭寒足熱で、バランスが狂い頭熱足寒で不眠が出現すると説明。陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。漢方薬は黄連解毒、白虎加人参湯を投与、すると、1週間後首から上ののぼせ&ほてり感はかなり良い。それとともに睡眠薬を使わなくても、6時間は眠れている。起き醒めの感じや眠りの深さが全然違う。2週間後治癒廃薬。

 

【コメント】
この方は、実ののぼせ&ほてり感でした。人の正常は頭寒足熱で、バランスが狂い頭熱足寒になると不眠が出現しますから、首から上ののぼせ&ほてり感がとれれば、自然に寝れるようになります。人の体内には、朝太陽の光を浴びると、14~5時間後には眠気が来るようなリズムがあるそうです。かなり多くの方が、睡眠導入剤を日常茶飯事服用しておられますが、体内リズムを自分で壊しているのではないかと考えています。

 

 

 

≪症例10≫Y.B.61歳、女性

 

C.C.;顔の赤みとほてり感、手足のこわばり感もある

 

P.I.;2~3年前から顔に赤みがある。酒皶と言われた。ほてり感もある。入浴後顔が赤くなる。20日前より漢方薬局で清上防風湯を服用しているが、変わらない。主人から薦められて受診。

 

治療&経過;陰性食品を制限、特にアイスクリームを制限。顔面の赤みは砂糖やピーナッツなどが災いすると説明。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。
清熱穴にも置鍼。漢方薬は裏寒に附子理中湯、清上防風湯20日服用でも効果ないため、梔子柏子湯を併用。1週間後ほてり感は消失。手足のこわばり感に対しては、夜8時以降の水分摂取が大きな原因と説明し、水分制限を指示。3日後には軽減する。顔の赤みは反応今一つなので、処方変更し肺熱として麻杏甘石湯をベースに投与。更にパワーアップするために麻杏薏甘湯に四物湯を加味して、加療。入浴後の赤み軽減と効果を示しつつあります。

 

 

 

【症例のサマリー;年齢・性別;症状・西洋の病名・東洋の証;漢方薬】

 

症例1;63歳、女性;のぼせ感と眩暈;?・血の道、肝鬱化熱;女神散

 

症例2;33歳、女性;のぼせ感と動悸、人込が怖い;自律神経失調症・血の道、肝鬱化熱;加味逍遙散や桂枝加竜牡蛎湯・女神散

 

症例3;72歳、男性;足裏のヒリヒリ感、夜にひどくなる;自律神経失調症、年のせい・腎陰虚;六味丸を基本に三物黄芩湯

 

症例4;74歳、男性;足がホテッテ夜眠れない;自律神経失調症・腎陰虚;六味丸を基本に三物黄芩湯

 

症例5;71歳、男性;左肩こわばりとシビレ、手足ほてり;?・腎陰虚;六味丸を基本に三物黄芩湯

 

症例6;57歳、男性;体がほてる、手足がほてる;自律神経失調症、男性更年期障害・五心煩熱;黄連解毒湯に石膏を加味

 

症例7;73歳、女性;足裏のほてり、尿漏れ;?・腎陰虚;六味丸を基本

 

症例8;72歳、ムズムズ足で不眠、イライラ、排尿障害、手足のほてり;ムズムズ足症候群、不眠症・腎陰虚、心腎不交;六味丸を基本、清心蓮子飲

 

症例9;53歳、女性;首から上ののぼせ&ほてり感、睡眠薬を止めたい;更年期障害・熱毒;黄連解毒、白虎加人参湯

 

症例10;61歳、女性;1)顔の赤みとほてり感、2)手足のこわばり感;1)酒■・熱毒;梔子柏子湯、2)水毒;水分制限 1)→肺熱;麻杏甘石湯+麻杏薏甘湯+四物湯

 

 

 

◆◆そこからわかる2~3の事柄◆◆

(1)上半身のぼせ・顔ほてりは、虚は血の道・肝鬱化熱で、実は熱毒・肺熱で解決出来る。
(2)手足のほてりは腎陰虚で解決出来る。
(3)寒・熱の概念とその治療法が有効である。

 

H27.7.21投稿

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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