論文タイトル

13. 東洋医学治療の小経験 一シビレ・むくみ・こわばり等一

13.東洋医学治療の小経験一シビレ・むくみ・こわばり等一


東洋医学治療の小経験
一シビレ・むくみ・こわばり等一

第4部会 東洋医学ひぐちクリニック
       樋口  理

 

 西洋医学一辺倒の時、ーシビレ・むくみ・こわばり等ーという訴えは言われても解決方法のない不定愁訴に近いもので、良い印象はありませんでした。
先輩からは、ムンテラムンテラと言われ、笑いを取ってお茶をにごし、積極的に治療などとは--考えつかず、ほとんど取れにくい症状と思っていました。

 東洋医学の門を叩き、漢方更に鍼灸の世界を知ると、西洋医学では考えられないような事が、いとも簡単に出来ることのすばらしさに感動しどっぷりとはまりました。
 西洋医学では、シビレの原因は神経がどこかで圧迫されて生じ、手術してもなかなかとれないで残りやすい症状として定着しています。むくみは、立って仕事していれば大なり小なり起こる現象で、そんなに重要な事ではない。こわばりはリウマチの部分症状の一つ、あるいは使い過ぎ---

 東洋医学では、全て『水毒』。西洋医学にはない概念ですが、体内に水が停滞、溜まると考えます。もし水が溜まると仮定すれば、重力の法則で一番低い所(手足の末梢の未端)に溜まります。シビレ・むくみ・こわばり等の訴えがどこに多いか一手足の未梢に圧倒的に多いと思いますから、重力の法則と一致しています。そして、床上浸水理論で中枢側へ溜まり、治るときは床下へ水が引いていく様なイメージで症状が軽減して行きます。

 先ず、シビレについて考えてみます。長時間正座をすると足がシビレて立てなくなった経験をお持ち方もいらっしゃるかと思いますが、このしびれは神経がらみなのか?
脚を延ばすとしびれは比較的短時間でとれ、そのとき脚が温もるような感覚が伴うこともあります。脈管が圧迫されおこるかな?ボーリングをしすぎて指がしびれる。edgeで直接神経を圧迫が原因か。結構症状が永く続きます。手根管症候群のシビレ:TVの健康番組では手を挙上してグーパーグーパーすると現象論としてシビレは軽減すると説明していますが、何故軽減するのかは?。

東洋医学では停滞している水:重力の法則で下へ動くからと説明し理解できると思います。

 むくみ・こわばりも同様に東洋医学では水が溜まりむくみ、内圧があがるためにこわばると考えます。従って東洋医学的には、シビレはその多くは神経がらみの症状ではなく、又、むくみ・こわばりと同様軟部組織に水が入り込み内圧が上がった圧迫症状と考えられます。これを『水毒』と言います。
西洋医学では、神経がらみの症状としますから、病名は坐骨神経痛、腰部脊柱管狭窄症、頸椎症性神経根症、手根管症候群などとなります。

 治療方法は、水分制限を柱に軟部組織より水を抜き内圧を下げるという事になります。
漢方薬の世界ではシビレは血虚(これもまた独自の概念です)であり、色々チャレンジしましたが、なかなか難しく限界かなとあきらめムードでした。が、鍼や刺絡(瀉血のことです)の世界をしり、チャレンジしてみると反応あり。それも鍼治療の15~30分という短時間で患者様が実感されます。

方法は、先ず仰臥位での指の間に鍼をします。手にするのは八邪、足にするのは八風といいます。鍼をすると気・血・水(東洋医学の概念ですが)が動きますから、シビレ・むくみ・こわばりの原因の水も動き、症状は軽減するという訳です。
但し、気・血・水は体のくびれの箇所で滞るという原則がありますから、その処置も必要です。一番大きなくびれは頸部ですから、この部位の処置が最重要となります。体幹と上肢、体幹と下肢の繋ぎ目の処置ももちろん大事です。

最近経験した症例で、その治り方の経過、指導内容を示します。

 

症例1】安◇清◆:75歳、女性
C.C.:腰痛症、右手指~上肢のシビレ感、こわばり感
P.I.:2ヶ月前より、腰痛出現。ほぼ同じころより右手指~上肢のシビレ感、こわばり感出現。シビレ感はだんだん範囲が広がりひどくなり、とれない。

治療、経過:
 8/9  :初診、先ず食事チェック

  朝       昼      夕
  飯        飯       飯
 みそ汁    野菜炒め   野菜炒め
緑茶1~2杯  緑茶1杯  緑茶又は水1杯
    10時      3時    寝る前
    緑茶      水150cc   水1杯
    又は水150cc 
緑茶、水をできるだけ制限うがい程度と指示

シビレ:鍼治療は八邪(指の間)、肘に灸頭鍼、天窓(肩甲骨棘下
     のツボ)に刺絡後吸い玉
   :膝3穴(肘にある腰痛のツボ)に置鍼15分し、腰以下の運動
     をする
     遠位置針一患部運動と言います。
処方  朝      昼       夕
    六君子湯  薏苡仁湯    八味丸
           桂枝加朮附湯 桂枝茯苓丸

8/10:腰痛、シビレ共やや軽減、同処置
8/12:同処置 
お盆でちょっと間があいて
8/21:腰痛はよい。シビレ上肢はない。指の付け根(MPj)から先に
    シビレあり。
8/22:こわばりもよい。仕事をするとシビレが強くなる。
    汗かくので、水分取っている→更なる制限指示
8/23:手指のシビレは指の付け根からあったが、先の方だけになっ
    た。
    いつもの処置に加えて『火針』(タングステン鍼を真っ赤に焼
    いて速刺速抜:経絡の流れを良くし、更にアイロンをかける
    意味がある)を施行。直後に「どうですか?」と聞くと、指先を
    何度も擦り合わせて「シビレは、あら?無い」との弁あり。
8/30:シビレは、火針後生じていない。

コメント:本例のような経過一床上浸水理論で一更に水が床下へ引いて行くイメージで治って行かれます。

 

【参考】『火針』について
(1)『霊枢』経節編では
   「火針を速刺速抜せよ。知るを似て数を為す。痛を似て
   兪と為す」
   (火針は速刺速抜し、効果があれば、それで治療を終え
   なさい。痛い所が治療点である)と述べられている。
(2)高知県の西田皓一先生は、火針の五つの効果機序をあげられ
   ている。
   ①火を用いて扶正助陽・温通経絡する。
   ②皮膚に穴を開けて邪気(お血や水気、余分な熱)を除く
   ③熱を用いて熱邪を取る
   ④痛みと痒みを取る
   ⑤麻痺を取る。
(3)賀普仁氏は、三通法を
   ①微通法(刺針、皮内針)
   ②温通法(施灸、灸頭針、火針)
   ③強通法(刺絡)
    と述べられている。
    が『火針』を使った経験からは
    この三つを備えた最高の強通
    法であると考えています。

 

症例2】U.N.:59歳、女性
C.C.:右肩痛、右栂指シビレ
P.I.:本年3月より、右栂指シビレ出現。右肩痛もあり、頸が原因と言われ、治療しているが、シビレ、痛み共にひどくなるため、漢方でどうにかなりませんかと依頼あり。

治療&経過:
8/2:受診。食事チェック
      10時        3時       入浴後
   朝        昼       夕

 緑茶1杯     冷麦茶2杯   冷麦茶2杯
     冷麦茶5~6杯  冷麦茶5~6杯   ジュース1杯
 
                           冷麦茶1杯
→1日19杯水分摂取
緑茶、冷麦茶などの制限を指導

治療:右手に八邪、肘に灸頭針、頸肩部の凝りに針、天窓に刺絡後吸い玉
処方  朝      昼       夕
    六君子湯  薏苡仁湯     薏苡仁湯
           桂枝加朮附湯  桂枝加朮附湯

8/6:右手のシビレ感じが違ってきた。同処置施行。
8/10:よい
8/16:ほんの少し指尖にシビレあり。当初の2~3/10
   麦茶を少し飲んでいるとの事。再度制限指示。
8/22:ほとんど気にならない。同処置に井穴刺絡追加。
8/27:物にあたるとジーンとしていたが、しなくなった。
   シビレほぼ消失。

コメント:床上浸水理論で一床下へ水が引き指尖にシビレが残っている時は、井穴刺絡か火針で皮膚表面を撫でるようにする(アイロンをかけるの意です)とシビレは消失します。

 

症例3】H.S.:76歳、男性
C.C.:両足のつり、シビレ
P.I.:半年前より、両足がつるようになり、またシビレもあり、整骨院で治療しているが、よくならない。以前腰部脊柱管狭窄症と言われたことがある。

治療&経過:
7/12:受診。食事チェック。
     10時    3時   入浴後 寝る前
  朝      昼     夕

 ヨーグルト  おかゆ  おかゆ
  牛乳1   ヨーグルト 青汁1
  緑茶2   バナナ1  トマトジュース1
トマトジュース1    水1
                   水1   冷水1
→冷水小まめにとる習慣あり
上記の陰性食品を極力制限を指導

 
普段より、胃腸の調子が悪い--裏寒
治療;百会、関元に棒灸。足三里に灸頭針。足に八風など
処方朝      昼      夜
 附子理中湯 附子理中湯 牛革腎気丸
  真武湯   真武湯    九味檳榔湯

7/16:足のつりは減ってきた。
7/17:足のシビレに対して八風
7/20:シビレは足栂指先に少しあるのみ。井穴刺絡を追加
処方朝      昼      夜
 附子理中湯 牛革腎気丸 牛革腎気丸
  真武湯  九味檳榔湯 桂枝茯苓丸

7/26:足のつり起こってない。
   足のシビレもほとんど気にならない。
   忘れていたが、胃腸も調子がかなりよくなった。

コメント:漢方薬や鍼灸は取っ付きにくく、敷居が高い。まゆつば物で信用しないと言われる方もいらっしゃると思いますが、そう言われる方でも患者様は“体を冷やす“陰性食品を知らずに摂取していますから、陰性食品の制限を指導されるだけで、皆さん体調が良くなります。どうぞ、試されてみて下さい。

 

症例4】足のむくみを訴える方々
治療&治療経過
水毒--水分とりすぎが圧倒的に多く、制限の指示のみで2~3~4日でコロット違ってきます。

鍼治療:三陰交・陰陵泉などの穴位に針刺入し雀啄(雀が嘴で啄むようにリズミカルに針を上下に動かす手技)をすると、多くの方は直後に足が軽くなったと言われます。八風を併用すると効果的です。更に、火針、刺絡等で、最後の仕上げととなりますが、足裏の訴えは難しいです。

漢方治療:各種利水剤をうまく使えば、かなりいけると思います。

(H25.9.30投稿)

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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