論文タイトル

20.東洋医学的治療の小経験   ー異病同治ー ー諸々の病気が一つの薬で治るー

20.東洋医学的治療の小経験   ー異病同治ー ー諸々の病気が一つの薬で治るー


東洋医学的治療の小経験
  ー異病同治ー
ー諸々の病気が一つの薬で治るー

東洋医学ひぐちクリニック
    樋口 理

異病同治ー初めてこ言葉を見聞きした時は、何の事やらと思い、特に気にもかけていませんでしたが、ーー人間とはご都合主義でーー自分が経験すると俄然興味の対象に変わりました。最近経験した症例を呈示します。

桂麻各半湯;鼻血、変な風邪(体の中が熱い)、インフルエンザ、皮膚病(痒み)が一つの漢方薬で治りました。
四逆散;脊髄腫瘍摘出後の夜間痛、パニック障害、交通外傷後のシビレ、皮膚の異常感、手の冷え、胃腸病が一つの漢方薬で治りました。

東洋医学の妙で、異病同治ー諸々の病気が一つの薬で治るーこんな事を経験すると興味が益々わき東洋医学の深みにはまります。西洋医学の常識では考えられない事だと思います。

【症例1】4歳、女性
C.C. ;鼻血
P.I. ;2週間前から鼻血が出て、夜間はシーツが鮮明で赤くなり、毎日洗うのが大変治療しているが、鼻血が止まらない。漢方や針治療でどうにかなりますかと依頼あり。

治療&経過;桂麻各半湯(エキスでは桂枝湯1g、麻黄湯1gを合方して)服用を支持。
後日母親より、その日の夜から鼻血が止まり、2日分飲ませて、その後は鼻血はでていないと経過報告あり。漢方は良く効きますね、びっくりしたとの弁あり。毎日シーツを洗わなくて大助かりと。鼻をかむと少し血がつくことがあるくらい。
その後、インフルエンザで幼稚園が閉鎖になりました。おねえちゃんはインフルエンザにかかりましたが桂麻各半湯を服用していたせいかどうか正確には分かりませんでしたが、インフルエンザにもかかりませんでした。

コメント;西洋医学では鼻出血はキーセルバッハ部位が好発部位として知られています。
東洋医学では、考え方はアバウトで汗が出ないかわりに鼻出血が起こると考えます。従って治療法は、桂麻各半湯で汗をかかせるという訳です。それを信じて桂麻各半湯を投与したところ、この症例では、その日の夜から鼻出血が起こらなくなりました。不思議ですが著効を示しました。また、予防投与になったのか、インフルエンザの流行期にもかかわらず、かかりませんでした。

【症例2】52歳、女性
C.C;風邪ー体の中に熱がこもった感じがある
P.I;風邪をひいたが、何時もと違い体の中に熱がこもった感じがある。漢方で治療できますかと依頼あり。普段から漢方治療されている方です。
治療&経過;頬が赤く、桂麻各半湯を投与。1週間後の来院で2回飲んですっかり良くなったとのことでした。
コメント;桂麻各半湯の3兄弟は、感染症には必須の漢方薬です。

その特徴は
①熱多寒少ー体が熱い。どこかに寒が少しある。
②身必痒ー発疹がないのに痒がる。
③面色反有熱色物ー頬が赤い。子供に多い。

これを参考に本例では桂麻各半湯を投与し、2回の服用で症状は軽快しました。桂麻各半湯の3兄弟の残りは、口渇(+)なら桂枝二越婢一湯、発汗(+)なら桂枝二麻黄一湯が適応とないます。

【症例3】43歳、男性
C.C;痒み
P.I;3週間前から風邪気味で薬をもらっているが、スッキリせず体が痒くなってきた。
ストレス性と言われているが、自分ではストレスはあまりないと思っている。漢方でどうにかなりますかと依頼あり。
治療&経過;頬に若干赤みあり、桂麻各半湯を投与。1週間後に来院。3回飲んで治まったとのこと。こんな風邪もあるんですねと、初めてかかったこと。
コメント;蕁麻疹ができているわけでもないのに、なんとなく痒みがあり、いつのまにかあちこちをかいている。こんな時には桂麻各半湯が著効です。

 桂麻各半湯の経験例を終わり、次いて四逆散の症例を呈示します。
四逆散は手帳では、胆嚢炎、胆石症、胃炎、胃酸過多、胃潰瘍、鼻カタル、気管支炎、神経質、ヒステリーとなっておりますが-ーーー?

【症例1】56歳、女性
C.C.;脊髄腫瘍摘出後の夜間痛&不眠
P.I.;15年前の脊髄腫瘍摘出後、腰背部の夜間痛がひどくて眠れない。
座薬を使うと眠れるが、それでも雨の日や寒い日は良くない。特に雷がなると極端に痛みがひどく眠れない。
座薬をいつまで使い続けなければいけないのか?不安もあり他に方法があるならと考え、漢方でどうにかなりますかと依頼あり。

治療&経過;疾病や痛みに対する不安が根本原因と考え、ストレスに対する漢方薬の主方四逆散をベースに駆瘀血剤(桂枝茯苓丸)と気剤(香蘇散)を少し混ぜて投与しました。
座薬の量を減らしつつ、服用を続けることで、雨の日や寒い日にも寝れるようになり、眠れると体調もよくなり、最終的には雷が鳴っても痛まなくなりました。不思議な効き方です。
なおかつ、この方は皮膚の色がどす黒かったのが、半年後にはきれいになりました。

漢方治療を続けると、例えば痛みの治療をメインでしているのに、便秘が良くなり、睡眠が良くなり、冷えがとれ体温が上がる等と体調不良が改善されます。これを業界用語で『『おつり』』と言います。

【症例2】23歳、男性
C.C.;不安になるとパニック、喉の詰まり感、他諸々不具合
P.I.;3ヵ月前より胃痛があると下痢がおこり、夜寒いと不安になり、パニック気味 になる。自律神経失調症と言われ治療しているが今一つの感じで、漢方や鍼治療でどうにかなりますかと依頼あり。

治療&経過;日本漢方の腹診では、典型的な二本棒でした。ためらう事なく四逆散をベースに選び、漢方治療と鍼治療を開始。不安時には甘麦大棗湯を頓用指示。二本棒は2~3週でかなり軟らかくなりました。鍼治療は調気が主体です。
35℃台の低体温も気になるとの事で、裏寒(内蔵の冷え)として温裏剤を投与それと共に体温も35℃台から36℃台となり、体温が上がると体調も徐々に改善して来ました。
胃腸の調子も良くなり、車の運転でも目にくる、目がガンガンするという訴えもなくなりました。
寒くなると不安になってパニックがおこっていましたが、冷えもとれ、不安も生じないためパニックも起こらなくなりました。
体調良好で6ヵ月後に廃薬。

【症例3】52歳、女性
C.C.;頸部痛、左上肢のシビレ感
P.I.;平成25年11月24日の交通事故での受傷。
頸部痛、左上肢のシビレ感を訴えられて11月28日受診。

治療&経過;先ず漢方駆瘀血剤を投与し、鍼治療も施行。左上肢のシビレ感に対して利水剤を中心に血剤を加味して投与。軽減はするものの反応が今一つ。火針、井穴刺絡もしましたが12月に入っても、ジンジン・シビレの訴えが続きました。
経過が水毒のシビレと異なり、迷ったあげくヒョットしたらと思い四逆散ベースに変更しました。
これがヒットし2日目よりシビレの訴えは消失しました。

コメント;西洋医学一辺倒の時は、シビレはビタミン剤が中心で効くのか効かないのかわからないような状態で、逃げる意識が強かったのですが、東洋医学ではアプローチできます。
『水毒』の概念から抜け出せず、迷ったあげくの四逆散ベースがヒットし2日目よりシビレの訴えは消失しました。患者様はビックリ、漢方はこんなに早く効くのですかと?
水毒のシビレは床上浸水理論で床下へ水が引くイメージで、時間はもう少しかかり、シビレの範囲も段々さがり最終的には指先だけになりますと説明。ストレスのシビレは初体験と話し『漢方はすごい』と二人で話し合いました。ストレスでもシビレが起こる事を教えて貰いました。
その後は経過良好で廃薬。
先入観念で物事をみてはいけない。経過が典型例と異なるとき、戦法をかえる事が重要性を思い知らされました。
この症例ははやく気づいてあげれば不愉快な症状からもっと早く開放されたかもしれません。反省させられた症例です。

【症例4】32歳、女性
C.C.;右上肢の異常知覚
P.I.;2ヵ月前から洋服があたると右上腕がヒラヒラするような感じがあり、検査するも異常なく、気になってしかたがない。異常もなく治療方法もわからず、ヒョットとしたら漢方や鍼治療でどうにかなりますかと依頼あり。
治療&経過;右上肢の異常知感という事で、水毒と考えて先ずアプローチ。漢方薬は利水剤の主方薏苡仁湯をベースに投与。
鍼治療は、調気後に八邪、肩に灸頭針、頸背部の凝りに置針し、天窓に刺絡後吸い玉施行。
1週間後、あまり変わらない。ちょっと経過がおかしいかな?。四逆散ベースに変更すると、飲み初めて3日目より違和感が消失したと後日報告あり。
『症例3』同様症状が取れたから良いような、潜入観念を捨てないと失敗するよと教えられた症例でした。良かった良かった。
コメント;ストレスが原因のシビレは、症例3,4の経過より四逆散で2~3日で消失することがわかりました。

【症例5】46歳、女性
C.C.;指先の冷感
P.I.;3ヵ月前から、手指の冷感がひどく、ホッカイロで温めても手袋をしても温まらないと受診されました。何かあると、時々漢方治療をされている方です。

治療&経過;お腹を診ると、いつもと違い二本棒に近い状態でした。何か心配事やストレスになることがありますかと尋ねるとーー娘が離婚してーーとの事。
四逆散を投与し、手指の冷感はそれが原因ですよと説明し、人間の体は考え過ぎると、反応してそうなるようにできているとーー。
鍼治療は、調気し、頸背部の凝りに置針しました。直後にスッキリしたと。1週間後、手が温もってきましたと。手に八邪をし、肘に灸をすると手にポカポカになりました。2週間後、調子よく廃薬としました。

コメント;漢方用語では、四逆とは手足の冷える事を意味します。其のとき、お腹は交感神経過緊張のため、腹直筋は硬く張っています。これを二本棒と言います。
江戸時代の漢方医;和田東郭先生は雑病の8割を四逆散ベースで治療されています。
今回の胃病同治の症例も
①脊髄腫瘍摘出後の夜間痛、②パニック障害、胃腸病、③交通外傷後のシビレ、④皮膚の異常感、⑤手の冷え
と主訴はバラバラで雑病と言えると思いますが、共通事項は四逆散が効果的であったとうことより、西洋医学でいうストレス、東洋医学でいう肝気鬱結が原因であったとなります。
江戸時代にも私達が生きている平成時代と同じくらいストレスがあったことが想像されます。

(H26.3/12投稿)

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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