論文タイトル

7. 鍼灸治療の小経験(皮膚科編)

7.鍼灸治療の小経験(皮膚科編)

 

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鍼灸治療の小経験(皮膚科編)
第4部会 東洋医学ひぐちクリニック
             樋口  理
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 東洋医学や中医鍼灸を勉強して行くと、西洋医学とは違い、診方が変わってきます。
要するに、東洋医学は人間を丸ごと一匹の感覚で診ていきます。そうすると、食べた物は全て大小便で出て行くと考えるのが西洋流、片や東洋は全てが大小便ででていかなければ、他の穴から出る。即ち口から、目汁、鼻汁、其れでも駄目なら皮膚から排泄と考えます。

西洋医学でうまくいかない時に、東洋医学の考え方で次の一手、二手を打てると助かる事があります。知っていて損はありません。

 東洋医学では五臓の肺→大腸→皮膚→鼻→毛と関係が有ると考えます。鍼灸の大きな原則を下記に示します。

従って中医鍼灸では、
皮膚病全般の治療:経絡の肺経と大腸経を用います。
肺は皮膚を司る、肺と大腸は表裏

痒み:風池・風門・血海・膈兪・三陰交
血穴“風を治すには、血を治”

発赤:大椎・曲池・委中・合谷
清熱穴

浮腫:豊隆・陰陵泉・足三里
去湿穴

乾燥:復溜・腎兪
潤す穴位

痒いとイライラ:大衝・内関・四神聡(心労があれば)
精神安定の穴位

胃腸虚弱:足三里・中脘・三陰交
皮膚の栄養の穴位

〔5月7日投稿〕

【参考】
皮膚が赤い=熱と判断
痒く移動=風と判断
蕁麻疹様に盛り上がる=湿と判断
乾燥して落宵=燥と判断
熱に対しては漢方は清熱剤、穴位は清熱穴、同様に風に対しては治風剤、血穴。湿に対しては去湿剤、去湿穴。燥に対しては、潤剤、潤穴位が用意されています。
コメント:漢方と鍼で充分対応できるということです。

『傷寒論』に従った治療穴
(1)表熱証:太陽経の経穴
   手の小腸経:後谿・足の膀胱経:委中、風門、肺兪

(2)半表半裏証:小腸経の経穴
   手の三焦経:外関・足の胆経:風市、風池

(3)裏証:腸明経の経穴
   手の大腸経:合谷、曲池・足の胃経:足三里

(4)陽経を総括する督脈:大椎、風府

(5)熱をとる上半身の穴位:間使、合谷、曲池、列缺、
   大椎、百会、外関など

 私は元整形外科医ですから、皮膚科はあまりきませんが、数少ない中から症例を示します。全例、鍼灸治療と漢方薬、刺絡等を行っています。

症例1) 60歳   女性
    C.C.レイノー病

【参考】レイノー病は日本では難病、中国では動脈の痙攣、私の拙い経験では水毒。
先ず、中国の文献を示します。レイノー病は治癒すると記載されており、初めて見た時には目からウロコでした。
━━━総有効率100%の数字にビックリしました。日本は負けていると。
文献を示します。

レイノー病(肢端動脈痙攣病)
     〔中医学:厥証〕

【治療】
刺鍼と刺絡法
取穴:手指に発現する者、主穴:欠盆。配穴:十宣・手三里・内関・小海。
配穴:足十宣(足指先端)・秩辺・環跳。
方法:欠盆(雀啄法)に刺鍼。置鍼はしない。十宣は刺鍼し3~5滴出血させる。そのほかの穴位は刺鍼後20分置鍼する。毎日1回。18回で1クールとする。

【資料摘録】
レイノー病に対する刺鍼治療(31例)
男10例、女21例。年齢、最年長60歳、最年少24歳。発病部位が両手指の者27例、両足趾の者3例。上述の方法で2~4クール治療した。その結果、完全治癒した者21例。著効10例。総有効率100%。(張継武:『中国鍼灸』。1988年4号25貢)

P.I. 10年来の病歴の方で、諸々の治寮をしたけれども、不変とのことであきらめていた例です。

治療経過:徹底的な水分制限を柱に、甘い物、果物、白い物等を制限します。鍼は八邪(指間に針)を施行、肘に灸頭針(針をして更に灸する)吸い玉。漢方薬は当帰四逆加呉
茱萸生姜湯を基本に駆お血剤、利水剤、去湿剤等を使用します。
寒冷暴露でも白くならない、しびれない、じんじんしない、物を落としていたのが落とさなくなる、
白くなる範囲が狭くなる━━━これには一定の法則がありそうです。人の体では、水は床上浸水方式でたまりますから、治っていく時は床下へ水が引いて行くイメージです。
温めるとすぐに元に戻る━━━其のような経過でおきなくなります。

症例2)  鶏眼一般
 西洋医学ではスピール膏、外科的切除。しかし結構再発します。
東洋医学では“冷えると縮み固くなる”という原則が有りますから、鶏眼の治療は灸で焼き切るか、火鍼で熱を入れる、のどちらかでかなりいけます。諸々の治療であきらめていた方、此の方法で経過良好。

症例3)  蕁麻疹一般
 西洋医学では原因はアレルギー、東洋医学では人を丸ごと一匹の感覚で診ます。膨疹は体表から盛り上がっていますから、余分な水━━━水毒と考えます。

 治療は痒み(+):
前出の②痒み:風池・風門・血海・膈兪・三陰交・発赤(+):
前出の③発赤:大椎・曲池・委中・合谷・浮腫(+):
前出の④浮腫:豊隆・陰陵泉・足三里痒くてイライラ(+):
前出の⑥痒いとイライラ:大衝・内関・四神恥(心労があれば)で鍼治療をし、漢方薬は発表の桂麻各半湯・消風邪散等を使います。
が冷えて起こる寒冷蕁麻疹は、温めれば治りますが、西洋薬には残念ながら薬はありません。
又温まるとおこる蕁麻疹は冷やせば治りますが、これも多分薬がありません。

 最近の経験例:54歳 女性、26年間の蕁麻疹歴:抗アレルギー剤服用
イライラが強く、冷えると起こるタイプー、
便秘傾向:水分制限し、鍼治療、漢方はイライラに対して加味逍遥散+四逆散、便秘に防風通聖散、消風散を基本に寒冷時に麻黄子細辛湯を頓用。約3ヶ月で印麻疹がおきなくなりました。 

本人の弁:
2/15 P.M2:15  針治療する
              針治療する前必ずかゆみがでてい
              るが、針を刺した瞬間すぐかゆみ
              がなくなり、体がなんとなく落ち着く
2/16 ~ 2/17  じん麻疹が、右腿上にでる
P.M6:15 ― 6:45  時間不特定に首・顔にかゆみあり
               しかし、15分ぐらいで止まる
2/15 P.M6:00- 湿疹がでん部、太ももつけ根あた
               りに数個できるがかゆみが弱い
2/9 ~ 2/26   全くじん麻疹はでていない
               湿疹は時々できるが、かゆみが弱い

 以前は、下腹部・大腿・踵が触ると冷たかったのが温かくなり、痒みがでると2時間は何もてにつかなかったのが、蕁麻疹が出なくなり今はリラックスできているとの弁をいただきました。

コメント:この方は26年間、抗アレルギー剤をのみつづけて治らず、東洋へ変更すると3ヶ月でメドがつきました。何故か?
抗アレルギー剤で自然治癒能力を止められたからと私は(独断と偏見が加味)考えています。かゆみや膨疹は、鍼治療で軽減することは、しばしば経験します。

症例4) 26歳女性
C.C.下腿の湿疹、足が冷える、顔がのぼせる
P.I. 6ヶ月前から治療しているが、治らないと言って受診。
患部は発赤(+)、痒み(+)、浮腫(+)、浸出液(+)、色素沈着(+)治療&経過:湿熱下注と診断し、竜胆瀉肝湯、冷のぼせには五積散を投与。
針治療はストレスを取るための針等、又患部には三陵針後吸い玉施行。
3日目より冷えのぼせ改善。1週間:湿疹はかなり枯れ、発赤(-)、痒み(-)、浮腫(-)、浸出液(-)。
2週間:色素沈着のみ、投薬変更し経過観察中

コメント:経過が早いと思います。

【参考】
湿熱下注:中医学の概念です。正確には肝胆湿熱下注証といいます。
発熱、排尿痛、排尿困難、残尿感、尿の混濁、陰部の熱感・痒み・腫脹、悪臭のある黄色な帯下など、竜胆瀉肝湯が特効薬です。
竜胆瀉肝湯が特効薬にはもう一つ突発性難聴などの肝胆実火証という証もあります。

因に、肝胆湿熱下注証は西洋医学の病名では、ベーチェット病、帯状疱疹、陰部湿疹、陰部掻痒症など、肝胆実火証は高血圧、急性黄疸性肝炎、急性胆嚢炎、赤血球増多症、尿路感染症、甲状腺機能亢進症、前立腺など病名ではなく、その証があれば使えます。
その他)

有痛性ケロイド:刺絡後吸い玉施行するとその場で痛みがとれます。
水イボ:桂枝加黄耆湯十五苓散+ヨクイニン未少量
西洋医学はピンセットでつまみ取りますが、漢方治療すると1~2週でポッロト取れます。
水虫:火鍼や灸が有効です。
・中国刺絡鍼法の文献疾患をあげておきます。薬物を使わない治療法です。

  中国刺絡鍼法、東洋学術出版社
尋常性疣贅、青年性扁平疣贅、伝染性軟属腫、足底疣贅、単純性疱疹、帯状疱疹、尋麻疹、
湿疹、疥癬(牛皮癬)、肝斑、尋常性座瘡、円形脱毛症、壮年性脱毛症、鶏眼、凍瘡、足白癬、皮膚病と食養

 東洋医学では、皮膚病は排泄現象と考えますから、日常生活の中で皮膚病に影響を及ぼす生活習慣のチェックは必須事項となります。
例えば、沼田勇博士は食事療法の一般的注意として
①食べ過ぎること
②果物、酢の物等、水分の多い物を避ける。
③水分を空腹時に取る。
④良く噛んで食べる。
⑤塩分は少ない方が良い。
⑥内容不明の即席食品、化学薬品は避ける。
いわゆる精のつくもの、鳥獣魚肉類、動物性脂肪、餅、ナッツ類、チーズ、バター等の乳製品はよくない。

治った後でも2~3年は、厳重に食事治療を守ることが必要だとしています。
白い物、例えば白砂糖、白米、白い脂肪(動物性飽和脂肪酸)などは、特に悪いものと考えています。
食べ物がほぼ原因と思われた症例を呈示します。

症例1)  45歳  男性
C.C.臀部の脹れと湿疹
P.I. 20年位前より2~3・4回/年臀部が腫れ、その度ごとに切開していた。外科や皮膚科で検査を何回もしたが、原因はわからない。漢方でどうにかならないかと平成22年10月16日受診。

現状:臀部は手術瘢痕でやや凸凹、特に灸症所見はなし。
治療及び治療経過:牛乳が大好きで1~1.5ℓ/日 此れを制限し、コーヒー、茶等陰性食品を制限。

H22.10.16  Rp.
      朝、昼 十味敗毒湯
      夕   補中益気湯
H22.12.14 漢方薬を飲んでいると何となく調子がよい。
H23.4.21  毎年12月と2月には必ず腫れていたのが腫れなくなった。
H24.5.21  大分調子良いので牛乳を飲んでよいかと質問が有り、自分の体に聞いてみるの
      が一番良いと勧める。
H24.10.26 今年の夏は牛乳を飲んだが、調子が悪い(少し腫れてきた)

コメント:食事制限と漢方治療で毎年2~3・4回切開していたのが良くなった。特に12月と2月に発症していたものが起きていない。
牛乳を飲み始めたらしく少し悪くなった。多分牛乳が原因と思われます。

症例2)  50代  女性
C.C.右下腿の湿疹━8年前から
P.I.膝痛と肥満で鍼治療と漢方、陰性食品の制限で膝痛は1ヵ月で消失。体重も14kgの減量ができました。
漢方治療のおつりとして、5年前からの涙目が良くなった(涙目専用のメガネをかけなくて良くなった)。
また8年前から右下腿に有った湿疹━治らないとあきらめていた━ジュクジュクの湿疹が乾燥しよくなってきました。スナック菓子で悪化します。又コーヒーも止めさせました。

コメント:膝痛と肥満で鍼治療と漢方、陰性食品の制限をしていたら、涙目と下腿の湿疹がよくなりました。
東洋医学では、食べた物が、大小便で出なければ、他の穴、口、目、耳、鼻から出ると考えますから、陰性食品の制限をすれば、涙目も治るのは当然です。下腿湿疹は、“中医学の湿熱下注”に相当し、竜肝胆瀉肝湯でよくなる例は多々あります。

症例3) 乳幼児湿疹
 ステロイド軟膏を塗りたくないと言って、受診されますが、おかあさんは嗜好品:チョコレート、アイスクリーム、ヨーグルト、スナック菓子などを制限するといつの間にか良くなって行きます。

 

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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