論文タイトル

27.東洋医学の小経験 皮膚科の症例より ー『虚•実』ー ーおつりに大感激ほかー

27.東洋医学の小経験 皮膚科の症例より ー『虚•実』ー ーおつりに大感激ほかー

東洋医学の小経験
皮膚科の症例より ー『虚•実』ー
ーおつりに大感激ほかー

第4部 東洋医学ひぐちクリニック
樋口 理

東洋医学の概念ー『虚•実』ー初めて見た時は、何のことやら?私には関係のないどうでもいい事でしたが、段々分かってくると、便利!便利!!と思えてきます。
これも、西洋医学にはない概念ですが、知っておくと便利ですし、助けられます。
最近経験した皮膚科の症例2例を提示します。この症例を通じて『虚』『実』の概念の一端が少し理解できればと思います。
共に顔の赤みが問題でしたが、使った薬は全然違います。
又、今年の夏の興味深い例;漢方のおつりでコレステロールが下がった例を示します。

【症例1】50歳、女性
C.C.;顔の湿疹
P,I.;H24.7月頃より顔に湿疹ができたが、放置。徐々に酷くなってきたので、近医受信し、生検にて酒皶の診断を受ける。内服治療や軟膏を続けるも徐々に悪化傾向にあり、インターネットで調べたら酒皶は治りにくいと知った。治療法を変えようと考え、受診される。

治療&経過;
長らく十味敗毒湯と西洋薬を服用されて、今一つとのことで、赤みなので清熱剤の温清飲を投与し、大椎より刺絡後吸い玉施行。2週間後にはかなり赤み消失。治癒まじかと思っていたところ、焼き肉と香辛料を取られて顔面発赤が増悪。実熱と考えて、黄連解毒湯を少量服用を指示。翌日さらに赤みを憎悪し、皮膚がツッパリ、顔がパリパリでどうしようもないとーー症状悪化。どうしようかと逃げ出したくなりましたが、経絡では胃経の赤みなので、実ではなく虚と考え、胃陰を補えばどうにかなると考え、麦門冬湯を投与。翌日には赤みが劇的にひき、その後治療までたどりつけました。

【コメント】実と虚を間違うと大変なことになります。この方は経絡の知識と胃陰を補うことが奏功して、どうにか治療まで持ち込めましたが、貴重な経験をさせてもらうと同時に、漢方治療の奥深さと、証が合った時の効き目の凄さを再度認識させられました。益々精進して精度を高めようと思いました。
陰と陽について;西洋医学には無い概念ですが、知っていると時として、助けられます。

•正常は陰と陽は1:1
陰と陽は1:1

•虚熱;陽が減少して、相対的に陽が増える
陽が減少
治療;陰を補う

•実熱;陽が増加して、絶対的に陽が増える
陽が増加
治療;陽を瀉す

【参考•用語解説】
麦門冬湯は手帳では、適応は痰のきれにくい咳、気管支炎などとなっていますがーーー。
中医学の解説書を見ると、

組成;麦門冬、人参、甘草、大棗、粳米、半夏
効能;益胃潤肺、降逆下気
主治;肺胃陰虚、肺気上逆

処方分析;麦門冬ーー潤肺止咳、益胃生津
     人参――|
     天草   |
     大棗   |―益気生津
     粳米――|
     半夏ーーー降逆下気、

麦門冬は肺と胃の陰分を潤し、乾燥症状を治療する。人参、甘草、大棗、粳米は主に胃の気と津液を養う。母臓の脾胃(土)の気陰を上昇させて子臓の肺(金)を潤し、肺症状を関節的に治療する。

※益胃潤肺;胃と肺を潤す治法である。
※降逆下気;上逆した気を下降させる治法である。本方における上逆した気とは虚火の上逆と肺気の上逆を指している。
※肺気上逆;肺の粛降作用が失調して、逆に上逆する症状である。

•本方剤は『肺痿』を治療する処方である。「虚すればすなわちその母を補い」「燥なるものはこれを潤す」という治則に従って、肺と肺の母(病の根本原因)である胃を潤す組み合わせとなっている。病位は肺にあるが、病因は胃にあると考えられる。
五行学説では、「母の病は子に及ぶ」とされ、母(土=脾胃)が子(金=肺)に影響したと考えます。例)肝→心→脾→肺→賢

◆なぜ麦門冬湯が劇的に効いたか?
一般に赤の色は西洋医学では『炎症』として、ステロイドや非ス剤で押さえ込もうとしますが、東洋医学では『熱』として寒薬で冷やす或いは『熱』を瀉すとなります。
陰と陽(西洋医学にはない概念ですが)は正常では1:1ですが、『虚』と『実』という概念があります。顔が赤いでも、『虚熱』と『実熱』という2タイプー上図参照ーにわけられます。
この症例は私が赤みを『実熱』と判断し、瀉すために黄連解毒湯を少量投与し、更に症例悪化し、方向転換して『虚熱』として麦門冬湯を投与しました。決め手は舌診でした。脾胃の部分の苔が若干はげ落ちていました。これは胃陰不足を意味します。胃陰不足を麦門冬湯で補い、隠陽のバランスが是正され、肺を濁し、結果肺症状を関節的に治療し皮膚症状が改善したとなります。これで辛うじて赤みが軽減し良くなったからいいようなもんで、冷や汗ものでした。しかし、舌診に救われ、何時もの様に、東洋医学のこの治療体系を作った古人の凄さに唯々感服します。

【症例2】34歳、女性
C.C.;顔面の赤み
P.I.;2年位前より、顔面の赤みが出現。複数の治療機関を受診したが、治療法はほとんど同じで、軟膏と抗アレルギー剤など。治療したが効果が実感できず、いつのまにか治療を止めてしまった。友人から、漢方や鍼治療でどうにかなるかもと奨められて受診。赤みは熱っぽく、熱がこもっている感じが強く、食後や入浴後は特に熱っぽくてたまらない。

治療&経過;人に熱を生じる食べ物の制限を指示。実熱と判断し、清熱剤の温清飲を投与。大椎より刺絡後吸い玉施行。食後の熱感には黄連解毒湯を投与。顔全体の赤みは比較的順調に軽減し、唇の周りに赤みが残り、白虎加人参湯を投与。これが著効を示し、3~4日でほぼ赤みは消失しました

【白虎加人参湯】
処方分析
石膏(甘寒)ーーー生津
知母(苦寒)ーーー養陰
米ーーーーーーーー
甘草ーーーーーーー胃と津液を保護する
人参ーーーーーーー益気生津

寒の薬性をもつ「石膏」「知母」は「熱なる者はこれを寒す」の治療原則による配合で熱邪を清する。

【コメント】
症例1も症例2も西洋医学では、皮膚の赤みに対して、炎症とステロイド剤や抗アレルギー剤が投与されていました。症例1はそれでも悪化傾向のために、治療法を変更されました。途中足踏みしましたが、虚熱として麦門冬湯が奏功しました。症例2は2年間の治療でも今一つで、東洋医学へ変更され、実熱として白虎加人参湯が著効を示しました。
西洋医学でうまくいけば問題なしですが、経過が長引きお手上げ状態、うまくいかない時には、別の角度から次の一手を打てれば医者も患者も救われると思いました。患者様は治ればなんでもかまわないのです。

【症例3】63歳、女性
C.C;ギックリ腰し易い、朝一は左腎部痛み、子宮の違和感、悪夢をよく見る他
P.I.;5~6年前より体調が悪く、近くの医院やマッサージや鍼治療をしている。
本当は出産後から悪いのかもしれない。のべつ幕無しに落ち着きなく自分の事をしゃべり続け、アージャコージャ話がとび、つかまえ所のない、こちらの質問にはあまり反応しないような変な方でした。とにかく忙しい方。
H26.5.9.受診

治療&経過;つかまえ所なく、一番気になる腰の問題より治療をとーー。鍼治療は、調気、三気海、頚背部の凝りに置針。肘の膝3穴を取り、遠位置針ー患部運動療法。漢方薬は、六君子湯で脾を調整、八味丸+桂枝茯苓丸をベースに、諸々の訴えに振り回されて、半夏厚朴湯、十全大補湯などを投与。7月上旬には、かなり落ち着かれ、部屋へ入ってくるなりの不定愁訴は軽減。腹部動悸;最初に比べて軽減してはいましたが一を目安に桂枝加竜骨牡蛎湯、産後の体調不良を目安に、帰調血飲、就寝前に牛車腎気丸を投与。経過比較的良好で、8/6採血。コレステロールは224と説明すると、「不思議だ」「不思議だ」の連発。
よくよく尋ねると、この十年コレステロールは300前後で推移して気になっていたと。食事もかなりひかえているのにとーーー

【コメント】;コレステロールのあがる本当の原因はストレスで、食事性は?漢方治療をしていてコレステロールが下がって不思議と言われる方は結構いらっしゃいますがーー。
日本漢方の世界では、腹部動悸は交感神経過緊張の目安。桂枝加竜骨牡蛎湯を投与し、当初は突き上げるような動悸が徐々に温和になり、消失。この方の諸々の症状も軽減し、ユッタリ気分の感じです。動悸消失に伴い、”おつり”として、コレステロール5/9;286が8/6;224と3ヶ月で62低下しました。患者様は大喜びです。スタチン製剤で合成経路をブロックすればシャープに下がりますが、上がる原因(ストレス)は除かれませんからずっと飲み続けなければなりません。意識して経過をおったのは此の例が初めてですが、動悸消失の結果、交感神経過緊張が改善されて、コレステロールが低下していますから、安保徹先生のコレステロールはストレスで上がるは真実と思いました。どうも食事性ではないようです。ストレスをとる治療をしてあげれば、スタチン製剤を飲み続けなければいけない人が激減するだろうと考えました。東洋医学の鍼治療は、人体を簡単に副交感神経優位にします。漢方製剤の多くも、バランスを取り、副交感神経優位にすると思います。西洋医学と東洋医学の良い所をミックスして日常臨床に使えば、穴のない治療ができるのではないかと、症例を経験する度におもいます。

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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【院長】樋口 理
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