論文タイトル

8. 中医学の先生からみた日本

8.中医学の先生からみた日本

 


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中医学の先生からみた日本
日本人の泣き所━胃腸病
東洋医学ひぐちクリニック
    第4部 樋口   理
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〔H25年6月14日 投稿〕

 


 最近の水のみ健康法、水分は小まめにとりましょう。西洋医学の発祥地ヨーロッパ大陸などでは、乾燥しているため、水分を取っても皮膚から蒸散していきます。

 しかし、両方を海に囲まれた日本:湿気の多い日本では、昔の住居は高床式で通風をとる工夫がされていました。
水分を取りすぎて、体調不良をおこしている方がいかに多いか!湿気が人の体に入り込む、溜まっている。
西洋医学にはない概念ですが、中医鍼灸師の呉澤森先生が胃腸病を例にわかりやすく解説され、鍼灸治療で治されています。呉澤森先生の許可を得え、参考に掲載します。(参照:鍼灸の世界、呉澤森著、集英社新書)

 西洋医学でどうもうまくいかない、そんな時に東洋医学のアプローチを知っていると、医者も患者も救われます。

呉澤森先生のお話
食習慣と生活環境の問題が胃腸病を生む

 日本で治療をしていて特に感じることは、胃腸の弱い人が多いということである。
来院する患者のうち、二〇代から五○代の男性の五〇パーセントから七〇パーセント、二〇代から五○代の女性の三〇パーセントから四〇パーセントは、胃腸の機能が慢性的におとろえている。

もっとも大きな理由は、日本の食習慣、とりわけ調理法にあると考えられる。
日本では、冷たいものや生ものや焼き物といった、消化の悪いものが好まれる。こうした料理は、調理法がわりあい簡単で、生のままあるいは生に近い形で出される。しかも、一つの料理に使う素材の種類がとても少ない。

中医学の立場から見ると、これからのことは決してからだにいいとはいえない。
中国では、ふだんの食生活は質素であるが、食材や調味料の種類が豊富である点で、胃腸に優しいといえる。

第二の理由は、生活環境の問題である。
日本は梅雨が長く、総じて湿度が高い。過度の湿度は胃腸の働きをさまたげる大きな要因となる。

第三の理由は、現在流行している「食べ放題、飲み放題」に代表される暴飲暴食、つまり飲食の不節制である。
偏食になりやすい外食や「はしご酒」の習慣も胃腸の働きをさまたげ、発病因子となる「湿」を生みやすくなり・こうした食生活を若いころから続けていると、やがて胃腸は慢性的に弱った状態になり、胃の痛みや腹部の膨満感・げっぷ・食後すぐ排便したくなる・おならがよく出る・便は一日一~二回で便秘と下痢を繰り返す・舌にべったりとした白い苔がつき舌のへりに歯痕が現れる(舌診図:左3段目)といった慢性症状が起こるようになる。

「耳はからだの窓」といわれる。
「耳はからだの窓」といわれる。胎児が母体の中にいるのと同じ、頭部が下にあり下半身が上部にある。


 さらに鍼灸独特の診察方法である耳の観察では、「胃」「腸」のあたりが充血したり、あるいは蒼白になっているのがわかる。

中医学では「耳はからだの窓」といわれる。
臓腑や器官、組織、感覚器などは、すべて耳とつながっているから、いずれかに異常があると、その微候が、耳の対応する部位に現れると考えるのである。
たとえば、不妊の女性の場合、耳の三角窩にある「子宮」や「卵巣」の色が変わる。
アフリカの店長をつとめる、三〇代の男性が、ひどい下痢で来院した。
下痢は五~六年前から、一日平均三回から四回で、多きときは六回から七回もの未消化の排便があるという。
ある病院で、内視鏡による大腸検査や直腸検査を受けたが、異常なしといわれ、生まれつきの体質に問題があるのではないかと勝手に思い込み、仕方なく下痢を無視してしまった。

食事は普通に食べれるが、食事の時間は深夜労働のサービス業ということもあって不規則である。
夕方から午前三時まで仕事をし、午前四時ごろ就寝する。しかし布団に入ると、かならず便意をもよおすという。

中医学の立場から見ると、毎朝午前四時ごろ、すなわち夜明け前に起こる便秘は「五更泄瀉」という。
「腎」の働きの一つで、全身を温める力が不足し、その結果、胃腸が冷えきって、明け方の下痢が起こったと考えられる。

したがって治療は、「腎陽」を補うことを目標に行なう。
「腎陽」を補うには、鍼よりも灸を中心とした治療が効果的である。灸の熱で「腎陽」を補うという考え方である。

この患者さんは、灸による治療を始めてから排便の回数がいちじるしく減り、消化力がついて下痢が解消され、便の形が見られるようになった。
ところが、ある日、腹痛と下痢を治療してほしいといって、いつもと違う時間に来院した。
数日前、従業員の間でトラブルがあり、強いストレスを感じるようになってから、急におなかが痛くなって下痢が再発したという。
下痢をもよおしてしまうのではないかと心配する患者さんを安心させながら、治療を開始した。

「足三里」「上巨虚」「三陰交」に灸による治療を行ったところ、すぐにおならが出て痛みがおさまった。
さらに、仙陽関節上の「八髎」を灸頭鍼で温めた。おなかが温まって気持ちがよくなったと思う間もなく、肛門がビクビクと動いて締りがよくなり、肛門が上に上がるのがわかったという。
患者さんは「よかった。これで痔による脱肛も治った」といった。
この治療の後、下痢や腹痛とともに脱肛も再発していない。

下痢と便秘が同じ経穴治療で治る
 便秘と下痢は、正反対のメカニズムで起こる。
便秘は腸の蠕動運動が低下するために、下痢は、腸の運動が活発すぎることによって起こる。
鍼灸には、どちらの症状にも効果的な治療法である。たとえば、「足三里」と「上巨虚」は胃腸をととのえ、下痢と便秘を解消する経穴である。
 便秘と下痢の発生のメカニズムが異なるにもかかわらず、使用する経穴が同じなのは、同じ経穴に刺激しても、手技を帰ることによって異なる効果をえることができるからである。

下痢と便秘の穴位

コメント:穴位に市販の貼るお灸を指導されるとグングンよくなります。

一般に、下痢の場合は鍼を左にまわす手技を中心とする補法(「餓馬揺鈴法」という手技)を、便秘の場合は鍼を右にまわる手技を中心とする瀉法「鳳凰展翅法」という手技)を使う。

日本では、鍼灸というと、主に痛みに適した治療法というイメージをもつ人が多いが、胃腸病の場合、痛みだけでなく、便秘や下痢、嘔吐や食欲不振など、ほとんどの胃腸病に効果をあげることができるのである。
鍼灸はまた、下痢や便秘のような機能性の病気だけでなく、中国では、胃潰瘍や十二指腸潰瘍あるいは急性・慢性胃炎などに鍼灸がよく使われる。

西洋医学的治療では、胃酸をおさえる制剤や胃粘膜保護剤や抗潰瘍剤などを使って治療を行うが、時には薬の副作用で目や口腔の粘膜が乾燥することがある。
しかし、鍼灸治療ではこうした副作用は起こらない。胃潰瘍や十二指腸潰瘍を鍼灸で治療をすると、胸やけや呑酸(酸っぱい味の水分がこみ上げてくること)、げっぷや痛みなどの症状が、薬より早くおさまる。

だいたい一回か二回の治療を行うと痛みが軽減し、四~五回の治療で、胸やけ、呑酸、げっぷなどの症状は軽減する。
胃酸の分泌機能がおさえられて胃の働きが正常に戻り、回復が促進されるからである。
機能面の異常を調整することにより、間接的に器質面の異常を治療することができるのである。

食習慣が日本を危うくする?
 北里研究所付属東洋医学研究所では、主に動物実験によって鍼灸治療の効果を明らかにする研究に明け暮れた。
研究に関しては、これといった不自由は感じなかったし、暮らしの面では、生活習慣の問題にぶつかったものの、生活者としては、慣れるまでには時間はかからなかったし、それほど苦労も感じなかった。

むしろ、その後、患者さんを治療するうえで感じるギャップと苦労の方が多かった。
日本は、中国と同じ東洋の文化をもつ国であるにもかかわらず、ライフ・スタイルが西欧的であることは、上海にいたころから、テレビや新聞のニュースあるいは日本人留学生の話などを通じて知っているつもりだった。

しかし、実際に暮らしてみると、衣・食・住、特に食習慣でのとまどいは、想像以上だった。
たとえば、レストランで席につくと、まっ先に冷たい水が出され、日本人は、それを当たり前のようにガブガブと飲む。その姿が、最初は信じられなかった。

中医学的にいえば、胃腸を冷やしすぎるのはよくないからである。
そういわれてもピンとこない方は、「夏バテ」を想像してみるといいかもしれない。
冷たいものをとりすぎて食欲がなくなり、それを繰り返すうちの夏バテになったという経験をおもちの読者も多いのではないだろうか。
胃腸にとって、消化吸収のおとろえにつながる冷やしすぎは、大敵なのである。

よく、中医学や漢方にくわしい医療者の間で、「日本人は中国人にくらべてい胃腸が弱い」といわれるのが、こうした習慣が日常的に行われているのだから、当たり前であろう。

 胃腸をひやすのはよくないという、中国では医療者でなくてもしっていることを、日本では、毎回患者さんに説明しなければならない。
生活習慣病の治療の実際については後ほどふれるが、最近は「自分の健康は自分で守る時代」などといわれるようになたこともあり、来日当時にくらべれば、本気で生活習慣の改善に取り組む患者さんは確実に増えている。
それでもなお、ライフ・スタイルを改善しないまま同じ病気を繰り返し、せっかくの治療が「もとの木阿弥」になってしまう人が、依然として多いのである。

からだとファッション、どっちが大切?
 女性のファッションにも驚かされた。日本に来て間もないある日、同僚の医師の診察を見学する機会があった。若い女性が、冷えなどを訴えて治療を求めてきた。
タンクトップにミニスカートという姿を見て、私は女性に不調の理由をすぐ理解ができた。同僚の医師も、治療が終わったあと、からだを冷やさないような服装に着替えるようアドバイスしたが、女性の反応からは、医師のアドバイスを聞こうとする気持ちが伝わってこない。
患者さんが帰ったあとで医師は、「あの格好で冷房の効いた部屋に長い間いるんだから、いつまでたっても治らないはずだよ」と嘆いていた。
夏だったこともあり、日本では当たり前のことかもしれないが、一体、自分のからだとファッションと、どちらが大切なのだろうか。
 しかしこうしたできごとは、ほんの始まりにすぎなかった。日本の鍼灸師の資格を取り、治療の現場に出てからしばらくの間は、中国にいたころには考えられない経験ばかりで、毎日が発見と驚き、失望と喜びの連続だった。

コメント:呉澤森先生は、日本の惨状を見られ、帰化までされて啓豪活動に励まれています。
鍼灸の世界の情報は、日本人には全く知らされていません。
『鍼灸の世界』呉澤森著・集英社新書に詳しく書かれています。
どうぞ、ご一読下さい。

 

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

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