論文タイトル

14. 東洋医学治療の小経験 ―耳鼻科編

14.東洋医学治療の小経験 ―耳鼻科編

 


東洋医学治療の小経験
――耳鼻科編――
第四部 東洋医学ひぐちクリニック
     樋口 理

 

  西洋医学の元整形外科医には、耳鼻科はまったく畑違いですが、やはり諸々の講習会に出席しているうちに、いつのまにか少しずつ対応できるようになりました。
日本には、耳鼻科の限界を感じて、漢方でめまい・耳鳴り・花粉症などに積極的にチャレンジされている先生が何人もいらっしやいます。そんな先生方の講演内容のポイントを先ず紹介し、次いで自験例を呈示します。
第6版〔2009〕鼻アレルギー診療ガイドラインには巻末に葛根湯、柴朴湯、小柴胡湯、小青竜湯、の4剤が掲載されています。が使おうと思えば有効な漢方薬は沢山あります。(今回紹介するのが36種類)。数字は漢方薬の番号です。(最後に一覧表を作ります)

 【漢方薬編】
 愛媛県のK先生の講演会の内容を中心に紹介します。
・メニエル氏病;なかなか治せない。平行検査は無意味。
          イソバイド、ノリスロン、アディフォス→効果? 39
・めまい;①起立性調節障害(たちくらみ) 37,39
      ②高齢者のフラッキ 30,30+沢瀉末
      ③中枢性めまい 47,47+天麻末
      ④更年期障害に伴うめまい 23,24,25+39
      ⑤高血圧性めまい 西洋薬がファーストチョイス15

・回転性めまい;嘔気(+)→17
          嘔気落ち着く→39+天麻末
          →救急車で搬送されるめまい
          の方、入院が減ります。(IM先生)
・咳;104
・副鼻腔炎;抗生物事単独では無理。

        急性;2
        慢性;50--著効!!!
・治りがたい咳;29,91,93,104
  29;イガラッポク発作性乾燥性の咳、
  91;インフルエンザ後の咳
     痰、イライラして夜寝れない、
  93;布団に入ると咳き込む、
  104;エヘン、クンクンと鼻をならす
・口腔内乾燥症;人口唾液効かない。 29,34,93
小児の感染症;小児科でも治らない例;80
①耳下腺腫脹、リンパ節腫脹伴う発熱、喀痰などの症例
②難治性中耳炎、副鼻腔炎、喘息様気管支炎
③抗生物事の量を減らせる
・耳漏;122
・咽喉頭異常感症;16,29,9+324、24
・逆流性食道炎;43,35+16,116
・耳管開放症;西洋医学には治療法無し。
         137,24,9+324,34
・耳閉感;9+70⇒結果良く効きます。
・耳閉;2
・後鼻漏;真性後鼻漏;量と性状が変化
      (鹿児島県のU先生)
      粘性・粘膿性;104
      粘性・槳液性;14
      仮性後鼻漏;自覚症状のみ
      訴えが粘性;29+16
      訴えが槳液性;9+16
・耳鳴り;西洋医学には治療法無し。(IN先生)
柴胡剤;12+15(25,61)、8+113、9+70,10+39、
       11+26
駆お血剤;24+39、24+71、39+71,25+57
腎虚;7,107,87+39,107+37,87+70
・臭覚異常;煎じ薬で麗沢通気湯、加味八脈散等
       (山口県のI先生)

漢方薬一覧表
2;葛根湯加川芎辛夷、7;八味地黄丸、8;大柴胡湯、9;小柴胡湯、10;柴胡桂枝湯、
12;柴胡加竜骨牡蛎湯、14;小半夏加茯苓湯、15;黄連解毒湯、16;半夏朴湯、
17;五苓散、23;当帰芍薬散、24;加味逍遥散、25;桂枝茯苓丸、26;桂枝加竜骨牡蠣
湯、
29;麦門冬湯、34;白虎加人参湯、35;四逆散、
37;半夏白朮天麻湯、39;苓桂朮
甘湯、43;六君子湯、47;釣藤散、50;荊芥連翹湯、57;温清飲、61;桃核承気湯、
70;香蘇散、71;四物湯、80;紫胡清肝湯、87;六味丸、91;竹筎温胆湯、
93;滋陰降火湯、104;辛夷清肺湯、113;三黄瀉心湯、116;茯苓飲合半夏厚朴湯、112;排膿散及
湯、137;加味帰脾湯、
324;桔梗石膏

 

【鍼灸編】
耳痛;手足の少陽経の穴位と耳後の翳風、耳前の耳門・聴会・聴官などに鍼をするとほとんどとれます。
咳、咽喉部の嚥下痛;手太陰肺経の少商への井穴刺絡をすると、その場で軽減消失します。
鼻水・鼻閉・咳;大椎への棒灸で軽減消失します。
鼻閉;迎香、清明、上星ーー多くの方は上星に鍼を刺入した瞬間に鼻が通ります。

耳鳴り;(中医学のS先生)
やせ型;陰虚多い。気血両虚もある。
    腎陰虚型;足腎経の太溪穴が有効
すぐ効くタイプ;3種類あり
     ・腎陰虚型;太溪、三陰交、聴会
     ・少陽胆熱型;外関、中渚、陽陵泉、風池
     ・頸性;養老、陽陵泉、太溪、風池、天柱
◆◆鍼治療も漢方治療も、患者さんの自律神経バランスをより良好な状態へ誘導できるかどうかが、治療の鍵となります。其の際、『冷え』に対する処置と頸背部の凝りの処置が最も重要となります。

 

症例1】 ◆塚◆貴7歳、男性
C.C.;アトピー性皮膚炎、副鼻腔炎
P.I.; 3歳頃よりアトピー性皮膚炎があり、
     諸々の治療をしたけれどもよくなら
     ない。最近漢方薬局で薬をもらって
     いるが、今一つとの事。
     H24.4.から副鼻腔炎もあり治療
     しているが--漢方で治して欲し
     いとH25.4.23.受診。治療開始。
     両方一度には無理と説明し、先ず
     アトピー性皮膚炎の治療開始。
     冷える食品を制限し、白米をファン
     ケルの発芽米に変更。7月にはか
     なりきれいになり、7.19より副鼻
     腔炎の治療開始。

治療&経過;
H25.7.19.緑色の鼻水が頻繁にでるとの由。莉芥連翹湯1包
         (1×朝)
    7/26.鼻水の出方が減ってきた。色も少し薄く
         なってき た。
    8/2. 調子が良い。
    8/9. 透明の鼻水が少し出るくらいになった。

コメント】副鼻腔炎の症例は多くはありませんが、荊芥連翹湯で3年10年の副鼻腔炎も季節にあった食事指導をしながら徐々に改善していきます。西洋でうまくいかない時に東洋で救われることがあります。ちなみに、愛媛のK先生の演題は、『私を救ってくれた漢方』でした。医者も救われ、患者も救われるということです。K先生のデーターは臨床の裏づけがあり、耳鼻科領域で相談され困った時の私のお助け船になっています。

 

症例2】中◆好◆ 74歳、男性
C.C.右肩関節痛治って耳鳴りの治療を希望
P.I.10日前朝起きて洋服を着ていたら、急に
    右肩が抜けるような痛み出現。
    近くの整骨院で治療しているが、
    かんばしくないとH23.3.4.受診。

治療&経過
H23.3.4.右肩関節の痛みは水毒と考え、水分チェック。

      漢方;朝       昼        夕
        二朮湯    苓桂朮甘湯   二朮湯
       桂枝茯苓丸  疎経活血湯  疎経活血湯
   鍼治療;右手に八邪、右肩に灸頭針、頸背部の凝りに鍼治療
H23.3/8.右肩関節の痛みは良くなった。
 耳の鍼治療されている方を目にされ、何の治療かと尋ねられ耳鳴りの治療と説明すると、自分にもして欲しいと云われる。20年前より耳鳴りがあり、諸々の治療を試したが効果なく、あきらめていたとの事でした。赤ら顔で目が赤く血走っていました。

 

    漢方;  朝       昼      夕
       竜胆瀉肝湯 竜胆瀉肝湯  六味丸
鍼治療:肝経の栄火穴に置針
3/15.赤ら顔少し減ってきた。同鍼治療
3/23.耳鳴りの音が減ってきた。同鍼治療
目が赤く血走っているのが消失。
漢方:   朝      昼      夕
    苓桂朮甘湯 黄連解毒湯  六味丸

4/13. 耳鳴り良かったり悪かったりしている。緑茶と晩酌を制限指示。同鍼治療
4/20. 大きな音がしなくなった。同鍼治療
5/11. 耳鳴りがしない時間が増えてきた。同鍼治療
6/9.  調子が良い 同鍼治療
7/21. 耳鳴りほとんどない。顔の赤みもほとんどない。同鍼治療
漢方:   朝      昼      夕
    苓桂朮甘湯 黄連解毒湯  六味丸

1/2減
8/11. 調子良い
9/14. 8月末から耳鳴りが起こっていない。廃薬。
コメント】私にとって、初めての耳鳴り症例です。この方がどうにかうまく行き、自信になり、その後の症例にも応用しています。水毒、熱毒、腎虚の例です。

 

症例3】松◇京◆ 56歳、女性
C.C. ;耳鳴り
P.I.;約3ヶ月前より右耳鳴り出現。高い金属音で気になってしかたない。耳鼻科や脳外科で精査するも特に異状なし。漢方や鍼でどうにかなりますかと依頼あり。
H25.5.16.受診。この方は以前より鍼や漢方治療をよくされています。
治療&経過
H25.5.16.;右上半身の症状は水毒が多い事より先ず水分チェック。
   10時      3時       寝る前
朝        昼       夕

コーヒー    緑茶       緑茶
          グレープフルーツ   ヨーグルト
             ジュース
先の陰性食品を極力制限

針治療;太溪に灸頭針、手足の少陽軽の穴位と、耳後の翳風、耳前の聴会に置針。
漢方;朝一苓桂朮甘湯 夕一七物降下湯
5/18.昨日より朝のみ耳鳴りがあり、昼間は減ってきた。
苓桂朮甘湯は甘い。鍼同処置
漢方;朝一苓桂朮甘湯 夕一苓桂朮甘湯
5/23.雨の日に耳鳴りがした。鍼同処置
5/27.耳鳴りだんだん良い。鍼同処置
5/31.耳鳴り気にならない方が増えてきた。鍼同処置
6/12.いい日と悪い日がある。雨の日がよくない。
鍼治療;耳後に棒灸追加。
漢方;朝一苓桂朮甘湯+沢瀉末1g 夕一苓桂朮甘湯+沢瀉末1g

6/21.今週は良い日が多かった。
6/27.ほとんど気にならない。その後耳鳴りはおこっていません。

コメント】右上半身の症状は水毒と考えているのにーー。雨の日に悪くなるのも湿度の関係ですが、5/23の雨の日に見逃し、6/12に気づき処方変更し棒灸(熱で水を飛ばす乾かすの意+経絡の疎通をよくするの意)追加しました。それでどうにか治まりましたが、もっと早く治っていたかもしれません。苓桂朮甘湯は利水剤で水毒の耳鳴りです。

 

症例4】井◆シ◆カ 71歳、女性
C.C.;めまい、嘔気、右耳鳴り、時々フラーットして耳がつまる
P.I.;1年前の冬からめまい・嘔気・右耳鳴りがあり、時々フラーットして耳がつまる。頭がフワーットして耳がつまり、一瞬自分がどこに居るか分からなくなる時がある。色々検査したが、どうもないと云われた。治療法もわからず、漢方で治療できればと思いH23.12.19受診。

治療&経過
H23.12.19.めまい、嘔気、右耳鳴りは水毒を疑い、食事チェック
    朝     昼    夕
    トマト    トマト   ミカン
    緑茶3   緑茶3   緑茶3
上記の陰性食品を極力制限を指示
鍼治療;太溪に灸頭針、手足の少陽軽の穴位と、耳後の翳風、耳前の聴会に置針。

漢方;   朝       昼        夕
    苓桂朮甘湯  苓桂朮甘湯  八味地黄丸
                      十全大補湯
12/22.フラットする感じが違ってきた。右の耳鳴りも音が少し違う。鍼同治療
12/26.頭がフワットして耳がつまり、一瞬自分がどこに居るか分からなくなるのも何か違ってきた。鍼同治療
12/29.ボーット、フラーットの感じが以前より良い。耳鳴りも小さくなり気にならない事もある。夜間耳鳴りで目が覚めていたのが覚めなくなった。鍼同治療
H24.1.5. かなり調子良い。胃の調子も良くなった。鍼同治療
1/18.耳鳴りない時もあり、忘れている感じ。当初の3~4/10残っている。鍼同治療
1/27.耳鳴りが小さくなった。鍼同治療
2/8. 右耳に霜焼けができた。投薬変更。患部に刺絡し点刺出血。
      朝         昼       夕
当帰四逆加呉萸生姜湯 苓桂朮甘湯  八味地黄丸
    桂枝茯苓丸              桂枝茯苓丸

2/14.右耳霜焼けだいぶ良い。背部の細絡(皮膚表面に浮き上がっている紫色の細静脈)に刺絡後吸い玉施工。
2/20.耳鳴り忘れる事が多くなってきた。鍼同治療
3/12.昨日は耳鳴りが全くなかった。鍼同治療
3/22.耳鳴りいい時と悪い時とある。鍼同治療
       朝      昼       夕
  桂枝加朮附湯  苓桂朮甘湯  八味地黄丸
                      十全大補湯

4/12.調子良い。鍼同治療
4/21.耳鳴りほとんどない。廃薬。
コメント】めまい・嘔気・右耳鳴りがあり、時々フラーットして耳がつまる。頭がフワーットして耳がつまり、一瞬自分がどこに居るか分からなくなる。こんな訴えを云われても、西洋医学では、不定愁訴として片付けられそうですが、東洋医学では対応可能、治療の手を差し伸べられます。陰性食品の制限を柱に鍼と漢方でどうにかうまくいきました。水毒、腎虚、気血両虚の例です。

 

症例5】祝◆知◆ 37歳女性
C.C;子供の頃より、副鼻腔炎があり、かゆくなりヒリヒリして困る
P.I.;子供の頃より副鼻腔炎があり、色々治療したが今一つで、最近は漢方治療しているが、かゆくなりヒリヒリして困っている。痰もよく出る。H25.8.26.紹介受診

治療&経過
H25.8.26.副鼻腔炎は東洋医学ではやはり水毒を疑いますから水分チェック。
前医の処方は朝;補中益気湯、昼夕;荊芥連翹湯
     10時     3時       寝る前
  朝       昼       夕

  冷麦茶1   冷麦茶1    緑茶2 
     冷麦茶    冷麦茶      冷麦茶
     お菓子    お菓子       お菓子
鍼治療;迎香、清明、上星に置針15分
先の陰性食品を極力制限を指示

漢方;     朝          昼         夕
      補中益気湯    荊芥連翹湯   荊芥連翹湯
                1/2黄連解毒湯 1/2黄連解毒湯

9/19.鼻のかゆみとヒリヒリはおきなくなった
コメント】かゆみとヒリヒリは熱ですから、清熱の黄連解毒湯を少量たしました。症状は簡単によくなりました。
補中益気湯は何故使うか?五行学説では肝→心→脾→肺→賢、相生関係と云い、肺→大腸→皮→鼻→毛:肺は大腸と表裏関係にあり、大腸・皮・鼻の病気は肺の治療をすれば治っていくと考えます。脾(母)→肺(子)は経過が長いと子病は母に及ぶと考え、此の場合は肺(子)の治療をするよりも脾(母)の治療をした方が効果的と考えます。補中益気湯は脾をよくします。此の方は前医で長く此の処方を服用されており脾(母)→肺(子)の関係は充分良好な関係になっていたため、黄連解毒湯を少量加えただけでスーット治っていかれました。東洋医学がバランスの医学と云われる理由が此処にあります。バランスが修正されると、自然治療力で勝手に治っていきます。

 

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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【院長】樋口 理
【TEL/FAX】0943-23-2765
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