論文タイトル

16.東洋医学治療の小経験 -交通事故後遺症-

16.東洋医学治療の小経験 -交通事故後遺症-


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東洋医学治療の小経験
 -交通事故後遺症-

第4部東洋医学ひぐちクリニック
                樋口 理
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 西洋医学一辺倒の時は交通外傷がらみの訴えは、湿布・痛み止め・筋弛暖剤・循環改善剤など投与していても、言われても解決方法のない訴えで、対応困難で積極的に解決しようとしてもできない、あまりいい印象のない分野でした。最後に後遺症診断をして打ち切りというパターンで終了。しかし、漢方の世界の駆お血剤を知り、針や刺絡・吸い玉の世界を知るとかなりのところまで、対応できます。欧米では交通外傷の初期に鍼治療が優先されると聞いています。(中国では、脳出血・脳梗塞の初期に十宣という指先のつぼより刺絡が一般的です)

 当院でも初期に必ず針と吸い玉を施行します。早ければ、直後に後屈の痛み(一般的には最後まで残る事が多い)が軽減消失します。患者様は「ウソ」「あれ?痛くない」「何ですかこれ??」と言われる事が多く、西洋医学の解剖に相当する経絡を良くする治療ですと説明し、中国・韓国・欧米ではこれが普通と聞いていますと言うと「フーン」「知らなかった」と不思議そうな、合点のいかないような表情をされます。しかし、知らなかっただけで、自分の体で実感されていますから効果はわかり、次回からリクエストされる方もいらっしゃいます。そんな訳で東洋医学の治療中心に切り替えてからは、後遺症診断はほぼゼロになりました。また早期に治癒へ持ち込めます。

 後遺症診断されても、残存症状はその方を苦しめると思います。後遺症診断した残存症状は、西洋医学で精一杯治療しても解決できなかったおてあげの症状と考えられます。
そういう方々が、諦め切れずに「漢方と針でどうにかなりませんか?」と時々受診されます。西洋医学一辺倒の時であれば、丁重におことわりすると思いますが、東洋医学では、保証はできないけれども積極的に治療はできますよと手を差し伸べれます。そのような自験例を示します。

症例1)42歳、男性
C.C.;左口角から汁が漏れる
P.I.;交通事故(正面衝突)後、後遺症診断済み。更に8ヵ月しての受診でした。
治療&経過;鍼治療は四関穴・三気海で調気。頸背部の凝りに置針。口角は陽明経なので原穴に置針。漢方駆瘀血剤を投与、除々に漏れが少なくなり2週間ほどで漏れなくなり廃薬。
【コメント】多分この訴えは西洋医学だけでは、対応に限界があるだろうと思います。こういう隙間をうまく埋めてくれるのが東洋医学の役割ではないかと考えさせられた症例です。

症例2)32歳、男性
C.C.;頸部痛
P.I.;2年前の事故後、頸部痛が残り、朝の起床時はスムーズに起きれない。車のバックで後を振り向くのが困難。首が回せないので、大好きなゴルフも諦め、1年以上していない。漢方と針でどにかなりませんか?と依頼あり。
治療&経過;鍼治療は四関穴・三気海で調気。頸背部の凝りに置針。陰性食品制限。
 頸部は刺絡後吸い玉施行。直後に首を回し「全然違う」と。この方は漢方薬が飲めないとの事で、鍼治療中心で行きましたが、3回目で治癒。非常に喜ばれ、レントゲン写真で頸椎のズレがあり、これが原因と説明されていたので一生治らないと諦めていたと言われました。
【コメント】 東洋医学では、『冷えると痛む』『通じないと痛む』が2000年前からの大原則としてあり、
治療法は『温める』『通じさせる』がありますと説明。針と吸い玉は通じさせる治療法と説明し、その場で経絡が通じたから痛みは消失、動きもよくなったんですよと説明。
 レントゲン写真で頸椎のズレがあり、それが痛みの原因とするのは西洋医学ではごく一般的な常識かも知れませんが、頸椎のズレがあっても無痛の人も沢山いるはず。東洋医学では『冷えると痛む』『通じないと痛む』が原則で画像診断はあくまでも参考程度にします。「よくわからんけど、すごいですね」とそして「今まで2年は何だったんだろう?---」と。治れば手段は何でも良い。何でも有りよと言うと、来て良かったと納得してくれました。大好きなゴルフができましたとも。

症例3)56歳、女性
C.C.;左前胸~左頸部痛、左腰下肢痛
P.I.;2年半前の交通事故後、左前胸~左頸部痛、左腰下肢痛が取れずに残っており○○カを飲んでいるが、痛みがとれないので、漢方と針でどうにかなりませんかと依頼あり。
治療&経過;鍼治療は四関穴・三気海で調気。頸背部の凝りに置針。陰性食品制限。
東洋医学の考え方では、『冷えると痛む』治療方針は『温める』が大原則。西洋医学には残念ながら『短い時間だけ痛みは止める』治療しかないと説明し納得され、○○カも除々に減らした方が良いと。
 裏寒(内臓の冷え)、気滞、瘀血と診断し治療開始。
 1週間後には○○カのまなくても我慢ができる痛みになったと。3週間後、前胸部のあの痛み!がよくなったと。(信じられないと)1ヵ月後、左手が上がるようになった。当初の1/10。喉の詰まりや冷房で冷えると良くないーー諸々の症状に対応しつつ、6ヵ月後、左頸部の違和感が細くなってきたと。そして廃薬。

【コメント】東洋医学では『冷えると痛む』『通じないと痛む』が2000年前からの大原則。
治療法は『温める』『通じさせる』です。
 この方は、止める治療法を長らく続けられて、受診時体はヘトヘトでした。気の巡りが思った以上に改善せず、しばらく足踏み状態もありましたが、どうにかゴールの廃薬までたどり着けました。あの痛み!前胸部のあの痛みは西洋医学の○○カでもとれませんでしたが、漢方薬で軽減しました。使ったのは附子理中湯(人参湯+附子末)です。ちなみに人参湯は構成生薬は甘草・人参・蒼朮・乾姜で甘草乾姜湯は温めるの主方です。手帳では効能は急性慢性胃腸カタル、胃アトピー、胃拡張、萎縮腎です。胃を温めると考えて結構です。
此の薬で、あの痛みがとれました。やはり『冷えると痛む』が大原則で、治療法は『温める』がtrue真実です。『温める』がなく『止める』しかない、これが西洋医学の限界です。
 この症例で、私は西洋医学の限界を再度確認し、長引く例は、早々に東洋にスイッチを入れ替えると医者も患者も救われるとつくづく思いました。

症例4)38歳、女性
C.C.;眠れない、右手がしびれ、右腕が詰まっている
P.I.;5年前の交通事故後、眠れない。右手はしびれて、右腕全体が詰まっている。
   特に右手首付近の詰まり感はひどい。時々足もしびれる。頭痛もある。自律神経失調症と言われて薬を飲んでいるが、良くならない。針と漢方でどうにかなるかもしれないと友人に奨められて受診す。
治療&経過;鍼治療は四関穴・三気海で調気。頸背部の凝りに置針。陰性食品制限。
不眠症の針;四神聡、印堂、頭椎、内関、足三里、三陰交に置針。
右手に井穴刺絡施行、直後に手首の違和感が違うとの弁あり。
漢方は気血両虚、瘀血、裏寒として処方。その日の夜からグッスリ寝れたと後日報告あり。
1週間後、頭にモヤがかかっていたのがとれてきた。頭が軽くなった。台風前も頭痛(-)があった。事故後気になっていた頸部痛も気にならなくなっている。寝れているから体が回復してきているのがわかる。こんな感じで薄皮を剥ぐごとく治って行かれました。

【コメント】不眠症の針;四神聡、印堂、頭椎、内関、足三里、三陰交に置針すると、殆どの方が、
熟睡できるようになり、眠りの質が違う、起き醒めの感じが違う、眠剤や睡眠導入剤を減らせると結構喜ばれます。この方は、鍼治療と気血両虚として加味帰脾湯を投与し、その日からグッスリ寝れるようになりました。
 又、「右腕が詰まっている」と言われても、治療法も知らず返す言葉もなく、ただ聞いてあげるだけで、患者様は聞いて貰ったと満足されるかもしれません。漢方だけの時は同じように訴えの方には対応できずに、お茶を濁し、逃げていました。が、針の世界を知ると患者様の訴えは全く其のとうり本当で、人が持つ原始感覚によるもので、「右腕が詰まっている」は経絡が詰まっているのではないかと考えています。
 そして『冷えると痛む』『通じないと痛む』が大原則で、治療方針は『温める』『通じさせる』ですから、それに従い針等で通じさせると比較的簡単に通じて、訴えが軽減します。
西洋医学では説明できませんが、見えない経絡が通じた結果ですから、昔の人は凄いと何時も感心します。
 この方は、5年間の症状が鍼治療と漢方等で急転直下、腕が通じ、寝れるようになり、
寝れると体力が回復し、それに連れて自然治癒力もまし、諸々の症状が薄皮を剥ぐごとく治って行かれました。
 交通事故の後遺症で、裁判や中には失職・自殺など悲惨な事が起こっていますが、鍼治療と漢方で温め通じさせると、その後遺症にも大なり小なり少しは対応できますから、初診時にしてあげると、後遺症をかなり減らせるのではないかと、考えています。

症例5)42歳、女性
C.C.;指が白くなる
P.I.;交通事故後、朝起床時に指先が白くなり、よくならない。漢方治療でどうにかなりますかと依頼あり。
治療&経過;事故は真後ろからとのことで、損傷経絡は太陽膀胱経、瘀血(+)、陰性食品を制限し、葛根湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁湯を処方。1月の寒い時期でしたが、レイノーの範囲が狭くなり、時間が短くなり、3週間で起きなくなり、諦めていたのによくなったと喜ばれました。
【コメント】大学のリウマチグループのころの常識では、レイノーは原因不明の難病で治らない。漢方や中医学を知ると、レイノーの原因は動脈の痙攣。とにかく治らない病気と思っていましたが、漢方で此の症例はとにかく治りました。初めての経験ですが、どうにかなりそうという感じが芽生えました。これをきっかけに、レイノーの方が受診されると積極的に、漢方、針灸、刺絡などを試みてみますが、結構いけます。
私の拙い経験では、レイノーの原因は動脈の痙攣ですが、痙攣するのは何故かと言えば、体内に水が散在しており、水が寒冷暴露で冷えて動脈の痙攣を起こすと愚考しています。レイノーの方々は全員水分の過剰摂取があり、手指はむくみ湿っています。又、手足は触るとひんやりしています。従って特に症状のない夏場に、陰性食品を制限し、利水剤で組織間の余分な水を抜き、寒くなる前から灸などで熱をいれる治療を予防的にしておくと、寒冷暴露による症状誘発を防げ効果的です。中国・韓国では、寒くなる季節に症状悪化する疾病は、暑い夏場に鍼灸治療をするのが一般常識となっているそうです。(冬病夏治)多分、日本でも江戸時代までは此れが、当たり前だったのではないかと考えています。

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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福岡県八女市大島18-1
【院長】樋口 理
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