論文タイトル

25.東洋医学の小経験 “刺絡パワー”

25.東洋医学の小経験 “刺絡パワー”


東洋医学の小経験
“刺絡パワー”

第4部 東洋医学ひぐちクリニック
樋口 理

“刺絡”と言う言葉は、多くの方は何のことやら???と思います。私も最初目にしたときは、何のことやら???の印象を持ったことをハッキリと覚えています。
現代医学にはない概念“瘀血”に対する治療法です。“瘀血”とは、微小循環障害を指します。微小循環障害は言葉としては納得されるでしょうが、私達が学んだ西洋医学では治療法は抗凝固剤ですが、東洋医学では瘀血は排泄するで、全く治療法がことなります。

※※【刺絡】鍼または三稜針などを用いて血を出すこと。広義の瀉血療法である。
その目的は、皮膚および末端部位における末梢血行障害を排除、又は改善し、各種疾病に対する治癒的な機能を高めることにある。
 西洋医学でも、多血症や肝炎などで瀉血療法があり、静脈より瀉血します。
 一方東洋医学では、体表にある細絡;西洋医学では重要視しませんが、特に中高年の女性で、下肢や背部に見られるクモの巣状の黒〜紫〜赤紫色の細い血管を指します。

これが在る方は、冷えていて、細絡の下や末梢は微小循環障害が強いと判断します。
“刺絡”という言葉は紀元前の医学書『素問』•『霊枢』や紀元後200年の『傷寒雑病論』には多数記載されており、古人は積極的に治療していたと思われます。

 ローマ•ギリシャ•古代インド他、アラブ民族や朝鮮半島でも瀉血療法は行われており、あらゆる民族は経験的に瀉血療法の効果を知っていたようです。
 日本でも紀元前4世紀には臨床に用いられ、8世紀の大宝律令には刺針•刺絡療法の記載があるそうです。

 高知県の西田皓一先生は循環器専門でありながら、40年東洋医学治療をされていますが、刺絡治療は難病•奇病に奇効をもたらすと述べられています。
私が経験した症例を提示します。奇効とは言えないかもしれませんがーーー。

《症例1》 32歳、男性、2回目の登場です
C.C.;頸部痛
P.I.;2年前の事故後、頸部痛が残り、朝の起床時はスムースに起きれない。車  のバックで後ろを振り向くのが困難。首が回せないので、大好きなゴルフも  諦め、2年以上していない。漢方と針でどうにかなりませんか?と依頼あり。

治療&経過;鍼治療は四関穴•三気海で調気。頸背部の凝りに置針。陰性食品を制限。
頸背部には黒い細絡があり、三稜針で刺絡後吸い玉施行。約2〜3mlの暗黒色の血液を排泄。
直後に首を回し、「全然違う」と一言あり。この方は漢方薬が飲めないとの事で、鍼治療などを中心に加療しました。3回の治療で、治癒。
吸い玉治療は、最初は血液は暗黒色で3回目には奇麗な鮮紅色になりました。
非常に喜ばれ、レントゲン写真で頸椎のズレがあり、これが原因と説明されていたので一生治らないと諦めていたと言われました。

【コメント】;頸背部には黒い細絡があり、三稜針で刺絡後吸い玉施行。
約2mlの暗黒色の血液を排泄。直後に首を回し、「全然違う」と一言あり。
この症例が数回の治療で2年間の症状に決別できたのは、吸い玉につきます。
西洋医学にはない概念かつ治療方法ですが、西田先生の言われる奇効に相当するかもしれません。
西洋医学でうまくいけば、それで良し。うまくいかない時には、全く診方の違う東洋医学の出番が回ってきます。
       外傷後後遺症、術後後遺症などには東洋医学の”瘀血”の概念とその治療法がお薦めです。

《症例2》 35歳、女性
C.C.;顔面の赤み痒み、湿疹&手の湿疹
P.I.;2年前より、顔面の赤み痒み、湿疹&手の湿疹が出現し、赤みが強い時は、皮膚がパーンと突っ張り、破れたりして大変だった。数箇所の医療機関で治療したが、一進一退の状態で、治療は止めた。
熱がこもっている感じで、食後に悪化し、入浴すると熱くて熱くてたまらない。友人から紹介されて受診。

治療&経過;赤みは西洋では炎症、東洋では熱と説明し、治療は『熱は冷やす』、又血熱(血が熱を持つ)と考えて瀉血を、又痒みには痒みの針をと説明。
先ず痒みの針を施行、直後に痒みが違うと一言。次いで、瀉血を手指の井穴、耳尖、大椎より施行。直後に熱のこもりが楽になったと又一言。
帰宅後、両親より「どうしたと?顔の赤みが減ったやん?」と言われたと後日報告がありました。
清熱剤を服用し、入浴後の熱のこもりも軽減。顔の赤みは1ヵ月でほとんどわからなくなりました。初診の日はマスクで顔を隠して受診、次回は、マスクをせずに受診されました。
顔面全体の発赤が軽減し、口の周りが少し目立つだけになっていました。

【コメント】
皮膚の赤みは、西洋医学では炎症—東洋医学では熱と判断します。
治療法は、西洋ではステロイド等で消炎、東洋医学では冷ます、或いは熱をぬくとなります。
この方は、2年間西洋医学では今一つが、発想を変えて、東洋医学でアプローチすると、処置直後に変化を実感され、日に日に改善して行くのを体験され、治療に対する意欲もわき、経過良好です。
 西洋医学では、これだけ短期間では無理だと思います。西田先生の述べられる寄効にあたるかと考えます。

《症例3》18歳、男性
C.C.;顔面の赤みとニキビ、イライラが凄い、寝れない
P.I.;数年前から、顔面の赤みとニキビがあり複数の医療機関を受診したが、かんばしくない。赤みが強くなるにつけ、イライラ感が増し、家族や友人にも当たりちらかし、最近は、学校へも行ってない。
又寝れないといって、睡眠導入剤を服用しているが、それでも寝れない。漢方や針でどうにかなりますかと依頼あり。

治療&経過;東洋医学では顔の赤みは“熱”と説明し、先ず食事指導。
次いで清熱剤と瀉血について説明、納得のもと?実は半信半疑で治療開始。陽明経の栄火穴
(熱をさばく);内庭、二間に置針、耳尖より瀉血、大椎より刺絡後吸い玉施行。直後に『スッキリした』との弁あり。清熱剤と瀉血10回を1クールとして施行。1クール施行後には、顔面の赤みとニキビはかなり軽減す。
赤みが軽減するにつけて、イライラ感も軽減し、家族関係も改善し、睡眠も可となる。2クール終了を待たずに、顔面の赤み消失、ニキビもほとんど分からないくらいになった。学校へも復学。

【コメント】
東洋医学では、人間の正常は頭寒足熱。もし頭熱足寒になると諸々の不具合が生じると考えます。治療の原則は上から攻める。下の足寒を治療しようとして、もし温めると、熱は上へ上がりますから、益々頭熱が増強し症状を悪化させます。
従って上から攻める。多分此の概念は西洋医学には無いと思います。
西洋医学では赤みは炎症として、押さえ込もうとしますが、東洋医学では、熱を取り冷まそうとします。血熱;血が熱を持ち暴れまくる。
この方は清熱剤と瀉血の治療で、赤み•ニキビ•イライラ•人間関係•不登校などの症状が改善しました。これも奇効と言えるかもしれません。

《症例4》63歳、女性
C.C ; 左膝関痛(夜間ウズク)
P.I.; かなり以前から左膝関痛があり、変形性膝関節症と言われ、湿布痛み止めヒアルロンサンの注射をしているが、段々悪くなっている。最近は夜うずいて困る。痛み止めが効かない。漢方と針治療でどうにかなりますかと依頼あり。

治療&経過;左膝の内外側に暗黒色の細絡があり、これは西洋医学で問題視しませんが、東洋医学では重要視し、中が冷えて渋滞していると考えると説明。刺絡という治療をすると楽になりますと更に説明す。
山稜針で刺絡後、吸い玉施行。5〜6mlのドス黒い血液を排泄。直後に歩いてもらうと、足が軽くなったと。漢方駆お血剤投与。
1週間後来院、その日の夜からうずかなくなったと。不思議そうに嬉しそうに、こんな治療は初めて受けたと。

【コメント】瘀血、細絡の概念は西洋医学にはありませんが、古人の規拒に従い、治療すると、比較的早期に症状の軽減をみます。東洋医学の良い所を取り入れ、西洋医学と両輪で治療すると、『盲点』の少ない治療を提供出来るのではないかと考えています。
ちなみに、細絡は背部•腰部•下肢特に膝関節周囲や足関接付近によく見られます。頑固な肩痛や腰痛はこの治療で軽減するのを、しばしば経験します。

《症例5》 38歳、女性
C.C.;眠れない、右手がしびれ、右腕が詰まっている
P.I.;5年前の交通事故後、眠れない。右手がしびれ、右腕全体が詰まっている。
特に右手首付近の詰まり感はひどい。時々足もしびれる。頭痛もある。自律神経失調症と言われて薬を飲んでいるが、よくならない。針と漢方でどうにかなるかもしれないと友人に薦められて受診す。

治療&経過;鍼治療は四関穴•三気海で調気。頸背部の凝りに置針。陰性食品制限。
不眠症の針;四神聡、印堂、頭維、内関、足三里、三陰交に置針。
右手に井穴刺絡し、ドス黒い血を2〜3滴絞り出す。直後に「右手の感じが違うと、詰まりが軽くなった。」と一言あり。

【コメント】東洋医学の世界では、『不通即痛』(通じざれば、即ち痛む)という病理観があります。
人の体のどこかに“瘀血”が生じると血液循環障害を起こし、それが痛み他の不具合の原因となり、鍼灸治療で“通じさせる”と痛み等の症状は軽快します。
此の症例でも、手指先端の井穴に刺絡し、ドス黒い血を2〜3滴絞り出した直後に経路が通じた証拠として「右手の感じが違うと、詰まりが軽くなった。」と一言あり、速効です。

又、経路は目にみえませんが、症状が軽くなった事より『不通即痛』は本当で、鍼灸で簡単に“通じさせる”ことが出来ると結論ずけたいと考えます。東洋医学のこの治療法は知らないと損をすると思います。

H26.8.1.投稿

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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