論文タイトル

5. 鍼灸治療の小経験 (精神科又は心療内科編)

5.鍼灸治療の小経験 (精神科又は心療内科編)

 


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鍼灸治療の小経験
(精神科又は心療内科編)
―春先の気分体調不良、季節の変わり目の気分不良―
第4部会 東洋医学ひぐちクリニック
           会長 樋口 理
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 東洋医学や漢方を知るまでは、“気分がすぐれない”・『イライラする』・「だるい」・〈やる気が起こらない〉などと言われても--言われても--私にはわかりません。ましてや、治療方法等等でした。清々心療内科を紹介するのが関の山。
 しかし、東洋医学の世界を知ると、解決の道が有ると。
 現在では、不定愁訴(++)の方でも怖くないというか、東洋医学ではどうにかなると考えています。

  『気鬱』 :西洋医学の欝の多分一歩手前の状態。
         ― ―漢方薬の気剤を使います。
『肝気欝結』:春先の気分や体調不良の原因。或いは
          生理前の体調不良。或いはストレスが
          原因でおこる諸症状等。疏肝解鬱の薬
          剤を使います。

季節の変わり目の気分体調不良
 暦のうえでは、四季には土用が有ります。土用の丑でうなぎを連想される方が多いと思いますが一そうではなく立夏・立秋・立冬・立春の前のそれぞれ18日間を土用とします。

東洋医学では土用を五行(肝木・心火・脾土・肺金・腎水)の脾に対応させています。

脾とは西洋医学の消化吸収全般の機能をいいます。
従って、原因は脾嘘:脾が十分に働いていない。わかりやすく言えば、犬猫の毛が生えかわるにもエネルギーがいるのに、そのエネルギーを作れない状態ということです。
(西洋医学にはこの考え方・概念はなく、又治療法もありませんが)と考えて、治療は脾を補う或いは脾を持ち上げて立て直すことを考えます。補益剤を使います。

一方、鍼治療では血液の調整に四関穴(足:大衝穴、手:合谷穴)、三焦(人体を上・中・下の3つに分けます)の調節に三気海(檀中、中脘、気海)、頸部では華延齢老師の頸叢刺法を用います。下に図示します。

【図①】
頸叢刺法
(参照 東洋医学見聞録、中巻、西田皓一著)
 後頭部に多鍼する治療法である。督脈を中心に縦と横に刺鍼する。縦には下脳戸、風府、瘂門に刺鍼し、横には風府から完骨まで6等分し、左右両側で12穴、合計15穴になる。
ちょうど孔雀が尾尻尾を広げたようになる。下脳戸は外後頭部隆起の下に取穴する。

刺鍼法:普通40mm鍼を用い、刺鍼方向は皮膚に直角
      に刺入し、軽度提挿を行い、得気を得たら30分
      置鍼する。

適応症:華延齢老師の説明によれば、臨床上の適応は
     広範囲で、脳血管障害の後遺症、癲癇、片頭
     痛、脳震盪、脳震盪後遺症などの脳原性疾患、
     高血圧、過敏性喘息、慢性鼻炎、風邪、遺尿、
     ノイローゼ、パニック障害などに効果があるという。

頸叢刺の治療方法

イラスト(▲)は頸叢刺の治療方法を図示したもの、
写真(▼)はその治療風景
頸叢刺の治療風景

気の問題を訴えて来られる方の多くは、四関穴、三気海、頸叢刺法をすると直後に「気分がよくなった。」「元気が出た。」などと言われます。
印象に残っている症例を示します。

症例1)  70代   女性
 C.C.:あちこちの痛み、季節の変わり目の気分体調不良
 P. i. :20年前の転落事故以来、痛みと体調不良が有り、
      15年間諸々の治療をしたが不変。あきらめていた
      が、主人から勧められてH23.3.受診。

治療及び経過
 四関穴・三気海・頸叢刺法を施行、漢方薬は気虚として捕中益気湯を中心に八味丸、治打撲一方、駆お血剤投与。1週間すぎた頃より「違う」との弁有り。もう3年経過しましたが、何か行事が有るとバタンキューで点滴注射や寝込む日々でしたが、すっかり元気になられました。季節の変わり目もバッチリへのかっぱです。風邪もひかなくなりました。本当に治るというのは、この様になること。ぶれなくなる事だと教えられた症例です。

症例2)  70代   男性
 私にとっての初期のビギナーズラックです。
 C.C.:転落事故後、汗がでてとまらない。多いときは一
     日に10回以上着替えないといけない。
 P. i. :十年前の、転落事故後汗がでてとまらない。大病
      院の心療内科や諸々の治療を試みたが、治らない。
      風呂敷包みに治療歴等の資料15cm位ありそうでした。

治療及び経過
 自汗は気虚というのを覚えたばかり、気虚と診断して捕中益気湯を投与。しかし、反応は今一つ」、桂枝加黄耆湯を合方、1~2週すると徐々に違ってきたとの弁有り。10回着替えていたのが、5~6回と減り、受診の度に「汗が汗が止まらない。」と言われていたのが、言われなくなり3ヶ月後には、「気にならなくなった。」と言われ、廃薬。本当に治れば廃薬―薬は飲まなくて良くなります。そして、気にならなければ、それで良いのです。

【参考①】
【気虚】

気 虚:少し動くだけで汗をかき易い。全身が疲れやすく力が入らない。動くのがおっくうである。言語に力がなく、声が低くて弱い。
肺気虚:息切れ。せき
心気虚:息切れ。何となく胸さわぎする。
啤胃気虚:顔色がおとろえて黄色い。精神疲労。手足がだるい。消化不良。食欲が減ってきた。
気うつ:いらいら。気分がうっとうしい。のどのつかえ感。胃のあたりが張る。
気滞:肋骨弓あたりが張る。肋骨弓あたりが痛い。胃のあたりが痛い。胸や腹の痛みがあちこち移動する。下腹のあたりが張る。

《コメント》
西洋医学では不定愁訴、検査でも異常はなく、『年のせい』『疲れから』と・・・・。
しかし、東洋医学では治療の手を差しのべる事ができます。

【参考②】
【陰虚】

陰虚:陰陽のバランスの問題。陰分が減る。
陽虚:陰陽のバランスの問題。陽分が減る。
陰陽のバランス

  陰虚 :虚熱(内熱)を生じ、微熱、五心頬熱、午後の潮熱、
       消瘦、盗汗、口燥咽乾、尿赤
五心頬熱:両手掌・両手底・胸中を五心という。煩熱は、発熱
       と同時に心煩あるいは煩躁して、胸苦しく感じるも
       のを煩熱といい、手足をばたつかせる事を躁という。

西洋医学では、自律神経失調症、鬱病、心身不安定症、不安神経症などの病名が付くと思われます。治療はいたって簡単。補陰すれば勝手に治っていきます。

心陰虚には天王補心丹、肝陰虚には杞菊池黄丸、肺陰虚には百合固金湯、腎陰虚には六味地黄丸が用意されています。
陽虚:虚寒を生じ、食欲不振、うすい唾液があふれる、寒がりが冷える、夜間尿の回数が多い、小便清長、女子の帯下がうすい等。治癒は補陽です。

《コメント》
『手足がほてる、あつい』と言われても困りますが、東洋医学、特に中医学の陰虚の概念でいくとわかりやすく、陰を補うだけでよくなっていきます。
鍼と漢方と併用するとパワーアップします。

 

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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【院長】樋口 理
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