論文タイトル

23.西洋薬の減らし方-漢方と経絡を使って-

23.西洋薬の減らし方-漢方と経絡を使って-


東洋医学治療の小経験
 西洋薬の減らし方-漢方と経絡を使って-
 遠位置針-運動療法

第4部  東洋医学ひぐちクリニック
       樋口 理

『漢方の臨床』5月号に『こんなお年の方にこんなにお薬が必要ですか?』という記事がありました。漢方薬と経絡の知識があると薬を減らせて、体調がよくなります。医療経済の面でも、ズット安上がりになると考えています。

薬の減らしかたでお困りの方には、参考になると思いますので、出版元の東亜医学協会の許可を得て掲載します。
その後、経絡を使った運動器疾患の症例や一剤で諸々の症状解決例を提示します。痛み止め・湿布・関節注射でも治らなかったのが、経絡を使うと比較的簡単に良くなって行かれます。

先ずは『こんなお年の方にこんなにお薬が必要ですか?』
         『漢方の臨床』第61巻5月号 織部和宏

 読者の先生方はこのような患者さんが来られたら、どう対応しますか。
症例は83歳の女性です。主訴は問診表によると「体中の痛み」「血のめぐりが悪い」「骨粗鬆症」。
 詳しく聞いてみますと、数年前に脊椎の圧迫骨折をおこし、以後腰を中心に体中が痛くなり、坐る時間が長いと下肢がむくんで歩きづらくなる。足に力が入らない。食欲なく、体がだるい。疲れやすい。
いろいろな西洋薬を服用しているのに悪くなるばかりで、家では半日寝てばかりいる、との事です。漢方で何とかならないかと言って来院しました。
 やせて亀背が著明で、身長140cm、体重33kg、血圧130/78㎜Hg、脈は沈細数、舌は紅舌、劣紋、無苔で、腹診では臍上悸、少腹不仁を認めました。
 ここまでなら気血両虚で風寒痺、鶴膝風、漢方薬はある程度候補がしぼられそうですが、問題になるのがこの方が現在服用中の西洋薬の内容です。
 びっくりしないで下さいよ。「◯ト◯バ◯タ◯ン」「◯モ◯タ◯ル」「◯ス◯ン」「◯ア◯ン」「◯チ◯バ◯ル」「◯ラ◯ッ◯ス」「◯イ◯ト◯ピ◯」「◯ァ◯チ◯ン」「◯ロ◯ッ◯100」「◯デ◯ロ◯ル」「◯パ◯モ◯」「◯イ◯ー」「◯タ◯イ◯ン」が経口薬で、さらに◯ナ◯ンの点滴を定期的にしていると言います。経口薬は13種類。83歳のやせた小柄な女性ですよ。
 これでチットも良くならないどころか体がきつくなり、食欲もない。日常は半分寝ている状態ですよ。これにさらに漢方薬をプラスしたら、どうなるのでしょうか。

 先生ならどうされますか。いろいろな御意見があると思いますが、私の選んだ道を御報告させて下さい。高血圧症や糖尿病、虚血性心臓病が背景にあれば、いくつかの絶対に必要な薬は残すべきだと思いますが、この方の場合はそれがなかったので、服用している西洋薬は全部やめるように指示しました。
まずは気血両虚の立て直しからと判断し、漢方薬はエキスで十全大補湯加附子を処方しました。

2週後に来院。元気が出て、よく動けるようになったとの事です。ただし食欲はもうひとつ出ないと言います。
さらに1ヶ月後には食欲は大部出てきた。しかも体のきつさが夏の暑い時よりすごく良い。ただし食後腹が張って排便したくなる。フラツキが少しあると言うので、真武湯合大建中湯のエキスを2.5gずつ就寝前に投与しました。

その2週後にはその症状も改善して食欲も出、体調も気分もすごく良くなったと言われます。
そこで元々の腰の痛み、足のムクミの治療に入る事にしました。
エキスの牛車腎気丸に加工附子末を少量加味して投与しました。1ヶ月後に来院。全体としてすごく調子が良い。足のムクミは少しずつ軽減している。あれほど多くの薬剤を服んでいる時は悪くなる一方でしたが、すべて止め、漢方一本にしてこんなに元気になるとは思いませんでしたとの言葉をいただきました。

高齢の方は老化に加え、西洋医学的には多くの病名が下され、しかも現在は専門分化が進んでいますので多くの科を受診。
その結果、それぞれの科でいろいろな薬が出され、合計するととてつもない数の薬を服用している人が結構おります。それで心身共良くなり、日々元気に楽しく過ごせていれば何の問題はないわけですが、現実はどうでしょうか。
また個々の西洋薬はエビデンスに基づき投与されているとは言うものの、作用機序の違う薬を何種類も同時に服用した場合、相互作用による副作用などは検討されているのでしょうか。
こんな場合、責任をもつ主治医が他医の処方内容をチェックして重複投与を防ぐのはよく言われる事ですが、実態はどうなのでしょうか。
私は高齢の方は日常生活の質を維持する事こそ最優先すべきであり、薬は漢方も含め飽くまで必要最小限にすべきであると考えておりますが、先生方はどう思われますか。

そのためには患者さんを個々のパーツの集合体としてとらえるのではなく、全体のバランスとしてみた方が良いのではないでしょうか。今の西洋医学はあまりに専門分化が進み、それぞれの専門医は症状を全身症状の一部としてよりは自分の領域のところしか考えてないように私には思われますが、それは私の偏見でしょうか。

その結果、いろいろな科を受診した高齢の方はそれこそ多くの薬を服用せざる得なくなるのは当然の結果だと思われます。
その点、漢方は身心一如の医学ですからいろいろな症状を訴えられた場合、まず一元的に考える事から始まります。勿論、併病の場合もありますが、そんな場合でもせいぜい二剤ないしは三剤ですみます。
そんなケースを御紹介します。提供者は名古屋の岡崎市で開業している「三河の若大将」こと山崎泰爾先生です。こと漢方に対しては天才的なヒラメキをもっている人です。

症例は中年の女性です。西洋医学的病名は逆流性食道炎、慢性胃炎、慢性頭痛、顎関節症、過敏性腸症候群、慢性扁桃炎手術、咽頭痛、半月板手術、坐骨神経痛があり、当然の事として西洋医学の各科を受診し、現在9種類の西洋薬を服用している。

山崎クリニックを受診、「西洋薬をいくら服んでも全然効果がない」、漢方医学的には膝や臀部が冷える。冷えるとさらに頭痛や腹痛、下痢して鼠径部が痛む。これらの痛みは突っ張った痛みである。

そこで山崎先生は有症状の部位をプロットしてみました。(写真1、2,3)

有症状の部位

脈:沈小遅

有症状の部位3

すると、これらの症状発現部位は足の厥陰肝経に沿っている事に気づきました。(図1)

症状発現部位は足の厥陰肝経に沿っている

それならば、この方剤一種類でいけるのではないかとパッとひらめいて処方したのが当帰四逆加呉茱萸生姜湯です。
結果はまさにドラマチックで、この方剤によって全ての症状が解決し、多種の薬も全く不要となったとの事です。
山崎君のコメントが「異病同治というか、寒疝と厥陰肝経の2つのキーワードの意識がカギとなる」でした。
後世恐るべし。彼は私の弟子の一人ですが、出藍の誉れとか言われないために、私もしっかり勉強していかなければと真剣に思いました。とっくの昔に言われているかも知れませんが。
私の言いたい事は、多くの症状を訴えた方を見る場合、一度は漢方医学的な立場でそれらが一元的な所で解釈出来ないかと言う事です。
もしそれで解決出来れば、いろいろな科を受診し、その結果としての多剤投与から開放出来るのではないかと言う事です。そのほうが医療経済的にもズッと安上がりになるのではないでしょうか。
最後になりますが、私の今お話した事についてどう思われるでしょうか。

(医師:〒870-0022 大分市大手町2-1-15)

運動器疾患の症例
【症例1】70歳、女性
C.C.;右肩が痛み強くあがらない-手術をしたくない
P.I.;今年の3月に転んで右肩を骨折し、さらに3月末に階段から落ちて打撲し右肩の痛み強く上がらないため、MRI検査。
筋が切れている(腱板断裂)から手術をしないと治らないと言われ、痛み止め・湿布・関節注射の治療はしているが、恐くなり漢方と鍼治療でどうにかなりませんかと5/2当院受診。

治療&経過;骨折と打撲の瘀血の処置を先ず優先し漢方駆瘀血剤を投与。
夜間痛と刺すような痛み(瘀血の特徴的な痛み;多分西洋医学では無理?)は2週間程で消失。
その後、患部の針治療開始。八邪と肩関節に灸頭針、頸背部の凝りに置針。天宗に吸い玉。
3~4回しても不変一進一退で治療法変更。上病下取の原則(身体上部の病は下肢につぼをとる)に基づき、右肩なので左下腿の陽明経の上口と膀胱経の承山に針を刺し、肩の運動療法を開始しました。
一回目ではやっと挙上の状態でしたが、右肩の局所に吸い玉を施行すると、比較的スムースに挙がり1ヵ月後にはサット挙がるようになりました。本人はビックリで、手術しなくてよいと大喜びです。

コメント;経絡が存在するかどうかは人の目に見えませんからわかりませんが、上肢の経絡の陽明大腸経と太陽小腸経と同じ名前の下肢の陽明胃経と太陽膀胱経のツボをとり、針を刺し遠位置針-運動療法をすると、この方の右肩は挙上可能となりました。
西洋医学の常識では理解不能で説明できませんが、同名交差で治ったということは、経絡が存在している証拠ではないかと愚考します。
経絡を使い、上病下取・同名交差を最初にした昔の人は凄い。凄いとしか言いようがありません。!?!
この方法は、肘関節や手関節にも応用できます。反対に、股関節・膝関節痛には上肢のツボを使い、同じように治療可能です。
手術と言われた方でも治って行かれます。本当に不思議な世界ですが---
興味のあるかたは、信じてお試し下さい。

【症例2】60歳、女性
C.C.;両膝関節痛(O脚)&両足関節痛(亜脱臼)
P.I.;40歳代より両膝関節痛&両足関節痛あり、消炎鎮痛剤・湿布・ヒアルロン酸の注射をしているが徐々に悪化し、最近は夫と外出してもすぐ遅れてしまい、夫に待って貰わないといけない。
これ以上悪くなると手術しかないと言われているが、他に何か治療法がないかと--紹介されて受診。

治療&経過;陰性食品(痛み止めと湿布を含む)の制限を指示し、調気・3気海・頸背部の凝りに置針、膝関節内側痛は太陰脾経なので上肢の陽明大腸経の曲池に置針して、下肢の体操並びに歩行訓練を施行(陰陽交差;遠位置針-患部運動療法)。
漢方薬は防巳黄耆湯と牛車腎気丸及び通導散を投与。先ず体温が1週間で35℃から36℃台になり、体が軽くなってきたと本人はビックリされていました。
2週間で体重が3kg減少し痛み止めを飲まなくてもよい日が増えてきた。
3週目、内科の先生から血圧が下がり過ぎていると指摘がありました。30年間服用されているそうです。
1ヵ月後、右膝関節と足関節は殆ど痛まなくなった。左足が冷える感じがする。附子末を追加。
2ヵ月後、体重は5kg減少し、疼痛は当初の3/10。血圧の薬は飲まなくて良くなったと不思議そうな嬉しそうな態度です。現在も治療中です。

コメント;陰性食品(痛み止めと湿布を含む)の制限と漢方と鍼治療(遠位置針-患部運動療法)で、この方は痛み止めと湿布を止めれ、血圧の薬も止めることができました。
西洋医学では、本態性高血圧はその原因は遺伝性とされていますが、東洋医学では水毒です。一番末梢(手足・足先)に水がたまれば、心臓からみて末梢抵抗が上がりますから、血圧も上がります。

もし器質的変化の動脈硬化が原因であれば、入浴前後で血圧が30~40変化するのはおかしいと思います。血圧は冷えると上がり、温めると下がります。水が関与しているからです。日本人の疾病の8割は水毒と言われています。

【症例3】61歳、女性
C.C.;右足第4指の発赤腫脹疼痛--その後左目充血・左頸部の湿疹
P.I.;3週間前から右足第4指の発赤腫脹疼痛があり、湿布と痛み止めで治療しているが、良くならないので、漢方と針治療でどうにかなりますかと受診される。
治療&経過;右足第4指の発赤腫脹疼痛に対して、八邪と井穴刺絡を施行し漢方薬は熱に対する越婢加朮湯を投与。2週間経っても、反応今一つで経過がおかしいと思っていた矢先、左目が充血し痒く、また左頸部に湿疹もできていると。
以前からよく充血し湿疹もできるとの由。左は肝で赤みや痒みは熱と考え、柴胡清肝湯を投与し幾分よいとの返事があるも、やはり今一つ。
ひょっとしたらと考え、肝火の竜胆瀉肝湯を投与しました。
不思議な経過で、右足第4指の発赤腫脹疼痛・左目充血・左頸部の湿疹が全て徐々に軽減し、2週めには症状消失となりました。

コメント;目と皮膚と整形領域の3診療科にわたる症状が漢方薬1剤で解決できました。
西洋医学では、症状の数だけ薬が増えます。一方東洋医学では、本例は肝経の熱火が主原因で、竜胆瀉肝湯は肝経に入る薬です。
又、肝と胆は表裏の関係にある(国道とバイパスの関係といえます)。肝経の熱火が主原因で目と皮膚に症状を、余りが右の胆経の足第4指に波及したのが全体像です。
西洋医学とは全く別の考えですが、其のとうりに治療するといつの間にか自然に治って行きます。その度に、古人の考えと治療体系の凄さに感心させられます。

【症例4】38歳、女性
C.C.;左第4指痛
P.I.;1ヵ月前より、左第4指痛出現。触るとズキンとし、痛みのためグーができない。そのうち治るだろうと放置していたが、痛みがひかないので受診。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。左第4指は小腸三焦経なので右厥陰肝経の太衝を押さえると圧痛(++)で刺針、直後に指を触ると痛みが違うとの弁あり。
グーをするように促すと『アラできた』と-15分後殆ど症状なし。仕上げに井穴刺絡。次回受診時には、症状消失。治癒。
コメント;左手指の症状(手少陽三焦経)を上病下取の原則にのっとり、右足厥陰肝経の太衝(陰陽交差)に置針すると、症状は比較的簡単に消失しました。秒殺の世界かと驚きます。やはり陰陽交差を一番最初に考えついた人は凄いと感心せずにはいられません。
東洋医学の妙というか---

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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【院長】樋口 理
【TEL/FAX】0943-23-2765
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