論文タイトル

43.東洋医学の小経験ー左上半身;頸部・脇・肩・肘・手関節・指が痛いへのアプローチーーそれからわかる2~3の事柄ー

43.東洋医学の小経験 ー左上半身;頸部・脇・肩・肘・手関節・指が痛いへのアプローチー ーそれからわかる2~3の事柄ー

 

東洋医学の小経験

 

ー左上半身;頸部・脇・肩・肘・手関節・指が痛いへのアプローチー

ーそれからわかる2~3の事柄ー

 

第4部 東洋医学ひぐちクリニック

 

樋口 理

 

 

 西洋医学一辺倒の時、臨床では、日常茶飯事『私は何時も左が痛む』又は『私は何時も右が痛む』と言う声を聴きますが、その原因に違いがあるなどとは考えも及ばず、全く意識せず「使い過ぎ」「働き過ぎ」「年のせい」「気のせい」等と考えて、痛みが止まらなければ、より強い痛み止めを処方していました。

 

 東洋医学の門を叩き、漢方薬や鍼治療を実践していく中で、右の痛みと左の痛みではその原因が2000年前から違うという事を古人は観察の結果知っていた。従って使用する薬剤も違うという事を知り、実践してみるとドンピシャリ。その原因を教えてあげて治療すると、症状の軽減消失を短時間でみます。これを経験すると、西洋医学一辺倒の時、≪自分は、一体何をしていたんだろう?≫という疑問が起こります。そして、『痛みを治す』と『痛みを止める』とは全く別次元の問題で、どちらが本当なのだろう?という疑問が再度起こります。

 

 左上半身;頸部・脇・肩・肘・手関節・指が痛い、おかしいという症例が大部溜まりましたので、その治療方法と結果を報告致します。そしてそれらからわかった2~3の事柄を示します。

 

 

 

(症例1)34歳、女性

 

C.C.;左頸部痛

 

P.I.;交通事故で受傷後、痛み止めや湿布で治療していたが、段々ひどくなっている感じがするので、治療方法を変えようと受診される。受傷後1ヵ月でした。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。痛み止めや湿布は冷やすので中止と指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。胸鎖乳突筋の圧痛強く、横刺施行。漢方薬は、駆瘀血剤を投与。黒色便が出たのを確認後、疎経活血湯、桃核承気湯を投与。3日後左頸部痛消失。朝起きるときの感じが全然違うとの由。頸部の動きも良くなったとー左後ろを振り向けなかったのができるようになったとの弁あり。治癒。

 

【コメント】
痛み止めと湿布で治療していて今一つが、鍼治療と漢方薬に変更すると3日で治癒でした。此のような症例を経験する度に、痛み止めと湿布は本当に『痛みを治す』治療なのか?という疑問が芽生えてきます。
東洋医学では、『冷えると痛む』『通じないと痛む』がTRUE真実で、治療方法は、『温める』・『通じさせる』です。痛みと湿布には、消炎・鎮痛・解熱効果がありますが、解熱効果がありますが、解熱効果は『冷えると痛む』に対しては更に冷やし逆効果となります。(私の独断と偏見が多々加味されていますが)

 

 

 

(症例2) 47歳、男性

 

C.C.;左頸部痛~上腕痛とシビレ

 

P.I.;1年前から左頸部痛~上腕痛とシビレが出現。昼の12時と午後4時に痛みとシビレのピークがくる。仕事中でも、横になって休まないといけない位辛い。
△リ△とト○ム○ッ○を8錠(1日の倍量)服用しているが効かない。治療していても痛みが引かないので、漢方や鍼治療でどうにかなるならと思い受診

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。胸鎖乳突筋の圧痛強く、横刺施行。漢方薬は裏寒に人参湯合真武湯、胸脇苦満強く四逆散を投与。1週間後、痛みのない日が2日あった。痛みやシビレの範囲が狭くなってきた。胸脇苦満の消失を待って、漢方薬変更。疎経活血湯、二朮湯を中心に左の痛みは血熱と考え、桃核承気湯を少量加味。すると3週間後には、どうしようもない昼の12時と午後4時の痛みシビレは軽減し、休まなくても良くなった。当初の5/10以下。その後、雨前に少し悪くなるとの訴えあるも、日常生活上の支障無くなり、自然廃薬。

 

【コメント】
痛み止めを1年間服用されても、とれなかった痛みやシビレが、治療方法を変えてみると、約1カ月で、日常生活に支障のない状態までになりました。このような症例を経験する度に、西洋医学以外の治療法も選択肢としてある事を啓蒙する必要性を痛切に感じます。
そして、西洋医学と東洋医学には守備範囲があるのではないかという疑問が芽をもたげて来ます。私の拙い経験から、慢性疾患には東洋医学の『温める治療法』が非常に優れているのではないかとーーーこの様な症例を経験するたびに愚考しています。

 

 

 

(症例3)36歳、男性

 

C.C.;左頸部~肩痛

 

P.I.;10年前から左頸部~肩痛があり、複数の医療機関で検査したが、異常はないと言われた。治療法は痛み止めと湿布。仕事中に湿布をしても痛みは治まらず、辛い。わしずかみにされる感じがある。西洋医学以外の治療法と考え、当院のホームページを見て受診。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。湿布も冷やすので使用中止を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。左背部には吸い玉施行。漢方薬は胸脇苦満強く、四逆散投与。胸脇苦満の消失をみて、疎経活血湯、二朮湯を中心に桃核承気湯を少量加味。1週間後、当初の5/10以下。左の胸鎖乳突筋の圧痛強く、横刺施行。直後にスーットしたとの弁あり。3週間後、ほとんど痛まなくなった。治癒。

 

【コメント】
10年間の症状が、湿布を止めさせて、治療法を変えると、3週間で治癒。このような症例を経験するたびに、早く治る治療法があるのにーーー「現代に生きる日本人は、自らこの治療法を葬り去ろうとしている」--呉澤森先生のお言葉ですがーー同じアジアの国の方が日本の惨状をみられて思われる。昔の私は一体何をしていたんだろうと思います。人間は一つの事(西洋医学のみ)しか知らないという事は、一度しかない人生、多大なる損失だと思います。山に登るのに、東西南北どこからでも登れると、景色の見え方も違ってくるのではないかと考えています。

 

 

 

(症例4)45歳、女性

 

C.C.;左上腕内側の違和感(シビレ)

 

P.I.;3年位前より、毎日夕方4~5時くらいになると左上腕内側の違和感(シビレ)が起こってくる。複数の医療機関で検査したが原因はわからず治療法もないと言われた。又自立神経失調症とも言われた。漢方薬局でサフランが良いと薦められて飲んでいるが全くかわらない。漢方と針でどうにかなりますかと依頼あり。

 

治療&経過;陰性食品を制限。鍼治療は調気、頸背部の凝りに置針。漢方薬は日本漢方の胸脇苦痛として、紫故剤(四逆散ベース)を投与。後日来院、3日後には症状消失し、「不思議だ」と。「3年間は一体なんだったんだろう」と一言あり。

 

【コメント】
脇と上腕内側の痛みや違和感は、日本漢方の胸脇苦満として紫胡剤(四逆散ベース)を投与すると、ほぼ全例で3日以内に反応があります。再現性はありますし、著効をしめします。痛み止めや湿布の比ではないと愚考しています。

 

 

 

(症例5)62歳、男性

 

C.C.;左肘関節痛

 

P.I.;5年位前から左肘関節痛があり、使い過ぎと言われ、痛い時には注射をしていたが、すぐに痛みがでてくる。本当に治したいと思い、漢方や鍼治療でどうにかなるならと依頼あり。
仕事は元ボイラー関係で水分はよくとる方である。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は左手に八邪、天宗に吸い玉、頸背部の凝りに置針。肘関節は小陽三焦経に圧痛あり。『上病下取、陰陽交差』の原則に従い、右足の厥
陰肝経の太衝に針刺し、遠位置針ー患部運動療法を施行。直後にタオルのしぼりの動作をしてもらうと大部違うとの由。太衝が効果的なので、皮内針を置針し、1回/日、50回穴を押すように指導。漢方薬は、六君子湯、薏苡仁湯などを投与。1週間後タオルしぼりはよくなった。重量物をかかえると痛む。桃核承気湯を加味。3週間後、重量物をかかえても困らなくなった。治癒。

 

【コメント】
5年来の左肘関節痛が東洋医学治療に変えて、約1ヵ月で治癒。この方は鍼治療の穴;太衝が効果的でしたから、鍼治療だけでも十分いけたかもしれません。このような症例を経験するたびに、経過の長い慢性疾患には東洋医学の方が優れているかもしれないと、一人勝手に愚考しています。

 

 

 

(症例6)28歳、女性

 

C.C.;左手関節痛

 

P.I.;4~5年前から左手関節痛が出現。整形外科で注射をだいぶしたが不変。整骨院や鍼治療もしたが不変。料理で鍋やフライパンを持つのにも支障をきたす。どうかすると夜中にウズイテ寝れない。左手関節は硬い感じがしてギシギシ音がする。拝む格好もしにくい。机に手をつくのもしにくい。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。左手には八邪と刺絡後吸い玉施行。頸背部の凝りに置針。漢方薬は六君子湯、薏苡仁湯をベースに桂枝茯苓丸、疎経活血湯等を投与。すると1ヵ月後、手のギシギシ感が軽減、調子よく外食で水分とりすぎて、疼痛増強。3か月後、日常生活の支障はかなり減っている。当初の4/10。左は血熱と考えて、黄連解毒湯を加味。するとそれまで一言も言われてなかった「いつも夜中に目が醒めて、胸にグットきていたのがこなくなったと」さらに手首の硬さがとれ、軟らかさがでてきたと。半年後ほとんどきにならない。治癒廃薬。

 

【コメント】
4~5年来の左手関節痛が約6ヵ月の治療でほぼ治癒。左には心臓があり365日24時間動いています。筋肉は使うと熱を持ちます。(野球のピッチャーは、投球後氷りでアイシングします。)人の体にもクーリングシステムがありますが、破綻すると左の症状が出現すると東洋医学では考えます。(私の独断と偏見が多々加味されていますがーー)筋肉が熱を持ち、それが血に及び血熱の状態。血熱を冷ます漢方薬を使うと効果的です。

 

 

 

(症例7)61歳、女性

 

C.C.;両方の示指関節痛

 

P.I.;2年位前から、両方の示指関節痛が出現した。手を使い過ぎたり、物に当たると痛む。天気が悪いときもよくない。近医ではヘバーテン結節といわれ、湿布や痛み止めをしているが、一向によくならない。友人から紹介されて受診。

 

治療&経過;関節痛は東洋医学では「水毒」と説明し、半信半疑ながら治療開始。陰性食品の制限を指示。鍼治療は手に八邪、肘に灸頭針、頸背部の凝りに置針、天宗に刺絡後吸い玉施行。漢方薬は裏寒に附子理中湯、薏苡仁湯をベースに桂枝茯苓丸等を投与。1週間後腫れが減ってきた。私は、みてもあまり分かりませんでしたが。便秘もあるので、一緒に治療して欲しいとの要望で、大黄甘草湯、麻子仁丸等を投与するも今一つ。桃核承気湯を投与。すると便秘も好調。半年後、さらに示指関節痛も軽減し、使っても痛くならない。物に当たっても痛くない。「今年の夏は湿気が多く、台風もきたが、いままでとは全然違う。」との弁がありました。

 

【コメント】
疼痛に対しては、西洋医学では治療法は全て痛み止めです。一方、東洋医学では、『冷えると痛む』『通じないと痛む』が大原則で、治療法は『温める』『通じさせる』です。ただし、左の痛みに対しては、普通の治療法で経過が思わしくない時に、『血熱』と考えて対処するとうまく行くことをしばしば経験します。色々な治療法を知っておくと、助けられ救われますから、お薦めです。

 

 

 

◆症例のサマリー◆

部位                経過    治療機関    治療法

(1)頸部           1ヵ月      3日           駆瘀血剤&針

(2)頸部&上腕   1年         3週間         血剤

(3)頸部~肩     10年         3週間        血剤&針

(4)上腕内側      3年        3日           紫胡剤

(5)肘関節        5年        3週間         血剤&針

(6)手関節        5年        6カ月         血剤&針

(7)指関節痛      2年        6カ月         血剤&針

 

 

◆◆症例からわかった2~3の事柄◆◆

 

①頸部;胸鎖乳突筋の圧痛が重要、横刺が効果的。

 

②脇と上腕内側の症状;紫胡剤が著効。3日以内に反応あり。

 

③左頸部・肩・肘・手関節・指;経過が長い例は、あるいは西洋医学では対応困難ならば東洋医学治療に変えて、針治療と血分薬を加味すると効果的である。

 

④鍼治療と漢方薬を併用すると、治療機関の短縮がはかれる。(経絡は知らないと損)

 

⑤慢性例に効果的だから、新鮮例に初めから施行すると、もっと効果的であると予想される。

 

 

##参考;東洋医学見聞録、西田晧一著、医道の日本社##

ストレス疾患の頸背部過敏点

(1)督脈;唖門、風府、大椎、陶道、身柱、神道、霊台、至陽、筋縮など

(2)膀胱経;天柱、膏盲、膈愈など

(3)胆経;完骨、風池、肩井など

(4)頸背部の夾脊穴、椎骨の骨際

(5)奇穴;安眠穴、百労四穴、健脳など

(6)精神的緊張⇨胸鎖乳突筋が凝ってくる

 

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当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
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患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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