論文タイトル

31.東洋医学治療の小経験 ー足底&腫&足関節の問題へアプローチー

31.東洋医学治療の小経験 ー足底&腫&足関節の問題へアプローチー



東洋医学治療の小経験
ー足底&腫&足関節の問題へアプローチー

第4部 東洋医学ひぐちクリニック
樋口 理

鍼治療の大原則として、世界最古の医学者;『素問』『霊枢』他には、五臓及び陰経の病気は常に陽分の兪穴(背中にある)のところにその変化があらわれ、六腑及び陽経の病気は常に陰分の募穴(腹部にある)のところに現れる。これが古典でいう【陰病は陽に行き、陽病は陰に行く】という病理変化であり、従って臨床において臓腑の疾病を治療する場合、臓病では通常、背兪穴を取り、腑病では腹募穴を取る。これは【陽から陰を引き】【陰から陽を引く】ことにもとづいた内蔵に疾病がある時は背部の兪穴を取り、体表に疾病がある時は腹部の募穴を取るという治療法則と取穴方法である。
『霊枢・根結』編に「針を用いるの要は、陰と陽を調えることを知るに在り」と記されているが、臓病や腑病に対し、それと関連した兪穴ないし募穴に刺針することは、正に陰陽の偏盛偏衰を調えて邪を外に引き出し、疾病治療の目的を達成することである。例えば肺経は陰経に属しているので、肺に病変が生じた時は肺経の背兪穴「肺兪」で治療を行い、胃経は陽経に属しているので、胃に病変が生じた時は胃経の募穴「中脘」で治療を行うなどである。
兪募穴の応用は臓腑自体の病変の治療にとどまらず、五臓の背兪穴はさらに臓腑と関係する器官の疾病にも用いられる。例えば肝は目に開竅しているので、眼の疾患では「肝兪」を取り、腎は耳に開竅しているので、耳の疾患では「腎兪」を取り、肺は鼻に開竅しているので鼻の疾患では「肺兪」を取り、心は舌に開竅し、舌は心の苗なので、舌に瘡が生じたり糜爛したりする場合は「心兪」を取るなどである。
これを応用して足の裏の不定愁訴に対して、【陰から陽を引く】を基本に、足の裏は陰で腎経の穴位;湧泉があり、陽の背部には「腎兪」がありますから、湧泉に灸頭針をして腎兪へ吸い玉をし、足の裏の症状を腎兪まで引いてみました。予想に違わず、足裏の問題を解決してくれました。症例はまだ少ないですが、先ずは足底の自験例を報告します。

(症例1)S.O.;76歳、女性
C.C.;足の裏がなにかおかしい
P.I.;半年位前から足の裏がなにかおかしい感じがしてきた。気になってしょうがないが、何科にいけばよいか分からずーーー。ひょっとしたらと思い、当院受診する。
治療&経過;陰性食品を制限。調気後、頸背部の凝りに置針。足裏の湧泉に灸頭針をし、腎兪へ吸い玉を施行。直後に歩いてもらうと何となくいい感じと弁あり。1週間後受診。帰る途中で違うのが分かってきた。翌日の朝はいつもと全然違った。この治療を4回したところで。スッカリよくなったとの弁あり、治癒。

【コメント】
【陰から陽を引く】を基本に、足の裏は陰で腎経の穴位;湧泉があり、陽の背部には「腎兪」がありますから、湧泉に灸頭針をして腎兪へ吸い玉をし、足の裏の症状を腎兪まで引いてみました。この理論が正しかったのか、症状は思った以上に早く軽減しました。先人の経験の積み重ね;鍼灸ー恐るべき破壊力を秘めていると唯々感服しました。

(症例2)T.S.;62歳、女性
C.C.;足の裏に血が通わない感じがある
P.I.;1年位前より足の裏に血が通わない感じがある。左足の方がひどい。西洋医学の治療では、腰のヘルニアが原因と言われた。治療したが全然変わらず、治療法を変えようと思い、受診。
治療&経過;陰性食品を制限。調気後、頸背部の凝りに置針。足裏の湧泉に灸頭針をし、腎兪へ吸い玉を施行。4日後受診。吸い玉治療をした日の帰る途中で違ってきた。翌日は全然違い、足の裏を気にしないでよいので何でもできて嬉しくなってきたとの弁あり。以後時々、「あの吸い玉」をして欲しいと言っては受診されます。悪くなっても吸い玉をするとすぐに良くなるので安心して何でも出来るとの由。


【コメント】

(症例1)で味をしめての待ちに待った2例めです。同じ治療法で同様の効果を発揮しました。2例目は明らかに狙っての治療法ですから、うまく行けば、確信にかわります。
故朝比奈博士が『先人の規矩に従えば、治せないものはない』と言われていたのを思い出しました。鍼灸の世界の奥深さに何時も感動します。

(症例3)T.T.;76歳、男性
C.C;両足のシビレ&足裏の何かを踏んだような違和感
P.I.;5年前腰部脊柱管狭窄症と言われて手術をしたが、シビレは取れ無かった。又足裏の何かを踏んだような違和感もある。その後も治療したが直らないと言われた。友人が鍼治療でシビレがよくなったと聞き、自分もと思い受診。
治療&経過;シビレは東洋医学では水のとりすぎ、水毒と説明。陰性食品の制限を指示。
調気後、頸背部の凝りに置針。同じように足底は陰で湧泉に灸頭針をし陽の腎兪へ吸い玉を施行。漢方薬は裏寒に対して附子理中湯合真武湯、瘀血に桂枝茯苓丸、腎虚に牛車腎気丸を投与。途中経過が今一つで、お茶を止めているか聞くと、少し飲んでいるとの弁。再度中止するように指示。その後は明らかに患者様本人が自覚出来る感じー下肢の静脈瘤が引っ込み始め、次いでシビレが軽減し、最後には足底の違和感も軽減消失しました。

【コメント】
手術でもとれなかったシビレが陰性食品制限・鍼治療・漢方治療にて軽減消失しました。
シビレは東洋医学では、水毒であり、種々の治療法があります。西洋医学と東洋医学の良いところを組み合わせて治療すると、満足度の高い治療を提供出来るのではないかといつも思います。

(症例4)O.R.;74歳、女性
C.C.;足の裏がおかしく右足だけスリッパがすぐ脱げる
P.I.;膝関節の治療をされている方です。膝関節の痛みは漢方と鍼治療でかなり軽減し、経過良好です。時々スリッパが脱げていたのが、最近ちょこちょこ脱げるのでどうにかなりますかと依頼あり。
治療&経過;他の症例と同じように、【陰から陽を引く】に従い、足裏の湧泉に灸頭針をして背部の腎兪に吸い玉を施行し増した。直後に歩いて貰うと感じが良いとの弁あり。数回の治療でスリッパが脱げなくなったと言われました。

【コメント】足裏の愁訴は西洋医学では対応できないと思います。東洋医学では【陰病は陽で治す】が大原則。足の裏を陰とし足裏の湧泉に灸頭針を、陽である背部の腎兪に吸い玉をして症状が軽減消失しました。西洋医学の常識では考えられない事ですが、(症例1)~(症例4)までが同じ治療方針で治っていますからーー確率の高い治療法と考えられます。西洋医学と東洋医学の両輪で治療すると、キメ細やかな治療を提供できると何時も諸々を経験する度に思います。又、先人古人の観察力から生まれた治療法のシンプルさと確かさに唯々感服します。

次いで足関節の症例を提示します。むくみと疼痛が主訴で検査しても原因が分からず途方に暮れられていた方です。

(症例1)N.H.;52歳、男性
C.C.;両足の腫脹と痛み、左が強い
P.I.;2カ月前から両足の腫脹と痛みが出現。2~3の医療機関で検査したが両足の腫脹の原因は分からず、何故左が強いかも分からず、一応薬を飲んで治療したが変わらない。らちがあかないので、ーー-7/8受診。
治療&経過;むくみは東洋医学では『水毒』と説明。陰性食品(水3杯、牛乳1杯、コーヒー2杯、焼酎3杯)を制限を指示。鍼治療は調気、下肢は三陰交・陰稜泉に置針。頸背部の凝りに置針。鍼治療直後に痛みが違うとの弁あり。漢方薬は六君子湯、防己黄耆湯、越婢加朮湯を投与。1週間後来院。7/8夕方には腫脹はかなり引きビックリしたとーー。
7/22腫脹疼痛無く、治癒。

【コメント】
両足の腫脹と痛みの訴えは、多分西洋医学ではうまく対応できないと思います。水毒の概念が無く治療法(水をさばく)もないからと愚推します。西洋医学で分からなければ、東洋医学の概念と其の治療法をチョット失敬して使えば、解決も可能となります。そして鍼治療と漢方治療は共に速効です。

(症例2)K.H.;53歳、男性
C.C.;左足の痛みとむくみ
P.I.;2カ月位前から左足の痛みとむくみが起こり、痛風かと思い、2~3軒の医療機関受診し検査受けるも痛風は否定された。細菌が入り込んでいるかもしれないと言われ抗生物質を服用して要るが、それでも治らない。おかしいと思い、友人に薦められて10/7受診す。
治療&経過;左足のむくみは東洋医学では、水分のとりすぎ”水毒”と説明するも半信半疑。陰性食品(毎食後;水3~4杯 計16杯、ペットボトル500ml 3本)の制限を指示。漢方薬は防巳黄耆湯、越婢加朮湯を投与。鍼治療は調気し、左足に八風、踵痛の針、豊隆に置針。患部に刺絡し吸い玉施行。頸背部の凝りに置針。直後に痛みが違うと一言あり。10/8受診。むくむはかなり引き、調子良いが踏み返しで指の付け根が痛む。
陽明胃経と少陽胆経なので、下病上取、陰陽交差の原則にのっとり、右上肢の太陰肺経と厥陰心包経の穴に円皮針を貼る。直後に歩いてもらうと痛みがかなりよいと反応あり。1週間後腫脹消失、疼痛消失、廃薬。

【コメント】
(症例1)に続き(症例2)も鍼治療直後に疼痛の軽減をみ、陰性食品の制限と漢方薬の効果によって腫脹むくみも軽減消失しました。2例共、西洋医学に水毒の概念が無いために、検査しても原因が分からず途方に暮れられていた方です。水毒の概念と治療法を知っていれば比較的短期間に治療へ持ち込めます。日本人の疾病の八割は水毒です。水をさばく漢方薬(利水剤)が無ければ、負け戦となります。相手を確かめ、倒せる武器(水毒の概念と利水剤)を持たずして戦っても所詮は無益な労となります。

(症例3)S.T.;63歳、男性
C.C.;両踵部痛とむくみ
P.I.;3カ月位前から両踵部痛とむくみが出現。踵部痛は朝一で起きて足をつくのに痛んで困る。私が熊本の勉強会で利用する居酒屋の大将です。

治療&経過;針の持ち合わせが少なく、ホログラフィー理論にのっとり手根掌側の横紋中央に円皮針を貼りました。翌日telしてみると、今日の朝は痛くなかった。むくみもとれている。「ありがとうございます」とお礼を言われ、此の次ぎには美味しい物を用意してまっていますとの由。

【コメント】
針の持ち合わせが少なく、ホログラフィー理論にのっとり手根掌側の横紋中央に円皮皮を貼りました。初めての経験ですが、著効果を示しました。鍼治療は色んな治療法があり、それぞれのやり方で人体は反応しますから、バラエティーに富み飽きることなく、新鮮味がありどっぷりはまる訳です。

◆◆【参考】水代謝と漢方薬
①肺気の宣散と粛降ーーーーー防己黄耆湯、越婢加朮湯
②脾気の昇降と運化ーーーーー胃苓湯、真武湯
③ 腎陽の蒸化と膀胱の気化ーー牛車腎気丸、五苓散
④ 三焦の通暢ーーーーーーーー温胆湯、柴苓湯

次いで踵の痛みの例です。西洋医学一辺倒の時はうまく解決出来たという印象がありません。鍼治療をするとどうなるか?殆どの例で軽減・消失を見ます。

(症例1)T.Y.;76歳、男性
C.C.;左踵痛
P.I.;1週間前から左踵痛があり、朝踵をつくと痛み、靴をはくと痛くて歩けない。
湿布をしているが良くならない。
治療&経過;左足の痛みは東洋医学では水分のとりすぎが原因と説明。陰性食品の制限を指示。鍼治療は太溪・崑崙に灸頭針、三陰交と絶骨(懸鐘)に置針。その後歩いて貰うと左踵痛消失。靴をはいて階段の昇降をしても疼痛無く治療。
【コメント】疼痛疾患に対しては、鍼治療は速効です。この方は後日別件でみえられましたが、鍼治療1回で症状は消失して不思議だと言われました。私の経験では踵痛は鍼治療で9割以上の方は、その場で軽滅消失します。鍼治療の凄さを医者も患者様も知らないのが今の日本だと思います。米国や欧州では医者が鍼治療をしています。多分日本は30~40年遅れているのではないかと考えています。1秒でも早く苦痛から逃れる方法があれば提供したほうが、医者も患者様も救われます。医療経済の面でも安価ですみます。

(症例2)◆.◎.;32歳、女性
C.C.;左踵痛
P.I.;2週間位前から、左の踵痛みが出現。湿布をしているが良くならない。どうかするとひどくなっている感じがする。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は太溪・崑崙に灸頭針、三陰交と絶骨(懸鐘)に置針。直後に歩いて貰うと、踵痛みは全然違うと一言あり。
【コメント】やはり針治療は速効です。

(症例3)S.H.;33歳、女性
C.C.;右足関節捻挫後の疼痛持続
P.I.;1ヶ月前に右足関節捻挫し、近医でレントゲンは異常無し。湿布と痛み止めをもらい治療。1ヶ月たっても痛みがとれず、正座ができない。つま先立ちで痛む。背屈すると痛む。小走りが出来ない。漢方と鍼治療でどうにかなりますかと依頼あり。
治療&経過;右足に八風、両肘関節の膝三穴に置針し、遠位置針ー患部運動療法。歩いてもらい、痛い格好をしてもらうと少し軽減しているとの弁あり。漢方薬は駆瘀血剤を投与。
3日後、大部よいが背屈の痛みがまだある。少陽胆経なので、下病上取、陰陽交差に従い左上肢の厥陰心包経の内関に円皮針施行。直後に歩いてもらい、背屈の痛みを確認してもらうと消失。小走りをしてもらうと、違和感無し。後日受診。症状は消失、治癒。
【コメント】やはりいつも鍼治療は速効です。陰陽交差を最初に考えついた人は、人体解剖を知り尽くし、錐体路交差を知っていたのではないかと愚考します。古人の知恵おそるべし。唯々感服します。

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当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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