論文タイトル

40.東洋医学の小経験 ーほてり・のぼせ等の訴えへのアプローチー ーそれからわかった2~3の事柄ー

 

東洋医学の小経験

 

ーほてり・のぼせ等の訴えへのアプローチー

ーそれからわかった2~3の事柄ー

 

第4部 東洋医学ひぐちクリニック

 

樋口 理

 

 

手足のほてり・顔や上半身のぼせ等の訴えは、西洋医学では更年期障害の部分症状、或るいは自律神経失調症の診断はつくものの、積極的には治療できない訴えに入るものと思われます。東洋医学では、五心煩熱、陰虚、陰虚火旺、気分熱盛、肝鬱化熱などの概念とその治療法を使えば、10年以上悩んでいた症状を、早ければ1~2週間で解決することができます。そのような症例がかなり溜まりましたので、報告致します。

 

 

 

≪症例1≫O.Y. 63歳、女性

 

C.C.;のぼせ感と眩暈

 

P.I.;結婚して以降30年以上のぼせ感と眩暈の症状が有り、諸々の医療機関を受診検査したが、異常はなく、治療したが一進一退で、芳しくなく放置。ひょっとしたら、漢方や鍼治療でどうにかなるかもしれないと考え受診。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)、頸背部の凝りに置鍼。漢方薬は裏寒が強く、温裏剤投与し、棒灸を関元と大椎に施行。その後女神散を投与。3日後、のぼせ感と眩暈が軽減。「信じられない」と一言あり。1週間後、症状消失治癒配薬。

 

【コメント】
女神散は浅田宗伯の家方に属しますが、別名「安栄湯」と称し、女性の血の道専用処方です。ストレスから肝鬱化熱した状況に使うと著効を現します。嫁姑の戦々競々には持って来いの処方です。嫁姑の両方に服用して貰うと、お互いに優しくなります。不思議です。

 

 

 

≪症例2≫ K.G. 33歳女性

 

C.C.;のぼせ感と動悸、人込みに入るのが怖い

 

P.I.;1年ほど前より、上半身ののぼせ感と動悸、人込みに入るのが怖い感じが出現。
心療内科で自立神経失調症と診断され、投薬を受けるも変わらず。胃腸の調子がおかしくなり、当院受診。車の運転や買い物等ですぐ緊張し症状が出現するとの由。

 

【コメント】
動悸には桂枝加竜骨牡蛎湯の方が良さそうです。その方もやはりストレスが根本原因(肝鬱化熱)で加味逍遙散や女神散が効果的でした。

 

 

 

≪症例3≫K.S.72歳、男性

 

C.C.;足裏のヒリヒリ感、夜にひどくなる

 

P.I.;10年前より足裏のヒリヒリ感があり、複数の医療機関を受診したが、自律神経失調症、年のせいと言われ、治療法はないといわれた。ほっとらかしていたが、知り合いが同じ症状で治ったと聞いて受診。自分は以前よく足の裏にホッカイロをしていたので、低温やけどと思っていた。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。舌は紅(鏡面様)で無苔。腎陰虚として六味丸を基本に三物黄芩湯を併用。3日後、少し違って来た。1週間後気にならなくなった。

 

【コメント】
陰虚の典型例です。六味丸がヒットしました。漢方の手帳では病名は汎尿困難、頻尿、むくみ、かゆみです。これでは全く使えません。

 

 

 

≪症例4≫T.I. 74歳、男性

 

C.C.;足がホテッテ夜眠れない

 

P.I.;6年前から、足がホテッテ夜眠れないので、あちこち受診したが、原因はわからず自律神経失調症と言われ、睡眠導入剤を飲んでいるが、それでも気になって寝れない。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。舌は紅(鏡面様)で無苔。腎陰虚として六味丸を基本に三物黄芩湯を併用。10日程で、気にならなくなり治癒。

 

【コメント】
陰虚の典型例です。舌診が参考になります。この方は6年間睡眠導入剤を服用されていました。が、もっと早く治る治療法があるのにーー可哀想だと思いました。

 

 

 

≪症例5≫M.K. 71歳、男性

 

C.C.;左肩のこわばりとシビレ、手足のほてり

 

P.I.;数年前から左肩のこわばりとシビレが有る。手足のほてりは10年以上前から有る。どこで検査や治療しても変わらないので、ほったらかしている。家内が鍼治療と漢方で膝の調子がよくなったので、薦められて受診する。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。胸鎖乳突筋に圧痛著名で横刺施行。左肩のこわばりとシビレに対しては、八邪、天宗に吸い玉施行。漢方薬は疎経活血湯に桃核承気湯を加味。2週間ほどで軽減し、回旋も良好となる。手足のほてりは腎陰虚として六味丸を基本に三物黄芩湯を併用し、2週間ほどで気にならなくなる。

 

【コメント】
陰虚の典型例です。又左頸背部の痛みは血熱がらみですから、清熱剤を使用すると比較的早期に症状の軽減をみます。この付近は東洋医学で治療する方が効果的と思います。

 

 

 

≪症例6≫Y.O. 57歳、男性

 

C.C.;体がほてる、手足がほてる

 

P.I.;半年くらい前より体がほてり、手足がほてる感じが出現。検査したが異常なく自律神経失調症、男性更年期障害などと言われたが、治療法はない。時々漢方治療をしていたので、ひょっとしたらと思い受診する。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。漢方薬は六君子湯、六味丸、三物黄芩湯を投与。反応は今一つ。詳しく問診しなおすと、手足よりも胸の付近が熱いとの由。清熱の穴へ瀉法を施行。大椎より刺絡後吸い玉施行。漢方薬は黄連解毒湯に石膏を加味して投与。3日後だいぶ良い。1週間後治癒。

 

【コメント】
当初、陰虚として六味丸をベースに開始しましたが、経過が今一つで、実のほてりとして黄連解毒湯に石膏を加味し、効果をしめしました。最初は虚として治療を開始した方が失敗がないと思います。虚の方に黄連解毒湯を投与すると症状を悪化させて、とんでもない目に会います。

 

 

 

≪症例7≫Y.S. 73歳、女性

 

C.C.;足裏のほてり、尿漏れもある

 

P.I.;4~5年前から足裏のほてりが出現。ほてって寝れないので、サロンパスを貼って寝ている。友人から、漢方と鍼治療で手足のほてりがよくなったと聞き、受診する。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。腎陰虚として六味丸をベースに投与。1週間後かなり良い。サロンパスを貼らなくても寝れている。2週間後治癒。

 

【コメント】
隠虚の典型例です。尿漏れも陰性食品の制限と六味丸で起こらなくなりました。

 

 

 

≪症例8≫H.S. 72歳、男性

 

C.C.;ムズムズ足で不眠、イライラする、排尿障害もある、手足のほてりもある

 

P.I.;1年くらい前からムズムズ足で不眠で、治療しているが、一向に効かない。
医者からは『鬱病』かもしれないと言われた。全然変化が無く、疲れ果てたところ、友人から漢方や鍼治療も治療手段としてあるよと紹介されて受診。

 

治療&経過;目は血走っており、人間の正常は頭寒足熱で、バランスが狂い頭熱足寒で不眠やイライラ等の症状が出現すると説明。半信半疑ながらーー足はものすごく冷える感じが強いとの由。ムズムズ足症候群は、東洋医学では熱産制の治癒反応と説明し、夕食や入浴後寝る前の陰性食品の制限を指示。4日後にはムズムズ足は起こらなくなりました。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。裏寒強く、棒灸を30分施行。漢方薬は裏寒にたいして温裏剤を投与。目の血走りに黄連解毒を投与、4日後目の充血は消失。陰虚として六味丸、三物黄芩湯を投与。2時間位熟睡感が有った。その後は反応今一つ。不眠は心、排尿障害を腎として心腎不交として、清心蓮子飲をなめて貰うと非常に甘いとのこと。清心蓮子飲を中心に投与。すると翌日には夜眠気が出て来て、もう少しで眠れそうな気分がするとの弁有り。そしてーーH27年7月中旬の大分地震では筑後地区は3度の揺れでした。翌日受診され、本朝家族全員が地震で目がさめた話で盛り上がったのに、話に加われずに「自分一人が熟睡していて気付かなかった」と、嬉しそうに言われました。以後、グッスリ眠れており、不眠の訴えは止みました。又排尿障害の訴えも言われなくなりました。清心蓮子飲ーー不思議な効き方です。不眠と排尿障害と全く関係なさそうな症状を簡単に解決してくれました。日常臨床では漢方治療では1剤で複数の症状を解決してくれる事をしばしば経験します。西洋医学では、症状の数だけ薬剤が必要です。此のような症例を経験するたびに、ヒョットしたら西洋医学は対症療法のオンパレード?。東洋医学は本治(本当の原因治療)があるから、一剤で全く関係なさそうな諸々の症状を解決するのかもと一人勝手に愚推しています。

 

【コメント】
ムズムズ足が原因で不眠と思われていましたが、本態は心腎不交でした。目が血走っている時はイライラ感が強く、言葉も攻撃的かつ不満に満ちていました。安眠の穴を教えて、毎日指圧し、踵の失眠穴にお灸をするように薦めると、精神的に安定され穏やかになられました。そして清心蓮子飲は非常に甘く、一剤で問題を解決してくれました。漢方治療では甘く感じる処方がヒットの可能性が高くなります。そして、味が不味くなれば証が変わった証拠です。今後は、腰の手術後、左の前脛骨筋が委縮して下垂足を呈しているので、脾の治療と足三里へのお灸を予定しています。

 

 

 

≪症例9≫K.S. 53歳、女性

 

C.C.;首から上ののぼせ&ほてり感、睡眠薬を止めたい

 

P.I.;2~3年前から首から上ののぼせ&ほてり感が出現。近医で更年期障害と言われホルモン剤投与を薦められたがーーー。ここ5~6年睡眠薬を飲んでいるが息子の体調が漢方薬や鍼治療で良くなったので、薦められて受診。

 

治療&経過;顔面の紅潮が有り、目も充血。人間の正常は頭寒足熱で、バランスが狂い頭熱足寒で不眠が出現すると説明。陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。漢方薬は黄連解毒、白虎加人参湯を投与、すると、1週間後首から上ののぼせ&ほてり感はかなり良い。それとともに睡眠薬を使わなくても、6時間は眠れている。起き醒めの感じや眠りの深さが全然違う。2週間後治癒廃薬。

 

【コメント】
この方は、実ののぼせ&ほてり感でした。人の正常は頭寒足熱で、バランスが狂い頭熱足寒になると不眠が出現しますから、首から上ののぼせ&ほてり感がとれれば、自然に寝れるようになります。人の体内には、朝太陽の光を浴びると、14~5時間後には眠気が来るようなリズムがあるそうです。かなり多くの方が、睡眠導入剤を日常茶飯事服用しておられますが、体内リズムを自分で壊しているのではないかと考えています。

 

 

 

≪症例10≫Y.B.61歳、女性

 

C.C.;顔の赤みとほてり感、手足のこわばり感もある

 

P.I.;2~3年前から顔に赤みがある。酒皶と言われた。ほてり感もある。入浴後顔が赤くなる。20日前より漢方薬局で清上防風湯を服用しているが、変わらない。主人から薦められて受診。

 

治療&経過;陰性食品を制限、特にアイスクリームを制限。顔面の赤みは砂糖やピーナッツなどが災いすると説明。鍼治療は調気(四関穴、三気海)し、頸背部の凝りに置鍼。
清熱穴にも置鍼。漢方薬は裏寒に附子理中湯、清上防風湯20日服用でも効果ないため、梔子柏子湯を併用。1週間後ほてり感は消失。手足のこわばり感に対しては、夜8時以降の水分摂取が大きな原因と説明し、水分制限を指示。3日後には軽減する。顔の赤みは反応今一つなので、処方変更し肺熱として麻杏甘石湯をベースに投与。更にパワーアップするために麻杏薏甘湯に四物湯を加味して、加療。入浴後の赤み軽減と効果を示しつつあります。

 

 

 

【症例のサマリー;年齢・性別;症状・西洋の病名・東洋の証;漢方薬】

 

症例1;63歳、女性;のぼせ感と眩暈;?・血の道、肝鬱化熱;女神散

 

症例2;33歳、女性;のぼせ感と動悸、人込が怖い;自律神経失調症・血の道、肝鬱化熱;加味逍遙散や桂枝加竜牡蛎湯・女神散

 

症例3;72歳、男性;足裏のヒリヒリ感、夜にひどくなる;自律神経失調症、年のせい・腎陰虚;六味丸を基本に三物黄芩湯

 

症例4;74歳、男性;足がホテッテ夜眠れない;自律神経失調症・腎陰虚;六味丸を基本に三物黄芩湯

 

症例5;71歳、男性;左肩こわばりとシビレ、手足ほてり;?・腎陰虚;六味丸を基本に三物黄芩湯

 

症例6;57歳、男性;体がほてる、手足がほてる;自律神経失調症、男性更年期障害・五心煩熱;黄連解毒湯に石膏を加味

 

症例7;73歳、女性;足裏のほてり、尿漏れ;?・腎陰虚;六味丸を基本

 

症例8;72歳、ムズムズ足で不眠、イライラ、排尿障害、手足のほてり;ムズムズ足症候群、不眠症・腎陰虚、心腎不交;六味丸を基本、清心蓮子飲

 

症例9;53歳、女性;首から上ののぼせ&ほてり感、睡眠薬を止めたい;更年期障害・熱毒;黄連解毒、白虎加人参湯

 

症例10;61歳、女性;1)顔の赤みとほてり感、2)手足のこわばり感;1)酒■・熱毒;梔子柏子湯、2)水毒;水分制限 1)→肺熱;麻杏甘石湯+麻杏薏甘湯+四物湯

 

 

 

◆◆そこからわかる2~3の事柄◆◆

(1)上半身のぼせ・顔ほてりは、虚は血の道・肝鬱化熱で、実は熱毒・肺熱で解決出来る。
(2)手足のほてりは腎陰虚で解決出来る。
(3)寒・熱の概念とその治療法が有効である。

 

H27.7.21投稿

39.東洋医学治療の小経験 ー最近の症例からー 10代前後の方々が東洋医学の門を叩く?

 

東洋医学治療の小経験

 

ー最近の症例からー

10代前後の方々が東洋医学の門を叩く?

 

第4部 東洋医学ひぐちクリニック

 

樋口 理

 

 

東洋医学の治療を求めて、時々10代の方々が受診されます。西洋医学の治療をしているけれども、今一つかんばしくないというのが、共通した理由のように思えます。そんな方々へのアプローチとその経過結果を報告いたします。又、最近の症例で、経過が早かったり、思わぬ展開を示した症例などを提示します。

 

 

 

10代前後の方々

 

【症例1】A.K. 14歳、女性

 

C.C.;朝起きれない、だるい、人目が気になる、怒られると右の頭痛、教室へ入れない、体温が35℃台で低い他

 

P.I.;1年位前から朝起きれない、だるい、人目が気になる、怒られると右の頭痛、教室へ入れない等の症状が出現。某医で自立神経失調症、発達障害などと言われ、治療うけるも、一進一退或いは返って悪化するため、治療法を変えようと受診。

 

治療&経過;大きな原因は肝気鬱結、脾気虚等。陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気し、裏寒に対して鍼灸施行。漢方薬は先ず、腹診で二本棒あるため、肝気鬱結に対して四逆散、半夏厚朴湯を投与。腹直筋の緊張が取れたところで、裏寒と脾気虚の治療に補中益気湯や四君子湯を投与。朝は幾分楽になってきたと。1か月後頭痛はほとんど起きない。2カ月後。当初の7/10。怒られると右の頭痛も良い。3か月後、当初の5/10以下。という具合で、いつの間にかジワーット自然に自然に体調が良くなって行かれます。
現在も治療中ですが、漢方を取りにこられる間隔が開いてきました。経過がよいと皆さん間隔があいてきます。

 

 

 

【症例2】S.K. 13歳、男性

 

C.C.;頭痛

 

P.I.;本年1月より頭痛がして、大学院でMRI等の検査をしたが、異常なく薬をのんでいるが、頭痛は良くならない。そのため現在は学校を休んでいる。母親がらちが開かないので、治療法を変えようと考え、当院のホームページをみてH27年4月2日受診。

 

治療&経過;顔色は黄色で、疲れやすく、動くのがおっくうで、声は低く小さく、典型的な脾気虚と判断。陰性食品(早期の冷牛乳、水、冷麦茶及び寝る前のアクエリアス500ml等)の制限を指示。鍼治療は調気し、補気を重点に灸治療を施行。漢方薬は四君子湯をベースに投与。4月4日大分良い。声が大きくなる。頭痛の起こり方がちがってきた。1週間後、頭痛起こっていない。治癒。

 

コメント;長らく治療していて、経過が思わしくなければ、治療法を思い切って変えてみる。母親の考えが正しく、陰性食品を制限し、東洋医学の治療へ変更したところ、1週間で治癒となりました。患者様は治れば何でも良い訳で、西洋医学の引き出しだけではなく、幾つか引き出しがあると便利で、医者も患者様も救われると思いました。

 

 

 

【症例3】I.S. 14歳、女性

 

C.C.;一年中アレルギー性鼻炎、目のかゆみ、偏頭痛

 

P.I.;以前から花粉症はあったが、2~3年前から一年中となり、又偏頭痛もある。朝夕、食前食後の抗アレルギー剤を服用しているが、変わらない。母親が漢方薬がよく効いたので、ヒョットしたらと考え4.20.受診。
治療&経過;陰性食品(朝昼夕の冷麦茶、寝る前のジュース、牛乳など)を制限。鍼治療は調気し、目のかゆみのツボに置鍼。丹田と大椎に棒灸20分施行。漢方薬は低体温であり、裏寒(+)として、温裏剤を投与。4/24目は大分良い。5月の連休明けて、5/11鼻炎起こっていない。偏頭痛も起こっていない。調子良い。今後は低体温の改善に向けて食養生と漢方治療並びに冬病夏治(寒くなると体調不良;陰・寒・冷>陽の状態なので、陽の多い夏に灸治療をして陽を増し、陽>陰・寒・冷の状態にする)を予定しています。

 

コメント;花粉症やアレルギー性鼻炎は、西洋医学では、ヒノキやスギ花粉に対するアレルギー反応とされています。一方、東洋医学では、ヒノキやスギ花粉は引き金にすぎず、反応する人に問題ありと考えます。胃腸に寒冷があると、肺が冷え、肺は冷えを好みませんから口や鼻からクシャミや鼻水として水を排泄します。従って陰性食品(朝昼夕の冷麦茶、寝る前のジュース、牛乳など)を制限して、温める治療をしてあげると、皆さん症状の改善消失をみます。そして、10年来、30年来の花粉症でも再発しなくなります。抗アレルギー剤は使わずに、食養生と漢方と鍼灸治療で充分に対応でき、比較的早期に効果をみます。

 

 

 

【症例4】N.S. 9歳、男性

 

C.C.;皮膚が乾燥し痒い、カサカサしている

 

P.I.;1年位前から皮膚が乾燥し痒い、カサカサしている症状出現。軟膏を塗ると良くなるが、すぐに元に戻る。其のうち治ると言われたが、なかなか治らないので、治療法を変えようと思い立ち、4/18受診。

 

治療&経過;皮膚が乾燥し痒い、カサカサしているは東洋医学では血虚と説明。搔痒のチェックシートで記入してもらい、食事を指導。陰性食品を制限し、搔痒の鍼治療を施行。漢方薬は桂枝加黄耆湯、当帰餃子を投与。2週間後乾燥肌はシットリ、カサカサも改善。搔痒感も消失。

 

コメント:皮膚が乾燥し痒い、カサカサは血虚なので、該当する漢方薬を投与すると、皮膚は潤いシットリとなり、カサカサは消失しました。ご家族は軟膏で治療するよりも経過が早く、治り方が違う事を実感したと、後日言われました。

 

 

 

【症例5】M.I.;9歳、女性

 

C.C.;生まれつきアトピー、文字を読むのに疲れる、季節の変わり目・気候の変化に弱い

 

P.I.;生まれつきアトピー有り、治療しているが一軟膏を塗ると良いが、止めるとすぐに元に戻る。漢方治療でもアトピー治療ができると知り、受診。他に体調が良くないので、一緒に治療して欲しいと依頼あり。他院では、自閉症、発達障害と言われてカウンセリングを受けている。

 

治療&経過;アトピーの原因は食事と説明し、甘い物、白い物などの冷飲食を制限。ファンケルの発芽米を薦める。東洋医学では、疲れるは気虚、季節の変わり目・気候の変化に弱いは、土用の日=脾と考え、脾気虚と詳しく説明。又生まれつきは腎虚と説明し母親は、納得。脾虚に四君子湯、腎虚に六味丸を投与。丹田と大椎に棒灸施行。1か月後、疲れなくなってきた。気候の変化にも、以前より大分よいとのこと。唯、五月の台風の時は、少しよくなかった。本人も1/週のお灸は楽しみとの由。脾が大分建ち上がったので、アトピーの治療を本格的にしようと、治療中です。

 

 

 

【症例】N.H.;68歳、女性(経過が早かった)

 

C.C.;右背部のヘルペス~右前胸部への鈍痛

 

P.I.;5月連休あけから、右背部に痛みと痒みがあり水泡もある。以前帯状疱疹をしたことがあるからーー。ヘルペスの治療が漢方や鍼治療でできると知っていたので依頼あり。H27.5.7受診

 

治療&経過;右背部の脊椎の側に水泡形成在り、肋間に沿って水泡形成数カ所在り、発赤(+)。夾脊に灸頭鍼施行。患部に刺絡後吸い玉施行。調後に痛みや違和感が違うと一言あり。漢方薬は桂枝加朮附湯、五苓散を投与。5.8.痛みが減ってきた。5.11.水泡は全て枯れている。痛みも殆どない。5.12.治癒とする。

 

コメント:この方は、帯状疱疹の既往があります。以前の帯状疱疹の治療は2回/日点滴注射を施行し、鎮痛剤を服用しても痛みはひかず、2~3週目からやっと軽減し何もかもでは1カ月かかったそうです。今回の治療については、家族や回りの知人からも、漢方薬や鍼治療で本当に大丈夫か?点滴はしなくてもよいのか?皮膚科にかかった方が良いなどと言われたそうです。が、痛みも軽く経過が早く治ったのを、ご主人・家族・知人共に経験されて、こんな治療法があるなら皮膚科の先生や皆に知らせて欲しいと言われたとの事でした。治り方が早くて、痛みが少ない治療法は黙っていても、自然に普及してくるかもしれません。

 

 

 

【症例】I.N.;54歳女性(思わぬ展開を示した)

 

C.C.;①右頭部の熱感と耳なり、②背中の一点が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指

 

P.I.;昨年5月9日の交通事故の後遺症として上記の①右頭部の熱感と耳なり、②背中の一転が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指が残り、前医では事故との因果関係は分からず、年のせいと言われ、最終的には心療内科を紹介しましょうといわれたそうです。後遺症の症状が不愉快でしかたなく、東洋医学(漢方や鍼治療)でどうにかならないかとH27.4.11受診される。

 

治療&経過;
第1診(4/11);交通事故後の諸々の症状は、漢方の世界では『 血』の概念とその治療法でどうにかなる可能性がある事を説明。又、外傷部位など弱い所に、日常生活での冷えが影響を及ぼす為、陰性食品の制限がポイントとなる事を説明。更に人間の正常は頭寒足熱;右頭部の熱感は以上なので、熱を除く治療が必要と説明。
陰性食品は緑茶、コーヒー、麦茶、牛乳などを制限。
治療は、鍼治療;調気、頸背部に置鍼、大椎に吸い玉(熱を除く)

 

漢方薬;   朝       昼        夕
     治打撲一方   四逆散    治打撲一方 桃核承気湯
     桂枝茯苓丸  桂枝茯苓丸  桂枝茯苓丸

 

第2診(4/13);右の調子は良い。

漢方薬;   朝       昼         夕
       人参湯   治打撲一方   治打撲一方
       附子末   桂枝茯苓丸   桂枝茯苓丸
                     通導散

 

第3診(4/17);身体が軽くなってきた。
         右目の奥、右頭全体の感じが違ってきた。
         右中指の弾発指良くなった。
         右足第四指の疼痛起こっていない。

 

漢方薬;  朝      昼        夕      寝る前
      人参湯  七物降下湯  治打撲一方   六味丸
      附子末            桂枝茯苓丸

 

第4診(4/24);右頭部の熱感消失。
         体の動作・動きが違ってきた。
         背中の一点が痛むも消失。

 

漢方薬;  朝      昼        夕     寝る前
      人参湯  七物降下湯  治打撲一方  六味丸
      附子末            桂枝茯苓丸

 

第5診(4/30);頭のボワットした感じは消失。
 初診時の問題点中、①右頭部の熱間、 ②背中の一転が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指は、ほぼ消失している。
  今後の問題点は耳なりのみ

 

漢方薬;   朝        昼       夕       寝る前
      苓桂朮甘湯  七物降下湯  治打撲一方   六味丸
                        桂枝茯苓丸

 

苓桂朮甘湯は水毒として、七物降下湯・六味丸は隠虚として投薬。
反応乏しければ、右は水として事故がらみで葛根湯或いは葛根湯加朮附湯を考える。
又、鍼治療は耳は小腸経なので奇経などを考慮する。

 

コメント;この方は、保険会社の方から①右頭部の熱感と耳なり、②背中の一点が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指などの後遺症が事故との因果関係がはっきりしないから、事故としての治療ができないーーーと言われて、本当に事故後に生じた症状だからと説明しても、分かって貰えないと泣き寝入りされていました。耳なりについては、耳鼻科の先生から事故と因果関係ありと説明して貰ったそうです。当院で漢方薬などで治療し、2週間足らずで殆どの症状が軽減消失し、漢方薬の効果にビックリされました。事故後1年近くたち諦めていたのに、こんなに短期間で治療できる方法が有ることを知らなかったと言われました。他にも私みたいな人がいれば、この東洋医学治療は有効だから、教えてあげたいとの事で、保険会社の方に治療経過の詳細と使った漢方薬の種類と作用などの書類を揃えて提出する事になりました。西洋医学とはまったく別の概念の漢方薬や鍼治療の事を理解いただけるか分かりませんが、一応資料を提出し、質問や疑問があれば、出来る範囲で応えようと考えています。保険会社の方々が東洋医学を理解していただき、この治療法が広まればと願っています。
(H27.6.投稿)

 

 

 

 

東洋医学治療の小経験

 

ー最近の症例からー

10代前後の方々が東洋医学の門を叩く?

 

第4部 東洋医学ひぐちクリニック

 

樋口 理

 

 

東洋医学の治療を求めて、時々10代の方々が受診されます。西洋医学の治療をしているけれども、今一つかんばしくないというのが、共通した理由のように思えます。そんな方々へのアプローチとその経過結果を報告いたします。又、最近の症例で、経過が早かったり、思わぬ展開を示した症例などを提示します。

 

 

 

10代前後の方々

 

【症例1】A.K. 14歳、女性

 

C.C.;朝起きれない、だるい、人目が気になる、怒られると右の頭痛、教室へ入れない、体温が35℃台で低い他

 

P.I.;1年位前から朝起きれない、だるい、人目が気になる、怒られると右の頭痛、教室へ入れない等の症状が出現。某医で自立神経失調症、発達障害などと言われ、治療うけるも、一進一退或いは返って悪化するため、治療法を変えようと受診。

 

治療&経過;大きな原因は肝気鬱結、脾気虚等。陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気し、裏寒に対して鍼灸施行。漢方薬は先ず、腹診で二本棒あるため、肝気鬱結に対して四逆散、半夏厚朴湯を投与。腹直筋の緊張が取れたところで、裏寒と脾気虚の治療に補中益気湯や四君子湯を投与。朝は幾分楽になってきたと。1か月後頭痛はほとんど起きない。2カ月後。当初の7/10。怒られると右の頭痛も良い。3か月後、当初の5/10以下。という具合で、いつの間にかジワーット自然に自然に体調が良くなって行かれます。

現在も治療中ですが、漢方を取りにこられる間隔が開いてきました。経過がよいと皆さん間隔があいてきます。

 

 

 

【症例2】S.K. 13歳、男性

 

C.C.;頭痛

 

P.I.;本年1月より頭痛がして、大学院でMRI等の検査をしたが、異常なく薬をのんでいるが、頭痛は良くならない。そのため現在は学校を休んでいる。母親がらちが開かないので、治療法を変えようと考え、当院のホームページをみてH27年4月2日受診。

 

治療&経過;顔色は黄色で、疲れやすく、動くのがおっくうで、声は低く小さく、典型的な脾気虚と判断。陰性食品(早期の冷牛乳、水、冷麦茶及び寝る前のアクエリアス500ml等)の制限を指示。鍼治療は調気し、補気を重点に灸治療を施行。漢方薬は四君子湯をベースに投与。4月4日大分良い。声が大きくなる。頭痛の起こり方がちがってきた。1週間後、頭痛起こっていない。治癒。

 

コメント;長らく治療していて、経過が思わしくなければ、治療法を思い切って変えてみる。母親の考えが正しく、陰性食品を制限し、東洋医学の治療へ変更したところ、1週間で治癒となりました。患者様は治れば何でも良い訳で、西洋医学の引き出しだけではなく、幾つか引き出しがあると便利で、医者も患者様も救われると思いました。

 

 

 

【症例3】I.S. 14歳、女性

 

C.C.;一年中アレルギー性鼻炎、目のかゆみ、偏頭痛

 

P.I.;以前から花粉症はあったが、2~3年前から一年中となり、又偏頭痛もある。朝夕、食前食後の抗アレルギー剤を服用しているが、変わらない。母親が漢方薬がよく効いたので、ヒョットしたらと考え4.20.受診。

 

治療&経過;陰性食品(朝昼夕の冷麦茶、寝る前のジュース、牛乳など)を制限。鍼治療は調気し、目のかゆみのツボに置鍼。丹田と大椎に棒灸20分施行。漢方薬は低体温であり、裏寒(+)として、温裏剤を投与。4/24目は大分良い。5月の連休明けて、5/11鼻炎起こっていない。偏頭痛も起こっていない。調子良い。今後は低体温の改善に向けて食養生と漢方治療並びに冬病夏治(寒くなると体調不良;陰・寒・冷>陽の状態なので、陽の多い夏に灸治療をして陽を増し、陽>陰・寒・冷の状態にする)を予定しています。

 

コメント;花粉症やアレルギー性鼻炎は、西洋医学では、ヒノキやスギ花粉に対するアレルギー反応とされています。一方、東洋医学では、ヒノキやスギ花粉は引き金にすぎず、反応する人に問題ありと考えます。胃腸に寒冷があると、肺が冷え、肺は冷えを好みませんから口や鼻からクシャミや鼻水として水を排泄します。従って陰性食品(朝昼夕の冷麦茶、寝る前のジュース、牛乳など)を制限して、温める治療をしてあげると、皆さん症状の改善消失をみます。そして、10年来、30年来の花粉症でも再発しなくなります。抗アレルギー剤は使わずに、食養生と漢方と鍼灸治療で充分に対応でき、比較的早期に効果をみます。

 

 

 

【症例4】N.S. 9歳、男性

 

C.C.;皮膚が乾燥し痒い、カサカサしている

 

P.I.;1年位前から皮膚が乾燥し痒い、カサカサしている症状出現。軟膏を塗ると良くなるが、すぐに元に戻る。其のうち治ると言われたが、なかなか治らないので、治療法を変えようと思い立ち、4/18受診。

 

治療&経過;皮膚が乾燥し痒い、カサカサしているは東洋医学では血虚と説明。搔痒のチェックシートで記入してもらい、食事を指導。陰性食品を制限し、搔痒の鍼治療を施行。漢方薬は桂枝加黄耆湯、当帰餃子を投与。2週間後乾燥肌はシットリ、カサカサも改善。搔痒感も消失。

 

コメント:皮膚が乾燥し痒い、カサカサは血虚なので、該当する漢方薬を投与すると、皮膚は潤いシットリとなり、カサカサは消失しました。ご家族は軟膏で治療するよりも経過が早く、治り方が違う事を実感したと、後日言われました。

 

 

 

【症例5】M.I.;9歳、女性

 

C.C.;生まれつきアトピー、文字を読むのに疲れる、季節の変わり目・気候の変化に弱い

 

P.I.;生まれつきアトピー有り、治療しているが一軟膏を塗ると良いが、止めるとすぐに元に戻る。漢方治療でもアトピー治療ができると知り、受診。他に体調が良くないので、一緒に治療して欲しいと依頼あり。他院では、自閉症、発達障害と言われてカウンセリングを受けている。

 

治療&経過;アトピーの原因は食事と説明し、甘い物、白い物などの冷飲食を制限。ファンケルの発芽米を薦める。東洋医学では、疲れるは気虚、季節の変わり目・気候の変化に弱いは、土用の日=脾と考え、脾気虚と詳しく説明。又生まれつきは腎虚と説明し母親は、納得。脾虚に四君子湯、腎虚に六味丸を投与。丹田と大椎に棒灸施行。1か月後、疲れなくなってきた。気候の変化にも、以前より大分よいとのこと。唯、五月の台風の時は、少しよくなかった。本人も1/週のお灸は楽しみとの由。脾が大分建ち上がったので、アトピーの治療を本格的にしようと、治療中です。

 

 

 

【症例】N.H.;68歳、女性(経過が早かった)

 

C.C.;右背部のヘルペス~右前胸部への鈍痛

 

P.I.;5月連休あけから、右背部に痛みと痒みがあり水泡もある。以前帯状疱疹をしたことがあるからーー。ヘルペスの治療が漢方や鍼治療でできると知っていたので依頼あり。H27.5.7受診

 

治療&経過;右背部の脊椎の側に水泡形成在り、肋間に沿って水泡形成数カ所在り、発赤(+)。夾脊に灸頭鍼施行。患部に刺絡後吸い玉施行。調後に痛みや違和感が違うと一言あり。漢方薬は桂枝加朮附湯、五苓散を投与。5.8.痛みが減ってきた。5.11.水泡は全て枯れている。痛みも殆どない。5.12.治癒とする。

 

コメント:この方は、帯状疱疹の既往があります。以前の帯状疱疹の治療は2回/日点滴注射を施行し、鎮痛剤を服用しても痛みはひかず、2~3週目からやっと軽減し何もかもでは1カ月かかったそうです。今回の治療については、家族や回りの知人からも、漢方薬や鍼治療で本当に大丈夫か?点滴はしなくてもよいのか?皮膚科にかかった方が良いなどと言われたそうです。が、痛みも軽く経過が早く治ったのを、ご主人・家族・知人共に経験されて、こんな治療法があるなら皮膚科の先生や皆に知らせて欲しいと言われたとの事でした。治り方が早くて、痛みが少ない治療法は黙っていても、自然に普及してくるかもしれません。

 

 

 

【症例】I.N.;54歳女性(思わぬ展開を示した)

 

C.C.;①右頭部の熱感と耳なり、②背中の一点が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指

 

P.I.;昨年5月9日の交通事故の後遺症として上記の①右頭部の熱感と耳なり、②背中の一転が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指が残り、前医では事故との因果関係は分からず、年のせいと言われ、最終的には心療内科を紹介しましょうといわれたそうです。後遺症の症状が不愉快でしかたなく、東洋医学(漢方や鍼治療)でどうにかならないかとH27.4.11受診される。

 

治療&経過;

第1診(4/11);交通事故後の諸々の症状は、漢方の世界では『 血』の概念とその治療法でどうにかなる可能性がある事を説明。又、外傷部位など弱い所に、日常生活での冷えが影響を及ぼす為、陰性食品の制限がポイントとなる事を説明。更に人間の正常は頭寒足熱;右頭部の熱感は以上なので、熱を除く治療が必要と説明。

陰性食品は緑茶、コーヒー、麦茶、牛乳などを制限。

治療は、鍼治療;調気、頸背部に置鍼、大椎に吸い玉(熱を除く)

 

漢方薬:   朝        昼        夕
     治打撲一方    四逆散    治打撲一方 桃核承気湯
     桂枝茯苓丸   桂枝茯苓丸  桂枝茯苓丸

 

第2診(4/13);右の調子は良い。

 

漢方薬;  朝        昼         夕
      人参湯    治打撲一方   治打撲一方
      附子末    桂枝茯苓丸   桂枝茯苓丸
                     通導散

 

第3診(4/17);身体が軽くなってきた。
        右目の奥、右頭全体の感じが違ってきた。
        右中指の弾発指良くなった。
        右足第四指の疼痛起こっていない。

 

漢方薬;   朝       昼        夕     寝る前
       人参湯   七物降下湯  治打撲一方  六味丸
       附子末             桂枝茯苓丸

 

第4診(4/24);右頭部の熱感消失。
             体の動作・動きが違ってきた。
                 背中の一点が痛むも消失。

 

漢方薬;  朝      昼        夕      寝る前
      人参湯  七物降下湯   治打撲一方  六味丸
      附子末           桂枝茯苓丸

 

第5診(4/30);頭のボワットした感じは消失。

 初診時の問題点中、①右頭部の熱間、 ②背中の一転が痛む、③右足第4指の疼痛、  ④右手中指の弾発指は、ほぼ消失している。

  今後の問題点は耳なりのみ

 

漢方薬;   朝        昼        夕      寝る前
     苓桂朮甘湯  七物降下湯  治打撲一方    六味丸
                        桂枝茯苓丸

 

苓桂朮甘湯は水毒として、七物降下湯・六味丸は隠虚として投薬。
反応乏しければ、右は水として事故がらみで葛根湯或いは葛根湯加朮附湯を考える。
又、鍼治療は耳は小腸経なので奇経などを考慮する。

 

コメント;この方は、保険会社の方から①右頭部の熱感と耳なり、②背中の一点が痛む、③右足第4指の疼痛、④右手中指の弾発指などの後遺症が事故との因果関係がはっきりしないから、事故としての治療ができないーーーと言われて、本当に事故後に生じた症状だからと説明しても、分かって貰えないと泣き寝入りされていました。耳なりについては、耳鼻科の先生から事故と因果関係ありと説明して貰ったそうです。当院で漢方薬などで治療し、2週間足らずで殆どの症状が軽減消失し、漢方薬の効果にビックリされました。事故後1年近くたち諦めていたのに、こんなに短期間で治療できる方法が有ることを知らなかったと言われました。他にも私みたいな人がいれば、この東洋医学治療は有効だから、教えてあげたいとの事で、保険会社の方に治療経過の詳細と使った漢方薬の種類と作用などの書類を揃えて提出する事になりました。西洋医学とはまったく別の概念の漢方薬や鍼治療の事を理解いただけるか分かりませんが、一応資料を提出し、質問や疑問があれば、出来る範囲で応えようと考えています。保険会社の方々が東洋医学を理解していただき、この治療法が広まればと願っています。

(H27.6.投稿)

 

38.東洋医学の小経験 ー医師会事務の方が取り持った1例ー

 

東洋医学の小経験

 

ー医師会事務の方が取り持った1例ー

 

東洋医学ひぐちクリニック

 

第4部会 樋口 理

 

 

2015年2月24日、医師会よりFAX。

39歳男性、不安症にて2年間心療内科にて治療され、西洋医学の治療の副作用に苦しまれた為に、漢方治療を求められました。自信はありませんでしたが、どうにかなるかもと考え、治療がはじまり3か月後の5月末でかなり良好で当初の3/10です。患者様の了解を得て、どのような経過をとったか一部始終を報告いたします。患者様は西洋医学の治療と比べて、こんな治療法があるなんて知らなかったと言われました。
東洋医学治療の醍醐味が隠されています。

 

FAX:2015年2月24日

八女筑後医師会 ご担当者様
すみませんが、このメールを「東洋医学ひぐちクリニック」に転送していただけないでしょうか。ネットで探しましたが、検索できませんでした。
ご面倒をおかけ致しますが、よろしくお願いいたします。

 

 

東洋医学ひぐちクリニックご担当者様

 

初めてメールします。

 

(1)伺いたいのですが、貴院で不安神経症の漢方薬の処方はされているでしょうか。

 

返事;処方は色々あります。
貴方にあう処方を探すという一連の作業があります。
服用してどうかで、フィードバックしてもらいます。

 

 

(2)私、10年ほど前、不安症により2年ほど心療内科にかかっておりました。その後、好不調の波はあるものの社会生活を送っておりますが、時折来る不調期は人と会うのが億劫になったりやる気がでなかったりで結構つらいです。

 

返事;不調の波は、本人の体質やバランスの問題→漢方の得意分野です。
簡単な気の問題であれば、鍼治療が速効です。

 

 

(3)前の通院後も断薬では大変な思いをしましたので、漢方ならば不調時の対応ができ、かつ薬をやめる際のリスクがすくないのではと考えています。

 

返事;その通りです。
人間の体、細胞は草根木皮、蛋白質、微量元素で出来ており、西洋薬(化学合成薬)では、出来ていません。
断薬ー合法的麻薬(?)からの離脱ー大変ですが、皆さん徐々に抜いて漢方薬と入れ替えてあげると浮かび上がってこられます。

 

 

(4)もし、漢方だけの処方が可能なら診察をおねがいしたいのですが可能でしょうか。

 

返事;当院は漢方のみで、化学合成薬はゼロです。
昔は、薬は草冠で飲んでいると体調がよくなり楽しくなっていました。飲み続けは治さない治療法。異物(化学合成薬)が入ると人体は冷えます。

 

 

 

【1】初診;2015.2.25

毎回受診時に、詳細なメモを持参されるので、ポイントがはっきりしやすいと思います。

 

(メモ)
10年前の心療内科通院(2年間)から今日まで
・心療内科では、特に疾患名は告げられず、「抗うつ剤、睡眠導入剤、抗不安剤、躁うつ薬」の処方がされ、適正に服用していた。
・最悪期は脱したものの、好不調の波があり、不調時は会うのが億劫で何事もやる気がでず、生活に支障をきたす。休業することはない。

 

不調時の状態

睡眠に関して
パターン①ーー支離滅裂な思考状態のまま、朝までまどろんでいる感じ。寝た気がせず、その日は一日中だるい。
パターン②ーー3時間ほどはぐっすり眠れるが、朝方、動悸が激しくなり体全体があつくなっている感じ。それ以降は眠れない。

 

行動への影響
・人と会いたくなる(ストレスを感じる)
・思考がまとまらず、人との会話を理解するのが困難になる。
・文章の意味を理解するのが困難になる。
・物覚えが悪くなる
・物音などに容易に驚いてします
・体をよくぶつける。フワフワ歩く感じ。
・常に音楽が頭をめぐっている時がある(とまらない)

 

治療;
・陰性食品(麦茶、コーヒー)の制限を指示し、鍼治療は調気;四関穴、三気海、顎背部の凝りに置針。漢方薬は気血両虚、虚陽上浮などして人参養栄湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、酸棗湯の味を教えてと説明す。味と症状の経過で漢方薬を絞り込んで行くと説明。経過の長い方のモチベーションをあげる共同作業です。

 

 

 

【2】第2診;20015.3.3

(メモ)

新たに始めたこと
 ・漢方薬の服用
 ・麦茶から白湯への切り替え、及びコーヒーの絶飲
 ・耳の後ろのツボ刺激(不眠症のツボです)

 

体や精神の変化
 ・診療後2日ほど頭痛がした。
 ・人と話すとき、以前ほどストレスを感じなくなったような気がする。

 

睡眠について
 ・入眠に苦労することはないが、3時間ほどで寝て激しい動機で目が覚める。
此のことは依然と変わらない。

 

漢方薬の飲み易さ
 ・人参栄養湯、酸棗湯;△
  桂枝加竜骨牡蛎湯;◎

 

治療:
 ・桂枝加竜骨牡蛎湯をメインにして処方を考えて行くと説明。鍼治療施工。漢方薬は枝加竜骨牡蛎湯を主に、補中益気湯と抑肝散と甘麦大棗の味を教えてと説明。

 

 

 

【3】第3診;2015.3.10

(メモ)

体や精神の変化
 ・前回の診療後、3日ほど頭痛がした。
 ・朝昼夕の漢方薬が切れた2日間は、人と会うのが非常につらく感じた。何年かぶりの嫌な感覚だった。

 

睡眠について
 ・覚醒時に起こる動悸の程度がだいぶ小さくなった。

 

漢方薬の飲み易さ
 ・甘麦大棗>抑肝散>桂枝加竜骨牡蛎>補中益気湯

 

治療;覚醒時に起こる動悸の程度がだいぶ小さくなっているのは、桂枝加竜骨牡蛎湯が効いている証拠と説明。鍼治療施工。

 

 

 

【4】第4診;2015.3.23

(メモ)

心身の変化
 ・近年になく調子のいい日が続いている。
 ・仕事以外での外出の機会が増えた(釣りなど)。
 ・ただ、飲み会があった翌日からから2日ほど調子を崩した。

 

睡眠について
 ・だいぶ改善したと感じる。
 ・明け方前の覚醒は依然としてあるが、それに至るまでの睡眠時間が通院当初より1時間程伸びた。(熟睡感が得られる睡眠時間;3時間→4時間)
 ・覚醒時の動悸の程度は日を得るごとに減ってきている。
 ・入眠困難の事象の発生は一度もなかった。

 

新たに始めたこと
 ・お灸(足三里に毎日1回)
治療;かなり調子が良いので、桂枝加竜骨牡蛎湯の兄弟分にあたる小建中湯という漢方薬を進めてみる。腹診で腹直筋の所見が似ているし、虚労とも考えられるのでと説明し、納得のもとに処方変更。

 

 

 

【5】第5診;2015.3.30

(メモ)

小建中湯について
 ・飲んだ初日から、腹痛と頭痛が始まった。
 ・4日目に頭痛がピークになった。我慢できないほどだったので、自らの判断で小建中湯をやめた(クリニックが休診日だった。) 
 ・睡眠の質が少し悪くなったように感じる。

 

薬についての希望
 抑肝散、桂枝加竜骨牡蛎湯、補中益気湯の組み合わせが今までの所一番良い。
治療;母親に処方渡す

 

 

 

【6】第6診;2015.4.3

(メモ)無し。
 処方を戻してからは、調子が良い。動悸もない。
 現在の状況は当初の5/10との由。元来の自分のハツラツサがないとーー。
治療;小建中湯を服用しての不快は瞑眩かもしれないと詳しく説明。自分のハツラツサの為再度1回/日小建中湯を1週間してみようと説明し納得される。

 

 

 

【7】第7診;2015.4.15

(メモ)
 ・小建中湯を再度飲み始めたが、前のような頭痛、腹痛は起こらなかった。
 ・調子の良い日が1週間と少し続いたが、不眠が一度起こったことを機にとても調子がすぐれない脾が3日続く。その後持ち直すも全快とまではいかない。
 ・1か月ほど晩酌をしていなかったが、不眠が起こった日に久しぶりに酒(日本酒2合)不眠の原因として思い当たるのはこれくらい。
治療;鍼治療は同じ。
・桂枝湯は桂枝加竜骨牡蛎湯の母体にあたる処方なので、気血のバランスを取ってくれる。1週間1回/日服用を進めて納得される。

 

 

 

【8】第8診;2015.5.2

(メモ)
 ・1回の不眠を機に調子を崩したことがあった。それから3日程、日中の不調と夜間の不眠が続いた。
 ・睡眠時に動悸が起こることはなくなった。

 

不眠が起こるきっかけ
 ・日中に調子が良くても、就寝前に軽躁を感じる時に不眠が起こるようです。

 

漢方薬に関して
 ・最近、抑肝散が飲みにくくかんじるようになりました(まずい感じ)
 ・桂枝湯を1週間飲みましたが、特に心身への気付きはありませんでした。飲んだ時の味は、甘さと同程度の苦味を感じます。

 

治療;鍼治療と棒灸施工。
漢方薬は味がかわれば、変え時と説明。証が変わった証拠。甘く感じるのは当たりと説明。虚の不眠と思うので酸棗湯を投与。もしもに実の薬を出すので味を次回教えてとーー。

 

 

 

【9】第9診;2015.5.16

(メモ)
 ・全体としては良くなってきた。気力が増してきた。
 ・最近、朝おきてしばらくのイライラがひどい。
 ・不眠が二度あった。(どちらも1日だけ)
 ・睡眠時間が伸びて、5~6時間眠れるようになった。
 ・以前ほどではないが、起床時の動悸が少しある。
 ・お酒を飲み機械があったが、調子をくずさなかった。

 

唾前の漢方薬を比べて
酸棗湯が良かった。
1/2包で、睡眠時間が伸びた。スット入眠する。甘さ、苦さも控えめ。

 

治療;漢方薬は今のままで良いと。あと一押しの部分は多分『久しい病気は腎に及ぶ。』という考えがあるので、腎の漢方薬を使って行こうと説明し、納得される。六味地黄丸料を処方

 

 

 

【10】第10診;2015.5.29

(メモ)
 ・好調を維持している。
 ・朝おきてのイライラが少しおさまった。
 ・起床時の手のひらのこわばり、ほてりがある。
 ・前はあまり汗をかかない方だったが、ときどき皮膚が湿る程度の汗をかくようになった。
 ・お酒を飲む機会が有ったが、以前より酒に強くなったように感じる。

 

六味地黄丸料について
 あっているように感じる。飲んでみて「水」のような感じ。

 

 

「コメント」
途中経過ですが、紆余曲折ありながら、山の頂上ゴールが見えてきそうな予感があります。西洋医学のスタンスは薬力で不安をとる、うつをとる、寝かせる・・・ですが、東洋医学は、その根本原因を探し、不足は補い余分は瀉し、バランスを修正して・・・自然に何時の間にか治って行く、です。この症例には、その醍醐味が若干隠されていると思いますが(私の独断と偏見が多々加味されていることは・・・)・・・。

 その後、8月現在、標治(対症療法)が終わり、本治(根本原因の治療)に入っています。本治の漢方薬は人参湯です。---西洋医学には、その概念のない裏寒(内臓の冷え)の薬です。標治の薬が、味がまずくなり、あるいは症状がほとんどなくなったためーーー。

 人参湯にかえて安定しています。治れば廃薬がゴールです。それも間近だと思っています。

 10年間悩まれた症状、不具合を約半年で解決、ここに東洋医学の醍醐味が隠されていると愚考しています。

 

※醍醐味…患者様が必要な漢方は甘く感じ、自分で選んで服用してもらい、どんな治り方かの情報を教えてもらい、漢方薬の役目が終われば、味がまずくなりーーー、そして、最後は治れば薬は飲まなくてよくなる。廃薬この治り方、薬の減量、変更の仕方は西洋医学にはない分野だと1人勝手に愚考しています。自分で薬を選んで、自然治癒力を引っぱり出し、勝手に自分で治って行く。医者も針も薬もそれを手伝う道具にすぎないーーー。

 

(H27.6.8投稿)

37.伝統医学を取り巻く最近の国際状況

 

伝統医学を取り巻く最近の国際状況

 

東洋医学ひぐちクリニック

 

第4部会 樋口 理

 

 

医者の8~9割が日常臨床で何らかの漢方薬を使用し、大学の医学部では漢方や東洋医学の講義が最低でも8コマ行われています。がマスコミや日本医師会などは伝統医学についての情報を医療従事者や国民に全く知らせていません。WHOが1980年代に動き始めた事。2~3年前には、ツボの国際標準化が施工された事。現在160ヵ国で、医者が鍼治療をしている事等などーー。
最近の月間漢方療法に2回にわたり、特集がくまれました。
興味のある方にはひょっとしたら、頼もしき情報になるのではと思い、谷口書店の許可を得て掲載します。ご笑読下さい(H.27.4.14)

 

 

1.「日本の伝統医学を取り巻く最新の国際状況」
 ~日本の伝統医学の危機を語る!!~

 

1月31日、日本東洋医学サミット会議(JLOM)及び日本東洋医学会後援でシンポジウム「日本の伝統医学を取り巻く最新の国際状況」が東京・飯田橋で開催されました。

このシンポジウムで座長と講演をされた未来工学研究所の小野直哉先生、JLOMの代表研究者であり東京有明医療大学で教鞭をとられる東郷俊宏先生、そして日本東洋医学会会長でJLOMの議長でもある石川友章先生に、漢方、鍼灸を初めとする日本の伝統医学を取り巻く近年の国際状況について鼎談をして頂きました。

 

 

石川:本当にお忙しいなかお集まりいただきありがとうございました。我々は臨床家として、現場で、煎じ薬の原料生薬の入手が難しく大変困っている状況にあるとか、健康保険の給付の除外が行われるのではないかという目先の問題に囚われやすいのですが、実際には日本を取り巻いているいろいろな条約から大きな影響を受けているのだということを認識しておく必要があると思います。

1月31日のシンポジュウムではこの点をテーマに論じる予定です。なかなか複雑な問題で、本日は専門家の御二方に来ていただいて、この辺を分かり易く解き明かしていただいて、日本の伝統医学を守るためにどうしたらいいかというお知恵をいただければありがたいと思いますのでよろしくお願いいたします。まず東郷先生から、全体の流れがどうなっているかという概略を少しご説明いただいて、あとは小野先生にもご解読と専門の分野をお話しいただくということでいかがでしょうか。

 

 

東郷:私が国際標準化(国際標準化機構:ISO:International Organaization for Standardization)の活動に関わり始めたのは2005年からです。伝統医学の国際標準化は、1980年代にまず鍼灸領域から始まりまして、まずツボや経路の名前等の基本用語の標準化が最初に行われました。それから安全性のガイドラインなど、いくつかの標準が作られたわけですが、2003年にWHO(世界保健機構:World Health Organization)の西太平洋事務局の伝統医学担当医官に韓国の崔昇勲(Choi Seng-hoon)が就任すると伝統医学に関する様々な標準化のプロジェクトを立ち上げました。

まず一つが、ツボの位置の標準化、1980年代に行われた標準化はツボの名前だけでしたので、まずツボの位置を決めようという事で、主に日本と中国と韓国の専門家が集まって議論をしました。二番目に行ったのが用語の標準化です。そして三番目に行おうとしたのが情報の標準化。2005年に始まった情報の標準化では、国際疾病分類、ICD ( International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)の中に伝統医学の分類を入れようという考えがありまして、それはいままではWHO(世界保健機構)のICD11(国際疾病分類11版)の改訂事業の中に組み入れられています。四番目に崔昇勲が行おうとした標準化が、クリニカルガイドラインの作成だったわけですが、これについては、クリニカルガイドラインのユーザーが明確ではないということで頓挫いたしました。そういったことで、この崔昇勲のもとで標準化が達成され、成果として出版されたのは、ツボの位置と、用語の二種類になります。

最初、WHOのこうした標準化に日本として対応する組織が無かったものですから、日本としては、当時、鳥居塚和生先生の御尽力によって、東洋医学会、全日本鍼灸学会、生薬学会、和漢薬学会、WHO協力センターである北里大学、それから富山大学がメンバーとなって日本東洋医学サミット会議を結成しました。略してJLOM(日本東洋医学サミット会議;Japan Liasion of Oriental Medicine)と称しています。これが2005年のことでして、このJLOMをプラットホームにして情報を共有化して人材を国際会議に派遣しようという流れになったわけです。

少し話が前後いたしますが、韓国の崔昇勲のもとで、WHOでの標準化が進められる一方、例えば日中韓で使う鍼の標準化を中国の学会、韓国の国立韓医学研究院の人たちが中心になって進めようとしていました。中国は中国で1980年代から様々な国内の標準化を進めておりまして、これを国際的な会議にもっていこうと考えていたようです。そのときに韓国は鍼の規格をISOに出そうとしたのですが、韓国は鍼の規格をISOの注射針のテクニカルコミッティにもっていき、そこでは却下されます。しかし、これを見て、中国の方も国際化のためにISOが非常に有効な場だというふうに認識したのだろうと思います。2009年の二月に中国はISOに対して、Traditional Chinese Medicineの標準作成に特化した専門委員会(Technical Committee’ 以下TC)の設置を申請しました。ISOでは、各国から新しいTCの設立申請がありますと加盟国に、TC設立の可否を問う投票を行います。日本では経済産業省の管轄になるのですが、厚労省に対して、問い合わせがあって、それから厚労省から今度はJLOMに対して、日本としてどうなるのですかという、そういう風に照会があったわけなのです。

そこで中国がISOに出した申請書類を見てみると、じつにさまざまなことが標準化の対象に含まれている。例えば鍼灸ではWHOですでに標準化が達成されたツボの位置や用語、情報に関しても含まれていました。これに対して日本では、すでにほかの国際機関で標準が作られたようなものを、わざわざISOで標準化する気はない、そもそも医学そのものが標準化の対象になるというのはおかしいという観点から反対票を投じました。ところが投票のふたを開けてみると、反対した国はほかにもあったわけですが、結果的には賛成多数となりまして、ISOはこの新しい専門委員会を作ることを承認したわけです。それでTC(専門委員会:Technical Committee)249、つまり249番目の専門委員会として成立し、昨年2014年は第五回の全体会議が開かれ、日本がホスト国となって京都で開催しました。以上のようなところが80年代から始まった伝統医学の国際標準化の流れです。

 

 

石川:ISOというのはネジやナットなどの工業製品の問題だと思っていたのですが、いろいろ複雑な問題をはらんでいますね。医療機器まではいいと思うのですが、医療そのものというと各国の文化に関わってくるということで、文化まで国際標準化していくというのは非常におかしな話だなと思えます。そういった意味では中国や韓国の考え方を世界標準にして推し進めるのは日本として非常に問題があると思います。医療機器の質の問題は、それは上質のものが必要であろうとは思うのですが、質の問題ではなく、国策として中国はいろいろなことをやっているというのは、日本にとって困る事ではないのかなと、その辺の国際的な状況を小野先生に教えていただきたいと思います。

 

 

小野:いま日本の伝統医学を取り巻く国際環境の現状としましては、少なくとも九つの事柄が起こっています。WFAS(世界鍼灸学会連合会:World Federation of Acupuncture-moxibustion Societies)やWFCMS(世界中医薬学会連合会:World Federation of Chinese Medicine Societies)でも、標準化をしている様ですが、東郷先生いかがでしょうか。

 

 

東郷:そうです、中国が中心になって伝統医学の国際化を進めていくことを目的としている会が二つありまして、一つがWFAS(世界鍼灸学会連合会:World Federation of Acupuncture-moxibustion Societies)、これは一九八七年に設立された鍼灸関係の学会の連合体で、設立に関しては日本が中心となって相当資金面でも多大な貢献をしたわけですが、80年代後半から90年代に運営の主体が中国に移行しまして、世界中の華僑を中心とする鍼を実践している人たちを取りまとめる会になっています。

私が国際標準化に関わるようになった2005年ころは、WFASの会に行きますと、これから鍼はHealth industry(健康産業)のなかで積極的に取り上げていくべきだということが理事会で言われていたことを思い出します。つまり産業の中に鍼灸を位置付けていくのだと、いまから考えるとそのころから中国はこうした規格化というようなことを視野に置いていたのだろうなという風に思えます。

WFCMS(世界中医薬学会連合会:World Federation of Chinese Medicine Societies)、これはWFASが鍼に関する学会であるのに対して、こちらはどちらかといえば薬にウエイトがある会なのですが、ここも世界規模でいろいろな国に支部を持っていて、国際中医師であるとか、いわゆる中医学を普及するため国家資格、こうしたものを企画立案しているところ、それから用語集に関しても、英語版だけでなく、例えばスペイン語版とか、こうした外国語の辞書を作って、中医学普及を進めているところです。

 

 

小野:そうしますと、いま世界で日本の伝統医学、または東アジアの伝統医学をとりまく国際情勢としましては、やはり九つの事柄が起こっています。
まず一つ目は、先ほど東郷先生がお話になられた、もともと工業製品の標準化をする機関ISOですが、そちらで起こっている伝統医学の標準化、そして今お話しいただきました中国が主導で行っている国際的な二団体の活動。東郷先生のお話しにもありました、WHOでの疾病分類の標準化、生物多様性条約という国際条約では、もともと環境保護がメインの条約だったのですが、時代とおもにそれが各国の経済的利益誘導的な国際議論の場になってきたという経緯があり、その生物多様性条約で資源国、主に発展途上国が多いのですが、発展途上国の中にはたとえばインドや中国等が含まれていますが、そちらの資源国にある資源をどう利益配分するか、というような遺伝資源と伝統的知識の利益配分と専門的には呼ぶのですが、その国際的な協議およびせめぎあいが行われているというのが一つあります。

その中に日本の伝統医学にもかかわる漢方薬の原料である生薬の問題、または鍼灸、漢方両方に関わる診断技術やまたは伝統医学の知的財産の問題というのが関わってきます。それ以外に例えば、知的財産のことに関しましては、また別途、世界知的所有期間という通称ワイポ(世界知的所有権機構;WIPO:World Intellectual Propertty Organization)という国際機関は、国際的な知的所有権、知的財産の取り決めをするところで、伝統的知識というものの定義およびそれに関する知的財産の取り決めということを行っています。

さらにWTO(世界貿易機関:World Trade Organization)では、ここにトリプス協定(TRIPS協定:知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights )があるのですが、そちらでも遺伝子資源及び伝統的知識、特にこちらは遺伝資源がメインなのですが、遺伝資源の特許または知的財産の問題というものが議論されています。ここにもやはり伝統医学というものが関わっているということになります。
さらに文化的な側面に関しましては、伝統医学というのは先ほど石川先生のお話しにありましたように各国の伝統文化等にもかかわってきます。そうしますと各国の伝統文化のいうものを扱う国際機関であるユネスコ(国際連合教育科学文化機関:UNESCO:United Nations Educational , Scientific and Cultural Organization)も関わってきます。ユネスコで行っている登録事業として、世界記憶遺産があります。また無形文化遺産というのも、ユネスコで行っています。例えば日本の無形文化遺産では、富士山や和食が無形文化遺産に登録されています。これと同じような形で、例えば中国または韓国が、ユネスコの世界遺産関連の事業に伝統医学を登録してきています。例えば2009年には、韓国が世界記録遺産に『東医宝艦』、韓国の伝統医学の古書を登録している。2011年には中国が、世界記憶遺産に登録してきているのは『黄帝内経』と『本草網目』です。これとは別に無形文化遺産に中医学の鍼灸だけを取り出して、この部分をユネスコの無形文化遺産に登録してきている。いずれも2000年代に入ってからで、本当に近年になって、2010年前後に極東アジアの各国がユネスコに伝統医学を登録し始めてきているという動きがあります。

また別に現在議論されている、環太平洋戦略的経済連携協定いわゆるTPP(Trans Pacific Strategic Economic Partnership)、これはいかに環太平洋の中で経済圏を作るか、そのための商取引の取り決めを決める機関、または協議の場なのですが、その協議の場においても生物多様性条約で扱われている遺伝資源、または伝統的知識を協議するということが謳われています。このようにISOだけではなくてそれ以外にも世界的な条約または機関において、伝統医学に関わる事柄、例えば漢方における生薬、原料等に関わる問題、原料にかかわる遺伝資源、あるいは伝統医学が伝統医学たるゆえんである、それを裏打ちしている伝統的な医学知識、これは伝統知識の一部でもありますので、その二つが様々な場所で、標準化、または国際的な商取引における議論の対象ということで議論がされているわけです。いままではそれが個別的かつ独自に議論されてきたという経緯があるのですが、実はそれぞれが最近有機的につながってきているというのがまた一つの問題になって来ている。

例えば、2010年に名古屋において生物多様性条約の国際会議COP10(締約国会議:COP:Conference of the parties )が行われたのですが、この名古屋議定書のなかでは、遺伝資源、または伝統的知識というものに関して、今後、他の条約や国際機関で議論された内容も生物多様性条約では参考にしていくというような声明を出されたということで、一つの条約で決めた事柄が、そこで自己完結するという形ではなくて、他の条約または国際機関で議論されたことが他の条約または国際機関で議論されたことが他の条約に影響を及ぼすという状況に現在なって来ています。例えば、生物多様性条約等では遺伝資源または、伝統的知識というもののオリジナリティがどこにあるか、どこの国を起源とし、どの国に帰属するのかとうことを主張する際に、その起源と帰属を証明するのは、証明したい各国の責任になります。その証明の一つとして、ユネスコ等、世界的に権威のある国際機関で、自国の伝統文化である伝統医学というものが認めらえれれば、それは例えば生物多様性条約においてはその伝統医学がどこの国に所属するのかという時の説明材料になっていく、根拠になるわけです。これまでの個別に専門的に議論させたものが逆に有機的につなげられて、各国の利益を守る一つのストーリーとして使われるような時代になってきた。これは実は2000年以前はほとんどなかったのですが、最近それがとみに顕著になって来ているというのが原状です。

 

東アジアの伝統医学に関わる主な国際機関と条約図1

 

石川:問題は、ユネスコは世界文化遺産だけだと思っていて、一つ一つの個別に考えていくと生物多様性条約に関係したり、TPPにまで結び付いているとは夢だに思っていないわけです。日本には日本の発展過程があり、漢方エキスの分量や臨床の知見などは湯本求心先生の『皇漢医学』という日本の古典医学書の中に書かれています。これらが戦前に中国や韓国で出版されて現在のベースを作っているという事実があります。これらが戦前に中国や韓国で出版されて現在のベースを作っているという事実があります。それがもっと古い形が原典のみだということになると、日本の文化にとって非常に大きな問題になると思うのです。そこを行政や関係する方々にきちっと理解をして頂いて、日本の国策に基づいた方策を作って頂く、それが今回のシンポジュウムでも大切だろうと思います。

 

 

東郷:歴史的なことをもう少し振り返ってみますと、やはり伝統医学が近代化の中でどういう風に生き残っていくのかというのを非常に、これは日本にとっても中国にとっても韓国にとっても大きな問題だったと思うのです。日本も皆さんご承知のように明治時代に漢方が正統医学の座から追われて非常に暗い時代を送った過去がございました。湯本求真先生の『皇漢医学』をはじめ、伝統医学復興のための本がかかれるようになって、少しずつ先生方がご尽力されていまの漢方医学の礎を築かれたわけですが、やはり同じように中国、韓国でも伝統医学が戦時中から戦後にかけて危機に瀕した、時にバイブルとしてやはり使われたのが、『皇漢医学』だったわけです。鍼灸の領域でも、多くの日本の鍼灸の本が、中国語に翻訳されて、新中国成立直後の中国では盛んに使われてきました。

中国はその後文革を迎え、伝統的な文化が多方面にわたり壊滅的な打撃をこうむりますが、一方で唯物論にもとづく新しい伝統医学の理論として中医学を構築していきます。また1972年の米大統領ニクソン訪中時鍼麻酔報道により、欧米でも一種の鍼ブールが起こり、世界中から中国の「伝統的」な医学を学ぼうと多くの人が訪れるようになるのです。やがて1980年代に開放路線を取るようになると、伝統医学が国際的にビジネスになる分野だということが、徐々に認識されるようになってきたのではないかと思います。韓国でも国立韓医学研究院が作られ、韓国における漢医学のリーダーシップをとっていきます。中国、韓国ともに国がサポートして伝統医学を国内でまず振興させ、国際的にもそれを売り出していく。そういう国内、国外二つの領域において伝統医学の振興を行ったわけです。

一方日本の方は、漢方の領域に関していえば、医師の九割近くが漢方薬を使っているというデーターはあるものの、特に国外において自分たちの伝統医学を積極的に普及させていたかなくてはいけないという、内的な要求があまりなかったという事情もあると思うのですが、こうした国際情勢に対しては非常に疎かったと思うのです。ですから中国や韓国の規格レースに乗り出しているという現状がなかなか掴みにくかったのではないかと思います。

 

 

石川:伝統医学というとその国の文化ということで、その文化をきちっと守っていれば伝統医学も守られるのだという、思い込みが非常に強かったのではないでしょうか。世界標準化という言葉の中に、それが本来あるべき範囲を超えた形で文化事業、医療問題が関わってくるということを知って、非常に難しい問題だという危機感を感じますね。自分たちが守る領域をしっかりと自分たちで確保しないと、その歴史すらもなくなっちゃうのだからという危機感が最近とみに強いものですから、今後どうすればいいのか。小野先生いかがでしょか。

 

 

小野:はい。漢方や鍼灸のような日本の伝統医学は、由来は中国であったとしてもその後日本で独自に発展し、和漢薬と呼ばれる漢方の薬草を使った処方、または和鍼といった、日本独自の鍼管法を使った、髪の毛の様に細い針を用いる施設など、細かいディテール等を見るとやはり韓国とか中国とも全然違います。それは日本の風土、または日本人の体質や感覚、センスともにいう育まれてきた歴史的産物といっても過言ではないと思います。ただ、それを前提とした臨床を、今後もやっていくということにプラスアルファ―をこれからの時代は考えていかなければいけないと思います。例えば漢方等の臨床、または日本の伝統医学の臨床に携わっている方々は、漢方、または鍼灸等の日本の伝統医学が、日本の伝統医学だと普通に認識されていると思いますが、では果たして一般的な日本の伝統医学と認識している人がどのくらいいるのかということです。

例えば一般的な方に聴くとやはり漢方の本場は中国だよねとか、鍼灸の本場は中国だよねとかいう方もいらっしゃいます。また以前    NHKのテレビで人気を集めた『宮廷女官チャングムの誓い』等で有名になった韓医学というものもあります。ああいうテレビの影響などを受けた方々は、漢方の本場である韓国に行って、ツアー等を組んで治療を受けてきたとか、そういうことを言ってはばからない方が多々いらっしゃるわけです。そうすると直接日本の伝統医学に関わっていらっしゃる方は、自分たちがやっていることが日本の伝統医学であって伝統文化だと思っているかもしれませんが、それ以外の外の方々、一般の方々および、政府とか行政の方々も含めて、日本の伝統医学を果たして本当に日本の伝統文化であって、伝統的医療資源ととらえているか、そこが一番大きな一つの関門なのではないでしょうか。国際的な状況というものは単なる伝統医学の専門家が対応するだけではなくて、政府機関の方とかまたは行政の方等も、関わってくる話ですし、例えば海外においては中国、韓国では実際に政府の代表団が国際交渉の場にくるわけです。ところが日本の代表団は、政府の方というよりも学術や企業の方が中心となった代表団で、確固たる日本の伝統医学を日本の伝統文化と位置付けているようにはみえない国が、日本の伝統だといっても説得力に欠けます。ですから、日本の伝統医学への一般の方からの支援、違う言い方をすると応援団といいますか、そういうような世論形成をしていくということも非常に重要なのではないではないかと思います。

 

 

石川:行政の見方、あるいは応援団の見方によって和食がユネスコの世界文化遺産になったりするわけです。漢方の治療法なども文化だし、鍼管法というのはやはり日本の誇れる文化遺産でなければいけないのですが、日本人はどちらかというと慣れ親しんで常にあるものはそんなに価値はないという風な発想をして、粗雑に扱う傾向が多々あると思うのです。(笑)やはり我々が持っているちゃんとした文化を維持していかないと、やはり国が亡びてしまうと。ちゃんとしたインターナショナリストになるためにはちゃんとしたナショナリストでないといけないのではないかと私は思っています。自国の優位性が何なのかということを理解しない限り国際的には通用しないだろうと思います。隗より始めよではないが、まず内から、国民の中から理解していただかないと困ります。
言葉一つでも「中国漢方」などという言葉はないのです。漢方は日本独自の単語であって、中国の医学ではあっても「中国漢方」というものはない。言葉でごまかされている。そういった意味では言葉をきちっと使うということも非常に重要ではないのかなと思います。そう言った意味で先生方に一生懸命啓発していただくには現在非常に重要な時期であって、JLOM(日本東洋医学サミット会議)が四学会と二つのWHO協力センターで日本の伝統医学の国際的な受け皿として作られた経緯がありますが、いま世界の激しい状況変化に対応するために、「日本東洋医学機構」(仮称)という組織に改組して、我々の叡智を日本に残して日本の医学をますます発展させるための組織を作ろうと今小野先生とそれから東郷先生と動いております。ぜひとも読者の皆様には、こういう状況があるということをご認識いただいて、積極的な参加をしていただければありがたいと思っています。

 

月刊 漢方両方 Vol.18 No12(2015-3)
たにぐち書店より引用

 

 

 

2.「日本の伝統医学を取り巻く最新の国際状況」2
~日本の伝統医学の危機を語る!!~
(承前)

 

東郷:伝統ということで京都のお話をさせて頂きますと、よく京都は伝統的な文化を残しているところだといわれますが、戦国時代から近世に入ってくると、古いものを守るというよりは、新しいものを触れる最前線になってきます。祇園祭の山鉾巡行で引き廻される山鉾はさまざまな美術工芸品で装飾され「動く美術館」ともいわれていますが、この山車に飾られるのはポルトガルなどから輸入されたタペストリーだったりするわけです。当時最新の船来品です。そういう新しいものを取り入れていく中で、自分たちが守る伝統が作られていく。京都というのはそういう形でずっと進化し続けていて、いまでも京都が伝統的な街たりえるものは、京都の中心にいる人たちの眼が常に国際的なものに向いているからだと思います。

 

 

石川:京都会議でもいろいろ提案がなされ、舞妓さんを援助するなどの提案もありました。

 

 

東郷:日本の伝統医学の世界に少し足りないと思うのは、やはり国際的な視野の中で、自分たちの優れているところはどこなのかということを常に見出していく。その際に新しいものを取り入れながら、良さを見出しいていくというものを取り入れながら、良さを見出していくということだと思います。日本はエキス剤の製造にしても、新しい技術をたくさん創出しているわけですけれども、いいものを造ればいいと、そこで止まってしまうものなのです。それをさらに発展させて、普遍的なものにしていくという視点がどうしても欠けているというところがある。これが非常に大きな問題だと、いつも思っています。

 

 

石川:もう一つ、京都の面白いところは、非常に古い街で、伝統的なしきたりは決して崩していないところです。それを守ることによって、その制約の中から新しいものが生まれてきれている。制約は制約としてきっちっと守る。そういうけじめというのはやはり日本の持つ独特の力だと思うのですが、現在、東京なんかでは、そういう制約が崩れてきている。適当に流行に合わせればいいのだという形になっています。ですからそういった意味で、京都のようにしっかりと伝統を守っているところは、やはりある部分では古めかしい、古典的なものがあって成り立っているところがあるのではないかと思います。その守るという意味で、京都へ行くと、とても素晴らしいのだけれど、一見さんお断りとか、(笑)そういうところもあるし、やはりそれによって自分たちが守るべきものはしっかり守り、それを加工して新しいものを提供していくことで、人を引き付けていくというあり方が日本の持っている力を引き付けていくというあり方が日本の持っている力の原点かなという気がするのですが、どうですか。

 

 

東郷:そう思います。

 

 

小野:実は京都は、ベンチャー企業が多いところなのです。いくつかの有名なベンチャー企業があります。オムロン、島津製作所、有名なところでは京セラです。非常に古くて伝統を重んじる街なのですが、先ほど東郷先生がおっしゃったような新しいものと接触して、それでうまく過去の自分たちの蓄積してきた知識なり伝統なりを融合させて新たな価値を見だすというのか、創造していき、ハイブリットなものを造りだして価値を高めていくことが絶えずやってきました。それは本来日本人がもともと持っていた国民性といいますか、得意とするところなのだと思います。

 

 

石川:日本はキメラ(生物種が混合した怪物)にはならないと思うよ。要するに主体はしっかりありながら同化して自分たちの物として表現している。その原点は非常に強く、揺るがないという気がしています。

 

 

小野:結局、日本の伝統医学もそういう日本の国民性が育んできたものであって、それは中国にもないし韓国にもない要素とか、知識的な体系も含んでいると思うのです。それを今後、どう公正に評価するかです。伝統医学に関わる我々自身が、自分たちがやっているのは実は結構すごいことなのだと、正当に評価することをやらなければいけません。

 

 

石川:本当にそうですね。日本人は自国の物を正当に評価することが非常に弱いというのか、苦手なのではないかと思っています。

 

 

小野:もっと謙虚に威張っていいのではないかと。(笑)日本人は謙虚だから。

 

 

石川:中医学に対しても非常に日本人の特性ということを考えます。中国の医学をいろいろ学んで、基本的には自分たち日本人の体質に合わせた形で中医学を咀嚼して、新しい形の中医学を作っている。そういうこともあると思うのですよ。ただ国際条約の場合には、こちらのそのような思い込みとはまた別の世界で動くから、やはりきちっとした条約を作り、守らなければいけないということは守らないといけないと思うのですが。

 

 

小野:自分たちを正当に評価できないと、実は国際社会においてもきちんと主張はできません。自分たちの足元が明確でないといけない。自分たちがやっていることを正当に評価し、そのうえで主張していくことが重要だと思います。そのことを我々がこれからどうやっていくかです。

 

 

東郷:よく伝統医学のことを論じるときに日本文化との関連で論じるわけですが、例えば石川先生、日本の漢方薬は、日本人だけではなくて、中国人でも、アメリカ人でも、アフリカ人でも効きますでしょう。

 

 

石川:スペインの修道院に頼まれて、日本でスペイン人のいる修道院を、修道院というより養老院のようなところに往診に行っていたことがあるのですが、スペイン人でもよく効きますよ。

 

 

東郷:そうです。

 

 

石川:中国人にも効くし、私もフランス人やドイツ人も患者がいますけれども、言葉は分からないです。日本の漢方の診療法と腹診を使うと、生体情報をしっかり把握できて、この人の生体情報はこうなのだということが分かり、処方がしっかりできます。
日本の腹診法というのは客観情報を取るための非常に優れた手段ではないかと思っていますし、これを世界標準にした方が、実は世界の健康福祉のために役に立つ先兵になるだろうと思います。
私はよく言うのですよ、口と顔は嘘をつくが、脈とお腹は嘘をつけないと。客観的な生体の情報を得るには、患者の言っていることをうのみに聞いていてはいけない。患者は見栄も外聞もありますから、決して自分の情報を全部そのまま伝えることではありません。気持ちが悪い、調子が悪いと言っても、確かにそうだとしても、それが具体的に何を表現しているかということは、患者の身体に問わなければわかりません。患者と会話をやって言葉の情報だけでなにかが分かるかというと、それは大変難しいと思います。しかし、脈を診たり、お腹を診たりすると、明確にその人の生体情報を把握できます。そういう生体情報を得る日本漢方というのは素晴らしいものであって、その修練をしっかり身に付ければ十分に有効な方法ではないかと思っています。はやり自分たちが持っている医学に対して自身とプライドを持つことが絶対に必要ではないでしょうか。

 

 

東郷:いまのお話を伺って、日本漢方といいますが、どの国の人にも効くわけで、要するに日本漢方は世界漢方でもあるのだという思いを強くしました。

 

 

石川:まさにそう言いたいですね。

 

 

東郷:ともすれば、いまは、中国、韓国が文化論争みたいな形で国際標準を争う闘争の形を取っているわけですが、患者さんの立場から見れば普遍的に効く伝統医学に関心があるわけです。そのステージに立って、日本の漢方は、日本の伝統文化の中で育まれていますが、実は普遍性を持った世界漢方なのだということを世界にアピールしていく必要があります。

 

 

石川・小野:大賛成です。

 

 

東郷:まさにこういう表現で国際会議に臨んでいくべきだと思います。ユネスコに登録されるされないといっても、国の誇りにはなるでしょうが、患者にとってはあまり意味はありません。誇りたくはなるでしょうが、伝統医学の継承者が、逆に医者になってしまったら、硬直した過去のものになるわけで、それはある意味、伝統医学の死を意味しています。

 

 

石川:化石化だよね。

 

 

東郷:そうです。登録されることで固定化される。やがて本当に伝統的なものが消えてなくなり、語り継ぐ人がいなくなっていく、そういう時代とオーバーラップしながら標準化の波が強くなっているのが現代だと言えます。

 

 

石川:だから伝統的な知識というのはそう簡単に、伝播できない。標準化だとかそういう言葉で分かり易く簡便に伝えたいという意欲があるのかもしれないですが、やはり簡便ではないし、簡単ではないですよ、伝えていくということは。

 

 

小野:いまの伝統医学に関する国際情勢の影に見え隠れするのは、一つは経済活動なのです。産業化、伝統医学の商品化です。

 

 

石川:商売ですね。すくなくとも中医学の基本は西洋医学の概念でやろうとしています。西洋医学の概念というのは治療学でなく、博物学なのです。博物学の説明論理はありますが、治療学としての論理はない。例えば糖尿病でも、インシュリンが膵臓から出て血糖をコントロールするという事実は生物学的な事実なのですが、インシュリンを与えて、即、次の日に糖尿病が治った話はありません。それは全然違った理念上の話であって、治療学ではないのです。治療学は何かということを考えたときに、それは非常に大きな問題が起きます。熱を下げればインフルエンザが治るかというと決して治らない。
例えば、治療学という概念がないから、血圧をコントロールすればいいと考える。それは治療とはいえない。一番可哀想なのは臎原病です。ステロイドさえ与えていれば何とかなる。でもどうなるか確実なことは分からない。
治療学は何かということが、いま一番重要なテーマだと思います。治療学は何かというと問うた時、漢方が一番の治療学だと言えるのではないでしょうか。鍼灸でも漢方でも、いわゆる治療学として存在しています。そのことをはっきりさせる必要があります。
西洋医学や中医学といは方法は違いますが、十分きちっと連携してやっていけば治療学の大系化はできます。体系化していって一つの合体した形が取れると思います。体系化の一つが保険制度です。例えば私は、鍼灸師もきちっとした資格を持ち、保険の中でどういう動きをするのか。営業保険に入りたくない鍼灸師もいて、それに反対しているようですが、国民のニーズに応えるにはやはり高い鍼灸師、経験の高さが治療価値を決めていくわけであって、なんでもかんでも価格が安ければいいという問題ではないと思います。もっと広く大きく治療に貢献する方法論は、いまは保険制度かなと思っているのです。

 

 

小野:正当な医療制度というと、例えば中国とか韓国、インド、またはベトナム等のように伝統医学を正規の医療システムに取り込んでいる国があるわけです。そこは法律で体系化がされているわけですから、国によって保険制度が十分でない国もありますが、例えば韓国などは日本の保険制度が植民地時代に敷かれているわけです。韓国の保険制度が植民地時代に敷かれているわけです。韓国の保険制度は日本をひな形にしていますから、結局そういう国では伝統医学も正規の医療として認められるということです。ここで気を付けなければいけないのは、日本の医療保険制度に正規なものとして認められることは、その制度に取り込まれていくということも危惧しなければいけないと思います。自由度がなくなるのではという問題です。

 

 

石川:ただ、経済的に恵まれなくてそのために死んでいった人たちもいるわけですから、保険制度がそれを担保してあげるということは非常に重要なことでもあると思います。飢餓だとか餓死などで、明治期に多くの人が死んでいった。それを保証するというのが社会保障だから、それは守るべきですが、医療保険に甘んじてしまったところがあります。

 

 

東郷:いつも思うのですが、十九世紀の終わりから二十世紀の頭にかけて、西洋医学ではさまざまな治療薬が開発されましたが、治しているわけではなくて、実は症状を消すだけの対象法の薬なのです。いつも思うのは、近代化の中で私たちは自分の身体はどういう治り方を欲しているのかという、治り方のイメージです。例えば漢方薬を飲んで、汗を出して熱が下がっていく、そういう自分の身体の中にある力を使って治って行く。そのプロセスのリアリティというのがどんどん失われていき、頭痛薬で頭痛が消える、そういう治り方のイメージ再生産されている。医療というのは、薬を飲めば治る、そういうものなのだというイメージがずっと再生産されていっています。患者さんの潜在意識の中にある隠れたイメージというものはとても厄介なものだと思います。

 

 

石川:はっきり言うと、心の問題を今の医療は一切無視している。いま世の中を見ていても、ここ十年ハラスメントが強くなっていて、みんな三十過ぎると鬱傾向がでてきて、だいたい四十代になると鬱になっちゃう。脈診るでしょう、昔は沈微の脈なんてめったにないのです。でも、いまは相当沈微の脈がある。これは精神的な落ち込みを意味しているのだから、脈を診ただけで、初診からあなた人生つまらないでしょう、こんな人生やっていられないと思うでしょう、と言うのです。「はい」答える素直な人もいるし、笑って、「いやあ」という人もいるけれど、実はそうでもない。顔も言葉も嘘をつくのです。見栄もあるし、外聞もある。それを今の医療者は、患者の見栄も外聞も無視してしまっています。実は、患者の現実、実態を把握しないと医療者ではないのです。医療は大変なのですよ。(笑)ところが西洋医学ではそのような面には一切触れないから、相手の見栄とか外聞は、コンピューターの画面上には現れてこない。大学で学生の診察を見ていますが、患者の心を見ていない。パソコン上のデータを見ているのです。確かに画像診断で身体のことは全部見える。だけど一番大切な心は見えない。患者は症状などを話します。でも本質は違う。本質を見るためには生体反応を正確に見るしかない。それをしないからわからなくなる。そうなるといろいろな検査をやっても何も出てこない。いま本当に医療の危機だと思います。

 

 

小野:ある意味、日本の伝統医学を通して見えてくるものがある。それは、日本の現状の鑑みたいなものです。

 

 

石川:本当におっしゃる通りだと思います。実は見えている。いま伝統医学を通して日本医療の実態が明確に映し出されているということが、やはり伝統のすごさなのだろうと思う。そしていまの現状をどうするのか、もう一回洗い直しましょうと。西洋医学は何なのか、漢方医学は何なのか、洗い直しをすることによって、日本の医療がもう一回再生するのではないでしょうか。

 

 

小野:それを乗り越えないといけない時代になっているのでしょう。さらに、いままでとは異なり、これからは少子超高齢・人口減少社会です。少子化と超高齢化に伴い、人口が減少し、成熟していく社会をどう生きていくかが最も重要になってきます。これまでの若い人が中心の社会ではなくなってくるわけです。当然医療も変わります。従来の西洋医学的なものというのは、どちらかというと若い人が中心の社会において、健康体に、元へ戻すということでした。若い人はリカバリー力も高いですから。でも超高齢者社会は、当然圧倒的に高齢者が多いので、リカバリー力に期待できません。

 

 

石川:テレビを見ていたら生活不活発病といっている。そんなものは病気でも何でもないのです。昔は、廃用性筋委縮症候群と言っていたのだけれど、要するに身体を動かさくなっているだけ。現代の便利さが、動かなければいけない自分の本来持つべき身体能力を削ってしまっているわけです。人間は動物なのだから動かなければいけない。人間がやっているのは何かというと、食って寝て、排せつして、体を動かしているしかない。
 一番やるべきことは食うことで、そのなかで一番は噛むこと。噛むことをしっかりしていれば、免疫系はしっかり担保できる。噛まないから免疫系が担保されない。いまアレルギーなど免疫系の病気が増えているのは実は噛んでいないからです。噛むという教育はどこかでやっているかというと、実は全然やっていない。
 東京都医師会の編集委員長をしていると、時たま長い文章を書くことが多くなる。そこでテーマを養生とは、と考えたときに、小学校の教科書では養生について何を書いているのか調べてみたわけです。小学校と中学校の教科書を買いました。でもなにも書いていない。生殖についてはくわしい。精子は、卵子は、セックスは、そういうのには興味があるようだ。(笑)でも養生というのではない。ものを食べる、単純なことを言っているのだけれど、食って寝て、排せつして、というのは人間の基本的な行動です。なぜこの話をするかというと、お年寄りが必ず訴えてくるのは、食べられない、眠れない、便秘だと、おしっこ近い。つまり食って寝て、排せつして、それだけなのです。大した事やっていないのです。そして運動として何があるかというと、噛むこと。結局、あなたは噛むのが足りないと言う事に落ち着く。

 

 

小野:西洋医学は治す医療ではないのでは。

 

 

石川:西洋医学は説明の医学です。生物学を利用していろいろな説明をするけれど、説明して治るのだったら苦労はしませんよ。検査して治るのだったら、山ほど検査してください。検査は実態を表現しているだけで、治すことではない。言葉で説明しているのとまったく同じです。いまの医療というのは説明だけしていて、治していない。治療学をしっかりやっていないということになります。

 

 

小野:また西洋医学の中には、例えば、感染症や疾病の予防はありますが、本来、いわゆる健康増進や予防、養生という考えはないです。

 

 

石川:噛むことによって免疫が高まります。殺菌作用の活性化も強くなって、当然ウィルス感染、細菌感染も減る。よく噛んでいないから感染するわけです。そういう話を患者が来るたび、来るたびに患者にするのです。この努力凄いでしょ。(笑)あんた噛んでないでしょと、すぐわかるから。噛んでない、噛んでないと、繰り返しています。

 

 

東郷:これは学生によく話をするのですが、1853年書かれたナイチンゲールの『看護覚え書』の中で、ちょうどその当時は、病理学が発達した時期でしたから、病理学の近年における発達は目覚ましい、しかしながら病理学は病気の結果起こったことを知るには便利だけれど、病気の変化の中で、なにを手掛かりにその病態をつかめばいいのか、そういうことについては何も教えてくれないと、むしろ患者を診るときの観察力が減退していることを述べています。現代にも通じる言葉だと思います。

 

 

石川:今のCTスキャン(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像検査)ができたことによって患者が全くみえなくなりました。ある意味では伝統医学の危機でもあり、西洋医学の危機でもあると思います。

 

 

小野:日本は確かに困難な状況にありますが、逆にチャンスなのではないかと。

 

 

石川:そういう意味では。

 

 

小野:それを新しく打ち出していける、ただ問題解決をどうしていくかということ。

 

 

石川:だからいかに我々が、これから日本伝統医学機構の機能を発揮して、皆さんの眼をばしっと見開けるような広報宣伝活動をやっていく一つの大きなチャンスではないかと思います。これからもいろいろなことを喋るつもりですが、いつも行きつく先は一緒です。

 

 

小野:そういうものをひっくるめて、新しく改組される新生の日本伝統医学機構を考えていきたい。それだからこそ意義がある組織なのです。

 

 

石川:これから世界の健康を発信するのはどこか。少子高齢化の日本です。少子高齢化で社会機能から何もかも全部衰えた中で健康を維持し、自分たちの豊かな生活を維持する健康の在り方は何か。実はそれが伝統医学であると。

 

 

東郷:伝統医学機構は、いままで漢方を指示する国民の皆さん、鍼灸を支持してくれる国民のみなさんの要望に応える形で、活動を続けていきたいと思います。これから訪れる未曽有の少子高齢化社会。試練の時ではありますが、伝統医学こそが乗り越えていく底力を持っていると信じます。

 

 

石川・小野:大賛成です。

 

 

(おわり)

 

月刊 漢方療法 Vol.19 No1 (2015-4)
たにぐち書店より引用

 

 

■石川友章(いしかわ・ともあき)

昭和18年生まれ。昭和四十五年、東京慈恵会医科大学卒業、医学博士。東京慈恵医科大学付属第三病院内科、富山市立中央病院内科科長を経て、東京日野市に石川クリニック開業。昭和63年より山田光胤に師事する。現在(医)(社)方伎会理事長、同石川クリニック院長。日本東洋医学会会長、指導医、東京都医師会編集委員会委員長、慈恵大学客員教授、日本臨床漢方医会監事。

 

■東郷俊宏(とうごう・としひろ)

平成3年、東京大学文学部卒業。平成10年、明治鍼灸大学大学院修士課程修了。平成10年、京都大学人文科学研究所助手(科学史教室)。平成13年、京都府立医科大学非常勤講師(~15年)。平成13年、Needham Research Instotute 客員研究員。平成16年、鈴鹿医療科学大学鍼灸学部助教授。平成21年、東京有明医療大学 保健医療学部准教授(現職)。平成22年、順天堂大学大学院医学研究所 終了、博士(医学)取得。

 

■小野直哉(おの・なおや)

明治鍼灸大学(現・明治国際医療大学)卒業後、明治鍼灸大学付属病院卒業研修生、京都大学大学院人間・環境学研究科、京都大学大学院経済学研究科、東京医科歯科大学大学院修士課程を経て、東京大学大学院医学研究科博士後期課程在籍中に、医療経済研究機構リサーチレジデント及び協力研究員、先端医療振興財団科学技術コーディネーター等に従事。現在、公益財団法人未来工学研究所主任研究員、Senior Executive Research Fellow , International Institute of Health and Human Services , Berkeley, U.S.A., 明治国際医療大学非常勤講師兼務。

36.東洋医学の小経験 最近の症例から;含めて一服治験&一発治験の例― ―それからわかる2~3の事柄―

 

東洋医学の小経験

 

最近の症例から;含めて一服治験&一発治験の例―

―それからわかる2~3の事柄―

 

東洋医学ひぐちクリニック

 

第4部会 樋口 理

 

 

東洋医学の治療を日常臨床に取り入れると、時々思いもしない症例を経験します。速効で治療効果を現します;一服治験&一発治験と言います。

患者様は、不思議かつビックリで症状の軽減或いは消失を実感され、医者も同じく不思議な経験を味わい、ビックリを味わい、その場に居合わせた全員が、その雰囲気を共有し場は和み、笑顔が沸き上がり、何とも言えない充実感・爽快さを味わえます。

医者も患者様も『此のような治療が有るなんて知らなかった』と思う世界です。ご高齢の方々(70歳~80歳以上)も、『うん十年生きてきて初めて経験した』と言われます。此のような症例が、かなりの数になりましたので、症例の経過・結果を示しながら報告致します。

又、それらの症例経験からわかった2~3の事柄を結語として最後に述べます。

 

 

【症例(1)】Y,N;73歳、女性

 

C.C.;全身のかゆみ

 

P.I.;4~5年前から全身のかゆみが出現。アレルギーと診断されて、抗アレルギー剤の点滴や内服を続けているが、よくならない。薬が切れるとすぐにかゆみがでる。友人が長年の蕁麻疹が漢方と鍼治療でよくなったと聞き、受診する。
治療&経過;先ず陰性食品の制限(ヤクルト茶9杯、水3杯、ミカン6個)。鍼治療は調気、掻痒の針、頸背部の凝りに置針。漢方薬は腹は氷の様に冷たく裏寒として温裏剤、発表剤として桂麻各半湯を投与。4日後受診。コロット違う。殆ど痒くない。約1か月後の治療で廃薬治癒。

 

【コメント】裏寒(内臓の冷え)と発表の概念とその治療法が奏功しました。慢性的な経過で西洋医学の治療では頭打ちの症例では、診方&治療法を変えると救われる場合があると思われます。裏寒外熱頻躁(内臓が冷えて体表に熱が追いやられ、かゆみや皮疹を生じ、手足をばたつかせる。・・・かきむしる)の概念と治療法は特に皮膚科領域で有効な手段と思われます

 

 

【症例(2)】H.T.;36歳、女性

 

C.C.;食事の時、食べ物が喉を通らない

 

P.I.;4~5年前から、食事の時、食べ物が喉を通らない感覚が出現。いろいろ検査した結果、食道アカラシアの診断で漢方薬を服用しているが、変わらない。治療方法を変えようと思い立ち受診する。
治療&経過;顔貌は長年の闘病生活に疲れて、疲労困憊されていました。陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(かなりの圧痛でした)、頸背部の凝りに置針。胸鎖乳突筋は硬く圧痛(++)で横刺施行。漢方薬は裏寒に温裏剤、気鬱として香蘇散、気滞として、半夏厚朴湯などを投与するも反応今一つ。頸背部の凝りが和らぎ、胸鎖乳突筋の圧痛も軽減していましたが、次に打つ手に迷いが出ていた時、腹の動悸が気になると一言あり。任脈上の突き上げる様な動悸を触れます。迷わずに、桂枝加竜骨牡蠣湯を投与。非常に甘い由。隣のコンビニで鶏の唐揚げを買い、食べてもらうと『アッ通った』と一言あり、顔がほころび笑顔がでていました。後日tel確認すると、通っているとのことで、治癒。

 

【コメント】
咽喉頭部の不快感は、西洋医学では咽喉頭神経症、東洋医学では梅核気。治療法は半夏厚朴湯が有名です。
軽症の方はともかく、重症の方は日本生活上の支障は耐え難く、不快感に悩まされると推察します。積極的な治療法で、確率の高いものは無いのが現状だと思います。一般には、気鬱、気滞としての治療に反応しますが、此の方は桂枝加竜牡蠣湯が奏功したことにより、実態は気逆となります。気鬱や気滞としてアプローチ、反応が今一つならば、気逆も頭の隅に置いておけば、医者も患者様も救われるかもしれません。

 

 

【症例(3)】H.M.;10歳、男性

 

C.C.;下痢しやすい、蕁麻疹がでやすい、結膜炎になりやすい、頭痛もある。

P.I.;母親の知り合いが漢方薬治療で西洋薬を減らすことができたと聞き、ここ数年息子が症状が出る度に、複数の医療機関に通院するのが大変で、漢方薬だけで下痢や蕁麻疹や結膜炎がよくなりますかと依頼あり。

治療&経過;東洋医学では下痢は水分のとりすぎが関係し、蕁麻疹;皮膚の表面から水が盛り上がる膨疹は余分な水分が原因と説明、更に結膜炎は熱と説明し、頭痛は水毒と説明。半信半疑ながら治療が始まりました。鍼治療は結膜炎に対して四穴八針;最初は怖そうでしたが、直後に痒みが軽減してビックリ。3日間目薬をしなくても、結膜炎は生じなかったと後日報告あり。鍼治療で、不愉快な目の症状が軽減したので鍼治療が好きになり、時々リクエストされます。

東洋学では、水の代謝は上焦は肺、中焦は脾、下焦は腎と説明してーー何のことやらで??――中焦の脾を良くしようと、漢方薬は建中湯類を使用。2週間後下痢していない。蕁麻疹でていない。眼もかなり良い。1月中旬嘔吐下痢にかかり、漢方でどうにかなりますかと依頼有り。特効漢方薬が有りますよと、処方。2日で症状消失し、兄弟の誰かが毎年かかっているが、経過が早いとビックリ。3か月後、寝起きも良くなり、元気になりましたーー祖母から『最近顔色が良くなった』と言われたと嬉しそうでした。

 

【コメント】下痢しやすい、蕁麻疹がでやすい、結膜炎になりやすい、頭痛もあるという10歳の男児。西洋医学では下痢止め。抗アレルギー剤、鎮痛剤と症状の数だけ薬が増える傾向になりがちです。が東洋医学の診方で、本治(大本の原因)・標治(現れている症状に対照的に)という概念が有ります。本治で水代謝の脾を立て直し高める治療をしたところ、経過とともに症状は消失しました。消火器症状と水代謝がからんでいれば、脾で攻めて行けば、新たな展開が開けることを示してくれる症例です。患者様の負担も少なく、一剤で複数の症状を解決してくれます。10歳で下痢しやすい、蕁麻疹がでやすい、結膜炎になりやすい、頭痛もあると多愁訴ですが、裏寒(内臓の冷え)が10歳の子供にも迫っている事を疑わせる1例かもしれません。

 

 

【症例(4)】S.H.;43歳、男性

 

C.C.;左肩関節の痛み

 

P.I.;1年前転倒して、左肩を打撲。剥離骨折を指摘され治療。肩を拳上した時の痛みが持続し、リハビリを続けているが、変化なし。友人の薦めで受診。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は左手に八邪、肩に灸頭針、頸背部の凝りに置針、天宗に吸い玉施工。上病下取に従い、右の上口承山に透針し遠位置針ー患部運動療法を施工。漢方薬は裏寒に温裏剤、駆瘀血剤を投与。一か月しても、変化無し。経過がおかしいので、左は血として疎経活血湯に黄連解毒湯を加味。1週間後受診。漢方薬変更後痛みは1/10以下となり、患者様はビックリ。その後治癒。

 

【コメント】人間工学的には、左に心臓があり、365日24時間休みなく動いていますので、心筋は熱を持つと考えます。(野球選手投手は試合後、氷で肩を冷やしています。)人の体には正常では、クーリングシステムが働き、此の熱を冷まします。これが働かないと、血が熱を持ち『血熱』として左上半身と右下半身の症状がでると考えます。西洋医学にはない概念と治療法を此の方に応用しました。その結果早期に効果を実感されました。
 西洋医学一辺倒の時臨床では、よく右がいつも痛い、又は左だけが痛い等の訴えは日常茶飯事でしたが、気にも止めずに薬(痛み止め)を処方していました。痛み止めが効かなければ、より強い痛み止めを処方。しかし東洋医学を取り入れてからは右では利水剤を中心に、左では血剤を中心に処方すると多々救われる事があります。本例は其の一例です。

 

 

【症例(5)】K.K.;43歳、女性

 

C.C.;左上眼瞼が重くて開かない。

 

P.I.;昨年9月頃から、左上眼瞼が重くて開かなくなり、複数の医療機関を受診したが、原因は分からず、治療法は特に無く、場合によっては手術と言われた。手術はしたくない。漢方や針治療でどうにかなるならと考え受診す。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気、頸背部の凝りに置針。四穴八針。漢方薬は眼瞼下垂として、補中益気湯を投与。鍼治療直後には眼瞼は上り、開きますが、効果の持続は乏しい感あり。眼瞼は経絡では脾なので、脾を立て直す建中湯に変更。4日後受診。漢方薬変更後、眼瞼は下がらず、眼は開いているとの事。治癒。

 

【コメント】東洋医学の哲学的概念に五行学説というのがあります。其の中に『脾は胃と表裏をなし、肌肉を主り、口に開窮し、其の華は唇にある』と言う節があります。これを応用したのが症例(3)で有り、本例です。目については五輪学説というのがあります。外側より中心に向けて肉輪・血輪・気輪・風輪・水輪の五部位に分け、内臓との生理、病理との関係を説明し、眼病の診断治療の基礎とします。肉輪は上下眼瞼に位置し、脾に属します。血輪は両背の血絡(毛細血管)にあり、心に属します。気輪は白眼(結膜と強膜)で肺に属します。風輪は、黒眼(角膜)で肝に属します。水輪は瞳孔で、腎に属します。これに準じて、脾の治療をすれば上下眼瞼の問題は解決するという訳です。不思議な理論体系です。が本例は、此のやり方で早期に改善しました。弛緩性麻痺;四肢麻痺や顔面神経麻痺に応用できそうです。

 

 

【症例(6)】K.T.;53歳、男性

 

C.C.;右手のシビレ、右肩痛で夜間不眠

 

P.I.;右手のシビレは5~6年前からある。1週間位前より、右肩痛があり、痛み止めや湿布をしているが、それでも夜間痛がひどく眠れないと受診。苦痛様顔貌で左手で右前腕を抱えてありました。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は臥位が取れないために座位で施工。調気、右手に八邪、肩に灸頭針、天宗に吸い玉。漢方薬は裏寒に温裏剤、二朮湯合駆瘀血剤を投与。3日後受診。5時間は寝れている。患部に鍼治療すると痛みが増す感じがある。近位療法をやめて、遠位療法へ変更。左下肢の上口・承山に透針して遠位置針ー患部運動療法を指示しましたが、本人は「こことあそこが痛いから動かしにくい」と言われつつビックリしたように、『アッ痛いのが取れた』と言われ、肩をグルグル回し、此の針は凄いと言われました。『経絡が通じたから痛みが取れた』と説明し、その場で治癒。

 

【コメント】東洋医学の世界に身を置いて、鍼治療等を実践していくとその場で症状が消失するという経験を沢山しました。針の世界では痛みは、『不通即痛』(通じないと即ち痛む)が大原則で、鍼治療をして経絡が通じれば、痛みはその場で消失します。その場に居合わせた人だけが実感できる世界です。凄い世界です。勿論、此の方の右手のシビレは翌朝には大幅に軽減していました。

 

 

【症例(7)】M.M.;40歳、女性

 

C.C.;腹が張ってゴロゴロいい、ガスが多くて困っている。安心して食べられない。眉の所が痛い。

 

P.I.;3年前から、腹が張ってゴロゴロいい、ガスが多くて困っている。○ス○ン、○オ□フ○ル□ンなどを内服しているが、胃もムカムカし変わらない。食べるのが怖くなり困っている。肩凝り頭痛も腰痛もある。便秘もある。友人から、経過が長すぎるから、治療法を変えた方が良いと薦められて受診す。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気、胃の問題なので、近位は中院、胃兪遠位は内関、足三里に灸治療。頸背部の凝りに置針。眉骨稜にも置針。漢方薬は香砂六君子湯、二朮湯等を投与。鍼治療中に腹の動きが良くなり、温かくなるのが分かったとーー。1週間後受診。治療して帰る途中で腹や胃の感じが違ってきたのが分かった。腹は張らないし、ガスも減り、安心して食べられるので大助かり。『漢方と針って効くんですね』と言われました。

 

【コメント】中空臓器が食べ物などの刺激を一番受けやすく、冷えて症状を誘発する可能性が高いと思います。三年間の治療で今一つが温めてあげると、速効です。長らく治療しているが今一つの方々が時々受診されます。皆様に共通しているのは、陰性食品を知らずに日常茶飯事取られており、それが冷えの原因となり諸々の不具合を生じている事です。其の事を教えてあげ、温める治療を提供すると見違えるようになります。

 

 

【症例(8)】T.S.;62歳、男性

 

C.C.;食欲が無い。体がだるい、左肩は数年来痛む。

 

P.I.;元々食は細い方だが、寒くなると体調が一層悪くなり、最近は朝はボーットして、暫く動けない。食欲が無く、毎朝吐き気がする。胃薬を飲んでいるが一向に変わらない。左肩は数年来痛む。妻が漢方と鍼治療で体調がよくなったので受診。
治療&経過;顔色は真っ白で唇も蒼白。寒々とした感じで活気なし。鍼治療は調気。裏寒に対して、中院、内関、足三里の灸施工。頸背部の凝りに置針。大椎に棒灸。
漢方薬は裏寒に対して、温裏剤、左肩痛に二朮湯をベースに投与。鍼治療直後に、腹が温まり、左肩も違うと言あり。翌日の朝は、いつもは30分~1時間ボーットしてジーットして座り込んで居たのが違い、吐き気も起こらず、食欲もでて、何よりも顔色に赤みがさして全然違うと奥様より報告がありました。3日後受診。キビキビした物言いで、顔色も生気がみなぎりイキイキとされ、全然違うと言われました。

 

【コメント】寒い時期の今ならではの症例です。人を冷やす陰性食品を教えて制限し、内臓を温める漢方薬と鍼治療で別人のように元気になられました。此のような症例を経験する度に、『冷えは万病のもと』を思い出し、古人の言葉は本当だと納得しています。昭和の初期は、一番冷たい食べ物は井戸水で冷やしたスイカ;15~18℃の世界。平成に生きる人々は5℃の世界。自動販売機、冷蔵庫、コンビニ等々・・・。平成の人々は昔より10℃冷やす生活をしているのではないかといつも愚考しています。平成生まれの若い人は昔の生活を知らないのでーー昔の生活を知っている人には、冷やす生活から昔に戻ればと説明するとピーンときますがーーー平成生まれは、コンビニ、冷蔵庫、自動販売機しか知りませんから今後大変になってきそうな予感がします。(体温が35℃台の方々が増えています)

 

 

【症例(9)】R.A.;21歳、男性

 

C.C.;体が冷えてやる気がでない。だるい、よだれが出る。

 

P.I.;ここ数年毎年冬になると体調は良くない。特に2か月位前より、体が冷える、やる気がでない、だるい、よだれが出る等の症状が出現。近医受診し、自律神経失調症と言われ、薬を飲んでいるが、寒い日はますます症状が悪くなり、何かおかしいと思い受診。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気、腹は氷の様に冷たいので裏寒として内関、足三里に灸。丹田に棒灸。頸背部の凝りに置針。大椎に棒灸。直後に腹を触ってもらうと温かでした。気がめぐった証拠です。本人もうつむき加減に違うと。漢方薬は裏寒の温裏剤を投与。3日後受診。全然違うと。よだれも出なくなったと。

 

【コメント】東洋医学では『よだれ』と聞くだけで、裏寒(内臓の冷え)を疑います。そして脈と舌診と腹の温度で確認します。原始的ですが、舌の色(鏡で見れば一目瞭然;冷えている人は白い苔が、熱のある人は舌が赤い)唇の色(プールや川で長時間泳ぐと身体が冷え、唇の色は紫色になります)や腹の温度(触れば誰でも分かります)は患者様と共有できますので、治療に対するモチベーションも高まります。又、治療方法に温めるが沢山用意されています。悲しいかな!?!(私の独断と偏見が多々加味されていますが)西洋医学の薬には、温めるが有りません。
温めてあげると、本当に自分の持っている西洋医学の常識や経験をガーンとぶち壊される位の破壊力(治り方が違います)を示します。そして、今まで自分は何をしていたんだろう?という疑問が芽生えてきますーーー。

 

 

◆症例のサマリー◆

 

年齢、性別、症状期間、東洋の概念、効果発言期間

(1)73歳、女性、全身のかゆみ4~5年、裏寒&発表、1か月で治癒

(2)36歳、女性、食べ物が喉を通らない4~5年、裏寒&気逆、漢方薬一服

(3)10歳、男性、下痢、蕁麻疹、結膜炎、頭痛数年、脾虚、3か月で改善

(4)43歳、男性、骨折後痛1年、血熱、1週間

(5)43歳、女性、眼瞼下垂6か月、脾虚、4日

(6)53歳、男性、右手シビレ5年、右肩痛1週間、裏寒&瘀血&経路不通、針一発

(7)40歳、女性、消火器症状3年、脾虚&水毒、1週間

(8)62歳、男性、消火器症状&左肩痛数年、裏寒、翌日(多分灸で速効)

(9)21歳、男性、消火器症状&精神症状数年、裏寒、3日

 

◆結語;症例の治療経過等からわかった2~3つの事柄◆

 

①症状が数年に及ぶ慢性疾患には裏寒(内臓の冷え)や脾虚の関与が多い。
裏寒に対する温裏剤を本治として、治療すると経過が速い。

②10歳の男児にまで、脾虚が迫っている。

③東洋医学の引き出しが有ると、医者も患者も救われる可能性があることが予想される

 

(平成27.4.7投稿)

35.東洋医学の小経験 ―腰の治療;西洋から東洋へのきりかえた方々へのアプローチとその結果― ―それからわかる2~3の事例―

 

東洋医学の小経験

 

―腰の治療;西洋から東洋へのきりかえた方々へのアプローチとその結果―
―それからわかる2~3の事例―

 

東洋医学ひぐちクリニック

 

第4部会 樋口理

 

 

腰痛症は、2本足で歩く人間の宿命みたいなものかもしれません。が、腰は体の要であり、日常生活上の支障は多大です。西洋医学では痛み止めや循環改善剤、筋弛緩剤、湿布などで治療します。長らく西洋医学の治療をしているがーーー今一つで治療法を変えてみようと時々受診される方があります。

 

 私は50歳までの26年間は西洋医学一辺倒の治療を経験し、以後は東洋医学へ方向転換。この10年間は痛み止め等西洋薬の使用はゼロで、東洋医学の治療方法中心で、漢方薬・鍼治療・吸い玉・刺絡・食養生・食禁などで治療し、東洋医学の治療効果は計り知れないほど高く、自分の中では西洋医学よりも数十段上ではないかと考えています。(私の独断と偏見が多々加味されていることは、悪しからずご了承ください)

 

 西洋医学一辺倒の時代であれば、治療方法は前医と同じ物しか提供出来ないため、丁重にお断りするような、又は逃げ出したくなるような症例に遭遇しても、どうにかなるという気持ちがあり、積極的に治療を開始できます。

 

 西洋医学の治療から東洋医学の治療へ切り替えられた方々へのアプローチとその治療経過を述べ、並びに結果を述べ、西洋医学の治療と東洋医学の治療の両方を経験された患者様の本根の声を紹介したいと思います。
 最後に、2~3の分かった事柄、大先輩のお言葉を紹介しつつ、結語とします。

 

西洋医学とは異なり、東洋医学では腰痛は『腎虚』や『冷え』や『水毒』や『瘀血』という概念が原因で起こると考えます。ピンとこないと思いますがーーー

 

 

 

≪症例1≫56歳、T.U.;男性

 

C.C.;腰痛&右足のシビレ

 

P.I.;2年前、咳をして腰痛再現。右下肢のシビレも有る。検査で腰部脊柱管狭窄症と言われた。痛み止めや湿布、牽引などを2年間しているが、段々悪くなっている。日常生活上の支障がひどくなれば手術と言われた。今は5分間しか立っていられない。チョットした労働が出来ない。夜の寝返りもままならない。義理の姉から、漢方と鍼治療は結構効くそうよと薦められて受診。

 

治療&経過;体重が90kgの巨漢の方で赤ら顔です。陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)。肘関節の膝三穴に置針し遠位置針-患部運動療法。時々吸い玉施行。漢方薬は六君子湯、黄連解毒湯、桂枝茯笭丸、牛車腎気丸を投与。治療を続けていると、先ず仰向けで足を挙げられなかったのが挙げられるようになったり、腰をそらすのができるようになりました。1カ月後、30分は立てる。痛みがくる時間が、前とは変わり感覚が長くなって来た。更に道路愛護の作業3時間をしても腰が痛くならなかったとの由。(何時もは、へべれけで、高齢者の人から、「俺より若いのに弱かな」とからかわれていたそうです)。腰の芯が痛いとの訴えに腰部の細絡に刺絡後吸い玉施行。駆瘀血をパワーアップするために通導散を追加。右の腎部痛がとれた。右下腿外側の痛みもとれた。右拇指の違和感もとれた。3か月後、当初の2/10となり、6ヵ月後ほとんどどうも無い。治療廃薬。最後に一言「最初から漢方と鍼治療をしていればよかったかもしれないーーー」

 

【コメント】2年間西洋医学の治療をされた方です。東洋医学に変えて、治療がうまくいき経過が良い時は、全例でこの方の様に自分の方から「ここが良くなった」と改善点を述べられて来ます。西洋医学一辺倒の治療では、経過としてありえないことだと(私の独断偏見が多々加味されていますが)愚考します。足を挙げたり、腰をそらしたりできるのは、腰部の瘀血と冷えがとれ柔軟性がでてきた証拠です。
腎部痛は西洋医学一辺倒の時には、患者様から「腎部痛がとれない」と言われたことは多々有りましたが、「腎部痛がとれた」と言われたという記憶はほとんど有りません。私の腕が3流だからかもーーー。
『腰の芯が痛い』などは日常臨床では、よく耳にしますが、『冷えて硬くなっている』を人間の持つ原始感覚で表しているのかもしれません。駆瘀血剤と腰部の細絡に刺絡後吸い玉施行が奏功したと思います。そして右の腎部痛がとれた。右下腿外側の痛みも取れた。右拇指の違和感も取れた。と水が床上浸水理論で溢れ、それが床下へ引いてくる感じで治って行かれました。典型的な治り方だと愚考しています。

 

 

 

≪症例2≫57歳、T.S.;女性


C.C.;水道で手を洗うと指先が痛い、腰痛で仰向けに寝られない

 

P.I;ここ数年秋口から水道で手を洗うと手が痛くなり、冬場はお湯を使って洗ってもその後手が痛くなる。手の先に変形があるから痛むと思っている。痛み止めや湿布をしているが一向に良くならない。腰痛も10年来あり、仰向けに寝られない。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は八邪と肘関節に灸頭針。天宗に吸い玉。頸背部の凝りに置針。漢方薬は桂枝加朮附湯を投与。1週間しても反応なし。当帰四逆加呉茱茰生姜湯を投与。すると、水道で手を洗うと指先が痛いのが、痛くならないようになり、10年以上夜間痛のために側臥位でしか寝られなかったのが、仰向けに寝られるようになりました。患者様は不思議そうに、指の薬が腰にも効いたと喜ばれました。

 

【コメント】漢方治療をしていると、時として患者様があきらめているような症状がとれる事があります。漢方の世界で『おつり』と言います。この方は当帰四逆加呉茱茰生姜湯で、指の痛みと腰痛がとれました。当帰四逆加呉茱茰生姜湯は久寒(長く潜む冷え)に効きます。
従って疼痛の根本原因は『冷え』ですから、西洋医学の痛み止め(作用は消炎、鎮痛、解熱。解熱は冷やしますから、冷えて痛むを更に悪化させると愚考しています。)ではとれないわけです。温めなければなりません。西洋医学一辺倒の時は、痛み止めが強力なものへとエスカレートしがちでしたが、東洋医学の『温める治療方法』をとりいれると、この症例のように治り方が違います。

 

 

 

≪症例3≫68歳、Y.N.;男性

 

C.C.;腰痛と過敏性腸症候群

 

P.I.;20歳代より、過敏性腸症候群で治療していたが、よくならないので放置。腰痛もおなかの具合が悪いとよく起こる。いつもは市販の痛み止めや湿布でよくなるが、今回は腹痛と腰痛ともに酷いので受診。

 

治療&経過;やっと歩ける状態なので、鍼治療は無し。腹は氷の様に冷えているので、漢方薬の温裏剤(内臓を温める);人参湯と大建中湯、桂枝加芍薬湯を投与。後日受診。1服飲んで、腹が温まり、腹も腰もよくなったと。
アメリカにいる娘も自分と同じ症状なので、漢方薬を送りたい、とその後受診されます。漢方薬を飲み始めて、過敏性腸症候群も非常に調子よいとの事です。

 

【コメント】長らく諦めていた腸の不調と腰痛が、腹を温める漢方薬の温裏剤;人参湯と大建中湯1服で取れ、その際腹が温まるのがわかった事で、『調子が悪いのは冷えていたからだ』と納得されました。40年間苦しまれたので、日常生活の上で陰性食品を熱心に勉強されました。その後時々みえられますが、過敏性腸症候群は起こっていません。もう6年になります。腸の不調と腰痛が漢方薬でよくなったので不思議がっておられました。冷えると痛むがやはり真実の様です。

 

 

 

≪症例4≫63歳、H.S.;男性

 

C.C.;腰下肢痛

 

P.I.;定年退職後、殆ど毎週山登りをしている。日常生活ではそれほど痛くないが、山登りすると痛む。どこか悪いのではと思い、検査で腰部脊柱管狭窄症と言われた。ここ数年痛み止めなどなどの薬をのんでいるが、一向に良くならない。漢方や鍼治療で治るかも知れないと薦められて受診。

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)。肘関節の膝三穴に置針し、遠位置針―患部運動療法。頸背部の凝りに置針。漢方薬は六君子湯。桂枝茯苓丸、牛車腎気丸を投与。山登りの時の飲物を聞くと、水筒に氷水を持っていくとの事。お湯にした方が良いと助言。山登りの前には、鍼治療をされ、熱心に陰性食品の制限をされました。月に3~4回の山登りの内、少しずつ痛くない日が増えてきました。そして、殆ど痛みがでなくなりました。

 

【コメント】漢方薬や鍼治療も効果があったと思います。が、一番大きな事は、氷水から熱いお湯への切り替えです冷たい飲食物は量が余計に入り、冷えを作る原因となります。熱いお湯は量が入りません。登られる山は変わらず存在し、画像診断上の腰部脊柱管狭窄症も存在し、変わったのは、治療法と水分の摂り方です。これで長年続いていた腰痛が軽減消失しました。腰痛症等を東洋医学では『水毒』といわれる所以です。東洋医学の立場からは、やはり、『冷えると痛む』がtrue真実で、画像診断はあまり関係なく、治療法は『温める』です。桂枝茯苓丸は瘀血を取り結果温めます。残念ながら西洋医学には、『止める』しか手段を持ち合わせていません。

 

 

 

≪症例5≫63歳、N.J.;女性

 

C.C.;左足のシビレと痛み

 

P.I.;2年前、自分がドナーとして肝臓を夫に移植。しかし甲斐なく夫が亡くなり、その後2か月して左足のシビレと痛みが出現。治療しているが、かんばしくないと受診される。左足は冷えて仕方がない。ホッカイロや湯たんぽを使っているけれども温まらない。漢方や針でどうにかなりますかと依頼あり。

 

治療&経過;初診時、裏寒、腎虚として温裏剤と牛車腎気丸を投与し、鍼治療施行するも、経過が何時もと違い、鍼治療でかえって疼痛が増強するとの訴えあり。ご主人の事を聞くと涙ぐみ、すぐに頭に浮かぶとの返事あり。ストレスかもしれませんよと説明し、処方変更。四逆散と五積散を投与。1週間後、漢方薬を変えてもらってから、漢方薬は甘く、飲むと足が温もってくるのがわかったとの事。3日目から全然違ってきたと。腰のヘルニアが原因と思っていたのに、こんな事もあるんですね。とビックリされるや痛みが軽減して嬉しいやらでした。

 

【コメント】整形外科では、痛みの原因をすぐに器質的変化に求めようとして画像診断を優先しがちです。そして痛みに対しては、“止める”が原則で薬を使います。それでうまくいけば問題無しです。が、本例の様に、ストレスを取る漢方で痛みが軽減すれば、器質的変化は、本当に痛みの原因なのか迷ってしまいます。東洋医学では『冷えると痛む』『通じないと痛む』が原則で、ストレスは『冷え』に働きますから、理解し納得できるのですがーーー

 

 

 

≪症例6≫ T.S.;62歳、女性

 

C.C.;左足の冷感&ウズキ。疲れがとれない。不安でしょうがない。

 

P.I.;数年前より両下肢のシビレ出現し、□年11月ごろより足の冷感と立位での下肢痛出現。下肢の冷感とチアノーゼ強く血管外科で精査するも異常無し。不安定感強く、上半身の火照りと下半身の冷感強く、西洋医学の治療を1年近く受けたが(投薬はロ○ソ○ニ○、○カ○、○ル○グ○ラー○など)一進一退なので、治療法を変更しようと○年8月18日受診。

 

治療&経過;陰性食品(起床時水300ml、コーヒー3杯、批杷茶1.5l、水3杯)を制限。鍼治療は調気し、頸背部の凝りに置針。直後に左下肢の違和感が消失し、血が下がる感じがなくなったと一言有り。漢方薬は上半身の火照りと下半身の冷感強くを上熱下寒、腎陽虚として五積散、八味丸を投与。8/19;左足の冷えが違ってきた。朝一で足がつけた。いつもは痛くてつけなかった。左足の冷感は氷水の中に付け込んでいる感じがする位に冷えていると言われ、八味丸に苓姜朮甘湯を合方。8/20;入浴後上半身がのぼせて汗が止まらなかったと言われ、『思わず反省、しまった』と上から攻めるをしなかった失敗のための一言。八味丸に苓姜朮甘湯が災いしたと気付き、処方変更。腎陰虚、陰虚火旺として、六味丸、滋陰降下湯を投与。以後上半身の火照りは消失。足のジンジン感も軽減消失。8/25;冷感もチアノーゼもおこっていない。当初の3/10。9月に入り、気温が下がってくると、主訴とは別の元々の冷えの症状が目をもたげ、現在はその治療をしていますが、当初の症状はほぼ消失しています。其のうち温泉や旅行に行きたいとリラックスされてあります。

 

【コメント】多分この症例は、西洋医学単独では限界の症例と思います。1回の鍼治療で直後に症状がグット改善しましたが、鍼治療で交感神経過緊張を副交感神経優位にしただけです。人の治癒反応は副交感神経優位で起こるのは御存知と思います。私の独断と偏見が多々加味されていますが、意識的に副交感神経優位にする治療法は残念ながら西洋医学には持ち合わせていない事を証明してくれる症例と思います。

 

 

 

◆◆『医療が病をつくる;免疫からの警鐘』安保徹著 岩波書店

 

【現代医学の治療の中にいくつかの根本的な間違いがある】

【消炎鎮痛剤はーーー限られた短い時間だけ痛みを焼失させた後、更に交感神経過緊張をもたらし、病気を悪化させていく】

【鎮痛剤の入った湿布も同様である】

 

まさに、安保理論に合致する症例と思います。治療法は副交感神経優位にする。鍼治療しかありません。
 又、足の冷感・チアノーゼと上半身の火照り感。西洋医学では自律神経失調症そのものですが、足の冷感・チアノーゼは交感神経過緊張による動脈の痙攣?かと愚推しました。
鍼治療直後に症例は軽減し、翌日にはさらに軽減、1週間でほぼ消失していますから、交感神経過緊張による動脈の痙攣?は、多分そうだろうと思います。上半身の火照り感は、当初「上熱下寒」として五積散を投与していました。経過が一見よさそうで、つい左下肢の冷感どうにかしようと、八味丸に苓姜朮甘湯を合方しましたが、8/20;入浴後上半身がのぼせて汗が止まらなかったと言われ、腎陽虚ではなく本態は「腎陰虚」で、「陰虚火旺」の状態だと気付き八味丸を六味丸へ変更し、滋陰降下湯を投与して事なきを得ました。がしまったと反省させられました。「上熱下寒」「腎陰虚」「陰虚火旺」の概念とその治療法、及び頭寒足熱が正常で『頭熱足寒』であれば「上からせめる」の治療原則がなければ、解決できない症例だと考えます。西洋医学でうまくいけばそれで良し。うまくいかない時に東洋医学の出番となる事を示唆してくれた症例です。

 

 

 

≪症例7≫M.H. ; 68歳、男性

 

C.C.;両足のシビレと腰腎部の痛み

 

P.I.;5~6年前より症状が有り、検査では腰部脊柱管狭窄症と言われた。いろいろ治療(痛み止め、湿布、循環改善剤、腰の索引療法等)したが、パットせず今は市販の湿布や痛み止めを時々飲んでいるが、変わらない。どうかすると少しずつ悪くなっているかもしれない。家内が鍼治療と漢方薬で膝や腰の調子がよくなったので、薦められて受診する。症状は雨の前はいつもよくない。風呂に入って冷房にあたるとよくない。今年は雨が多くよくなかった。

 

治療&経過;陰性食品を制限し、鍼治療。足の八風と肘関節の膝三穴に置針し、遠位置針―患部運動療法。漢方薬は症状が天気に左右されるので、風寒湿痺として、薏苡仁湯を投与。
2週間後腰痛はよい。シビレと腎部の痛み少しはよいがあまり変化ない。腎虚瘀血裏寒として、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸、人参湯合真武湯を投与。更に2週間後、奥さんが受診され主人がいつも腰腎部を叩きながら「痛い」と言うので、マッサージをしていたが、最近は全く痛いといわなくなったとの報告有り。2カ月後、シビレは無い。腰腎部の痛みやツッパリ感もなくなったとの由。

 

【コメント】此のかたも長らく西洋医学中心の治療をされていましたが、症状の改善がなく、東洋医学の治療へと変えられました、先ず風寒湿証として、水を捌き、次いで腎虚瘀血裏寒として、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸、人参湯合真武湯を投与し、症状は徐々に軽減消失しました。西洋医学の治療で頭打ちになったら東洋に変更してみるのも、選択肢として持っている医者も患者も救われると思いました。

 

 

 

≪症例8>T.K.;80歳、男性

 

C.C.;両足のシビレと腰腎部の痛み

 

P.I.;以前から両足のシビレと腰腎部の痛みがあり、痛み止めや湿布や索引治療を3年位続けたが、一進一退で、5年前に思い切って手術をした。が、両足のシビレと腰腎部の痛みは続き、もうあきらめている。近くの人が手術でとれなかった症状が、漢方と鍼治療でかなりよくなったと聞き自分もと思いH26.10.2受診

 

治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は下肢に灸頭針後、肘関節の膝三穴に置針し、遠位置針―患部運動療法を施行。頸背部の凝りに置針。足裏の湧泉に灸頭針、背部の腎愈に吸い玉施行。漢方薬は裏寒に人参湯合附子理中湯、桂枝茯苓丸、牛車腎気丸を投与。10/10;下腿の血管(静脈瘤)がへこんできた。10/22;何か違ってきた。10/28;腰は少し良い。膝は立ちしゃがみがよくなった。シビレも少し良い。11/5;ミカンちぎりして腰痛。11/14足の裏かなり良い。12/8夕方まで外で立ち仕事ができる。以前とは違う。12/29;足のシビレで感覚がわからなくなっていたが、それは無い。H27.1/5;頸部の針はいつもすると、体全体がスーッとする。2/13;山は冷えているが、ほとんどどうも無い。こんなに良くなるとは思わなかった。治療廃薬。

 

【コメント】10年来の腰下肢痛とシビレの方です。西洋医学の治療をされても一進一退で手術までされましたが、改善は今一つでした。思い切って東洋医学の治療に変えられました。陰性食品の制限を励行され、お茶を断つことで痛みとシビレの程度が違ってくることを実感されました。実感出来たから、自分の体の健康のために治療と養生を頑張られて約5か月の治療で上記の経過で治癒廃薬となりました。一つの治療方法で駄目ならば、もう一つ別の治療法(診方や治療方法が全く違いますが)を選択すると救われることがあることを示唆してくれる症例です。

 

 

 

◆各症例のサマリーと「患者様のお言葉」


(1)2年の経過、駆瘀血剤と経絡吸い玉で効果アップ。腎虚、瘀血。
『最初から漢方と鍼治療していればよかったかもしれないーーー』

(2)10年来。久寒(長く潜む冷え)の治療が奏功。
『不思議そうに、指の薬が腰にも効いたと』

(3)40年来。裏寒(内臓の冷え)の治療が奏功。
『1服飲んで、腹が温まり、腹も腰もよくなったと』
『調子が悪いのは冷えていたからだ』

(4)3年来。氷水をお湯へ。駆瘀血剤と鍼治療。腎虚、瘀血。
『登られる山は変わらず存在し、画像診断上の腰部脊柱管狭窄症も存在し、変わったのは、治療法と水分の取り方』後日、平日に氷水を山登りの時と同じ量のまれ、同じ症状が再現→更に一言、「氷水が原因!!」「こんな簡単な事」と一言ありました。

(5)2年来。ストレス
『腰のヘルニアが原因と思っていたのに、こんな事もあるんですね』

(6)数年来。漢方の概念(腎陰虚、陰虚火旺、上熱下寒)、副交感神経優位。
『其のうち温泉や旅行に行きたい』

(7)5年~6年来。裏冷(内臓の冷え)、腎虚、瘀血。
『「痛い」と言うので、マッサージをしていたが、最近は全く痛いと言わなくなった』

(8)7~8年来。裏寒(内臓の冷え)腎虚、瘀血。
『山は冷えているがほとんどどうも無い。こんなに良くなるとは、思わなかった』

 

 

◆◆-それからわかる2~3の事柄-◆◆


(私の独断と偏見が多々加味されていますがーー悪しからず)
①全例に共通;陰性食品の制限。
②腎虚、瘀血、裏寒(内臓の冷え)、久寒(長く潜む冷え)等の概念と其の治療法が効果的である。
③刺絡吸い玉で奏功している。

 

 

◆◆結語◆◆

 

①『医療が病をつくる;免疫からの警鐘』
安保徹著 岩波書店
現代医学の治療の中にいくつかの根本的な間違いがある

消炎鎮痛剤はーーー限られた短い時間だけ痛みを消失させた後更に交感神経緊張をもたらし、病気を悪化させていく

鎮痛剤の入った湿布も同様である

 

私の拙い経験から、西洋医学一辺倒の時代は、痛み止めと湿布を処方し、患者様からまだ痛むと言われたことが多々ありました。又、手に負えない症例はペインへ紹介していました。しかし、東洋医学の治療法に変えてからは、短時間で治癒へ持ち込めます。又他医院で治療していてかんばしくない症例でも、西洋薬(痛み止め、湿布等)を抜き、東洋医学の色々あるバラエティーに富んだ治療法を提供できますから、どうにかなると考えております。
そして、10年間の経験から疼痛は『冷えると痛む』『通じないと痛む』が真実で、治療法は【温める】【通じさせる】が大原則であると確信しています。
西洋医学を否定する訳ではありませんが、『痛みを止める』の武器しか持たずして、戦っているのではないかと愚考しています。

 

※消炎鎮痛剤の絶対的適応ーー
患部に熱(+)のワンチャンス;せいぜい3日
※消炎鎮痛剤の絶対的禁忌ーー
冷えると痛む、裏を返せば温めると楽になる痛みは、ほぼ絶対的禁忌

 

②『中神琴渓』
山元巌 監修、小田慶一編訳 燎原 再販によせての中で、小田慶一先生は、次のように述べられています。

漢方薬こそ、ファーストチョイスに

僭越ながら、読者の皆さんにも、西洋医学の素晴らしさと同時に、その限界危険性をも認識していただき、無効な西洋薬で患者さんを苦しめた後に、仕方なく「漢方薬でも」ではなく、最初から漢方を使用していただきたい。
誤解を恐れずに言えば、私は、西洋医学が役に立つ疾患は、救急医療のほかは、全体の10%程度に過ぎず、(多分、抗生物質の世界)漢方薬が役に立つ可能性があるのは90%
「但し、適切に使えば」と考えている。
私の症例は、西洋の治療をやって、東洋医学の治療へ変更された方々ですが、効果は全例で充分にありましたから、小田慶一先生のお言葉通り、最初からが望ましいと考えます。

 

③呉澤森先生『鍼灸の世界』集英社新書の中で、西洋医学と東洋医学の交差点であるはずの現代日本で、著者が目撃したものは、現代西洋医学の専横(せんおう)=病者不在の医療状況であったと、日本の惨状を嘆かれ、帰化までされて啓蒙活動をされています。

 

【もっと早く治る治療法がたくさんあるのに、ーーー日本人は自ら葬りさっている】
私の症例からも、5~10年来の病歴の方々が、西洋から東洋へ治療法を切り替える事によって、治癒まで持ち込めていますからーー【もっと早く治る治療法がたくさんあるのに、ーー日本人は自ら葬りさっている】は本当で、医療従事者や患者さんも全くこの情報を知らされていないと愚推します。

 

又、専横(=病者不在の医療状況)について、全員を正常値で判断(画像診断)し、個人の体質は無視しています。症例1)4)7)は全例『腰部脊柱管狭窄症』の診断名です。
中には手術と言われた方もいます。が診方を変えて、治療法も変えるとどうにかなり、うまく行けば、治癒まで持ち込めると思います。

 

(H27.3.9投稿)

記事タイトル一覧表

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東洋医学治療の小経験&雑感

  ー各科別治療経過の詳細ー

西洋医学に疑問と限界を感じ、東洋医学の門を叩いて10年、鍼治療等を取り入れて5年、沢山の経験をし、50歳までの西洋医学一辺倒の治療と比べて、それまでの私の常識をことごとく覆やされました。

そして『何がtrue?』と考えるようになり、その結果西洋医学の治療を受けて今一つ或いはすぐ再発するという患者様が、東洋医学の治療を受けられてどう比較判断されるか?医者が治療効果を判定するのではなくて、医者は医療を提供するだけ、判断は患者様がするべきと考えるようになりました。当院で治療された方々にその旨を話し、理解してくれた方々に本音を語ってもらいました。

『患者様の声』として100数十例集まり、それをそのまま『患者様の声』としてホームページに掲載していますが、今回それをさらにまとめて、詳しい指導内容と治療経過を各科別に公開しようと思い立ちました。私の独断と偏見が多々加味され、或いは西洋医学とは全く反する事項もありますが、それはそれでご勘弁の上軽く流してもらうとして、そのままを真実と思い掲載します。西洋医学の治療でうまく行った方はそれでよし。

今一つ、すぐ再発する、もう諦めたーーそんな方の一助になれば幸です。場合によっては、東洋医学にスイッチを入れ替えると、医者も患者様も救われます。また其の時々の思い、雑感など八女医師会報に掲載したものを一緒に掲載しますのでご笑読下されば、幸いに存じます。

34.東洋医学治療の小経験 ー下腹部愁訴の症例とそれらからわかった2~3の事柄ー


東洋医学治療の小経験
ー下腹部愁訴の症例とそれらからわかった2~3の事柄ー

第4部 東洋医学ひぐちクリニック
樋口 理

下腹部の訴えは、元西洋医学整形外科医には全く関係ない世界でしたーーが、東洋医学の世界に身を置き、漢方や鍼灸を勉強し実践して行く中で、少しづつ対応出来るようになりました。症例もたまり、西洋医学の知識(平成の現代の常識)と正反対の指導をして改善する例もあります。治っていかれたので、指導が正しかった?かと愚考しますが、そのような症例を提示し2~3の分かった事柄を述べさせていただきます。

(症例1)H.M.;73歳、男性
C.C.;常時尿意があり、尿漏れし困っている
P.I.;5年前前立腺癌で手術。以後常時尿意があり、尿漏れし困っている。諸々の医療機関で検査や治療したが効果がない。諦めていたが、知り合いから漢方と鍼治療でどうにかなるかもしれないと薦められて受診。◆年9/8受診。
治療&経過;尿の回数が多いのは、東洋医学では体が冷えないための治癒反応と説明し、陰性食品(毎日野菜ジュース、コーヒー、茶など)の制限を指示。鍼治療は、調気(四関穴、三気海)、頸背部の凝りに置針。尿漏れにたいして、三陰交•腎兪•関元•次髎等に灸を施行。
漢方薬は裏寒(内臓の冷え)に附子理中湯+真武湯、気血両虚に十全大補湯、腎虚瘀血に牛車腎気丸合桂枝茯苓丸加薏苡仁、標治として五淋散を投与。3週間後大分良い。食事のチェックをすると、秋は紅茶等が良いと聞き飲んでいるとのことで制限を指示。10月末、尿漏れ大分良い。尿意は殆ど気にならない。自分で『カレーは冷やしますか?』と質問あり。カレーをよく食べていたが、止めてからさらに調子良いとの弁あり。
【コメント】5年前前立腺癌で手術。以後常時尿意があり、尿漏れし困っているという訴えで、困り果てて受診された方です。東洋医学の冷えると尿の回数が増えるを実感され、陰性食品の制限を実行され、嗜好品のカレーまで制限されて、更に実感されました。『何が本当かわかってきた』とまで最近は言われています。TV等で『水をとれ』というのは日本人にはあわない真っ赤な嘘だとわかったとの事です。『尿漏れ対策の紙おむつもとれそうだ』と自信ありげに言われます。凄い進歩だと関心させられます。

(症例2)S.R.;48歳、女性
C.C.;膀胱炎が治らない
P.I.;3週間前から膀胱炎症状で抗生物質を服用してるが、一向によくならないと受診。下腹部に絞るような不快感がありますとの事。
以前から時々漢方治療されている方です。
治療&経過;膀胱炎は細菌がいれば、抗生物質の独壇場。いなければ、漢方と灸の独壇場かもしれませんと説明。三陰交に灸、腹部の中極(膀胱の募穴)にも灸を施行。灸をしている最中に症状軽減。腹臥位で腎兪に灸頭針施行。鍼治療直後には症状消失。漢方薬は症状消失のため投与せず、三陰交に灸のため、穴にマジックで印しをつける。五カ月後、別件で受診。膀胱炎はその後、起こっていない。
【コメント】この方は膀胱炎症状がお灸だけで治りました。五カ月後、別件で受診。娘が膀胱炎かなという時に、三陰交に灸をしてやったら、症状消失。『私と娘が灸で治ったので膀胱炎は原因は冷えですか?』と質問があり、細菌検査で細菌(ー)なら『ピンポン;冷え』と答えました。東洋医学をするまでは、膀胱炎と縁がなく、尿路が短いから細菌が入りやすいと思っていましたが、経絡の知識や温める治療をしていると、冷えて起こる症例が多いと思います。西洋医学の抗生物質で治らない方は、ほぼ全員鍼灸で温める或いは漢方薬で温めるで治って行かれますからーーー。
この方以外にも膀胱炎で治療;抗生物質を2~3週間服用しているが治らないという方が他にもおられますが、皆さんに共通する治療方針は、陰性食品(水や茶やコーヒなど)の制限と漢方薬や鍼灸で温めるです。その人の体質;寒熱;冷えて症状が起こっている方には温めるが治療方針となります。細菌(+)なら抗生物質の独壇場、細菌(ー)なら漢方と鍼灸の独壇場?(私の独断と偏見が多々加味されていますが)ではないかと、愚考しています。

(症例3)H.S.;72歳、男性
C.C.;膀胱の容量が200mlしかなく、頻尿で困っている
P.I.;10年位前より徐々に尿の回数が増え、過活動膀胱と言われて治療していたが、良くならない。詳しい検査をしたら、『膀胱が縮んで硬くなっている』と言われて治療法は無いと言われた。娘が漢方治療で体調がよくなり、薦められて受診。
治療&経過;『詳しい検査をしたら、膀胱が縮んで硬くなっている』は、東洋医学では人の体は『冷えると縮み硬くなる』と考えますと説明。冷えの治療を中心にしましょう更に説明。陰性食品(茶4杯、コーヒー3杯、牛乳、野菜ジュース1杯)を制限。鍼治療は調気(四関穴、三気海)、頸背部の凝りに置針、腎と膀胱の兪募穴に灸施行。
漢方薬は裏寒(内臓の冷え)に附子理中湯+真武湯、、腎虚瘀血に牛車腎気丸合桂枝茯苓丸加薏苡仁、膀胱の冷えに苓姜朮甘湯を投与。遠方の方でしたが、陰性食品の制限を守られて症状は少しづつ改善して行きました。下半身の冷えをとるために漢方入浴剤の使用と足湯もされました。朝起きてすぐの腰痛も軽減され(2回腰の手術あり)、半年後には尿意も減り回数も減り、あまり日常生活に困らなくなりました。
【コメント】数年前の症例ですが、最近はTVや新聞で『膀胱が縮んでいる』という言葉を薬の宣伝でよく目にします。【冷えて】が抜けています。西洋医学には寒熱の概念や治療法、水毒の概念や治療法がないから、もう一歩踏み込めないでいると思います。この方は察しのよい方で『【冷えて】膀胱が縮んでいる』をピーンと理解されました。検査では『縮んで硬い』と何回も説明を受けたが、原因が分からないと言われたとの由。
【冷えて】で原因が分かった気がすると後日言われました。長い間闘病生活で苦しまれていたからと思います。この例の様に【冷える】原因を患者様に教えてあげて、温める治療をすれば比較的簡単に治る例が沢山あると思われます。経過がおかしい症例や長引く症例では、西洋医学だけでは片手落ちで東洋医学の概念治療法を併用すれば医者も救われ、患者様も救われると思います。

(症例4)◇.☆.;57歳、女性
C.C.;膀胱炎の一歩手前の症状(膀胱が気になってし方がない)
P.I.;◎年5月夫が定年退職して、1日中家に居るようになってから、膀胱炎の一歩手前の症状(膀胱が気になってし方ない);残尿感?何とも言えない違和感が出現。7~8軒の医療機関で検査したが異常はなく、薬を飲んでも全然変わらない。もう半年になるがどうにかしたいと考え、西洋医学以外と思い受診。
治療&経過;在宅主人症候群?と考え、鍼治療は調気(四関穴、三気海)、頸背部の凝りに置針、漢方薬は肝気鬱結として加味逍遥散、気滞に半夏厚朴湯を投与。2週間後かなり良いが後2~3割残っているとの由。陰性食品をチェックし制限。腎虚として八味丸。下半身の冷えに苓姜朮甘湯を投与。経過は波がありながら、3カ月後には殆ど気にならなくなりました。
【コメント】西洋医学では検査で異常がないと治療が始められません。そのためにこの方は、7~8軒の医療機関を受診されています。非常に無駄な医者と患者様双方の労働力と時間と費用が介在しています。在宅主人症候群?をストレス(肝気鬱結)と翻訳し、東洋医学の概念、腎虚や下半身の冷えを考えて漢方薬を投与しすると解決できました。西洋医学だけでは解決出来ない時には東洋医学の出番があります。西洋医学と東洋医学の両方を知っていれば解決出来る症例は沢山あると思われます。東洋医学は取っ付きにくいという印象があるかも知れませんが、知っていると便利です。

(症例5)◇.☆.;69歳、女性
C.C.;40年間膀胱炎ー慢性膀胱炎を繰り返す
P.I.;20歳代より膀胱炎を繰り返し、その度に抗生物質を投与されたが良くならなかった。何時も変な違和感がある。今回膀胱炎症状で残尿感が取れない。抗生物質はもう飲みたくないので、漢方や鍼灸でどうにかして欲しいと◇月13日受診。
数年前に膀胱のズンズン感で受診され、そのときは漢方薬と鍼灸治療で2週間で治りました。
治療&経過;陰性食品の制限を指示。鍼治療は調気、頸背部の凝りに置針。下肢の陰経に灸頭針。膀胱と腎の兪募穴にも灸を施行。漢方薬は裏寒(内臓の冷え)に対して附子理中湯+真武湯、腎虚に牛車腎気丸、残尿感に対して猪苓湯を投与。3日後痛みが無くなった。1週間後右の鼠蹊部が痛い(ズーンとする)と訴えあり。厥陰肝経なので迷わずに当帰四逆加呉茱萸生姜湯を投与。4日後には右鼠蹊部痛の訴えは消失。残尿感は大分良いが、いい時と悪いときがある由。良い時があり、悪い時がある場合は東洋医学では悪くなる原因があり『冷えると悪くなる』からと説明。納得の元に食べ物日記をつけて貰い悪いときを記入するように指示。そうすると、残尿感が起こる原因が少しづつ分かってきました。
カキ、ミカン、ヨーグルト、牛乳、酸っぱい物、鍋をした後、葬式で長時間座った後などーーー患者様も納得され、それ以降足湯などで防衛され、膀胱炎症状は殆ど起こっていません。患者様から一言『知らずに冷やす生活をしていたのが原因だとわかってきたと』
【コメント】東洋医学では、患者様が訴える症状はもちろん大事ですが、その症状が起こる本当の原因を探そうとします。そして訴える症状を治す治療を標治、根本原因を治す治療を本治と言います。残念ながら西洋医学にはこの概念はありません。西洋医学でうまくいけばそれで佳しですが、うまく行かない時は東洋医学のこの概念治療法はお薦めです。ちなみに、この方は食事の大事さ、季節による大事さを実感され、その後は辛くて不愉快な膀胱炎症状はおこされず、あるいはおこしても軽くすぐに治られています。本当の原因がわかったと喜ばれています。

(症例6) X.Y.;36歳、女性
C.C.;排卵痛で寝込む
P.I.;次女出産後よりなんとなく体調不良。1年前より□ル服用しているが、効果なく、排卵痛で酷い時は2~3日寝込む。友人がお灸で生理痛がよくなったと薦められて受診。

治療&経過;東洋医学では生理痛は『冷え』が原因と考えます。女性にしかわからないと思いますが、はげてくる時に、子宮の温度が一定であれば、トマトや卵やボイルをしてかわをはぐとスルットむけるように、スーットはげてくるのですが、冷えてむらがあれば、そこではげにくくなり、痛みが生じます。治療は温めるで三陰交にお灸をすると、生理痛は軽くなり、ついには無痛となります。排卵痛も同じように軽くなり、無痛となります。□ブや◎フ◎リ◎を飲まなくてもよくなります。10年以上□ブや◎フ◎リ◎を飲んでいる方でも良くなります。
生理痛の割合は、韓国•中国では3人/10人、日本では7~8人/10人だそうです。
冷えている女性が多く、それが不妊の原因とも関係ありそうです。東京銀座の寺師先生は、日本中から訪れれてくる不妊症の方々(西洋医学でうまくいかなかった)を漢方治療のみで6000例出産成功されています。
漢方で温めるが効いていると思われます。
【コメント】生理痛や排卵痛の方々には、三陰交にお灸を指導するだけで、軽減します。皆さんは知らずに痛み止めを飲み続け、全く別の治療法があるとは夢にも思わなかったと言われます。女性には、とてつもない見方となると思われる『お灸』。お薦めです。

◆◆症例からわかった2~3の事柄
※冷えの概念を知っていれば、『冷えると縮む•痛む』で、治療法は『温める』で解決できる問題が沢山ありそうである。

(1)膀胱炎
•細菌(+)→抗生物質の独壇場
•細菌(ー)→漢方薬と鍼灸の独壇場かも?
(2)膀胱炎の原因
•冷えが関係しているかも?
(3)生理痛
•痛み止めを使わなくても、漢方薬と鍼灸で十分対応できる

33.東洋医学の小経験 ー『年よりの冷や水』ー


東洋医学の小経験
ー『年よりの冷や水』ー

第4部 東洋医学ひぐちクリニック
樋口 理

平成の現代は新聞やマスメディア他皆こぞって”水飲めブーム” ですが、ー『年よりの冷や水』【生水、生野菜、果物、牛乳、酢ほかの過剰摂取】ーを地でいきとんでもない目にあっている方々を沢山経験します。桑原桑原!!
人は加齢と共に、陰性に傾きます。養生訓(貝原益軒著)では、高齢者の食事の仕方は腹5部以下がベストだと推奨しています。
ー『年よりの冷や水』ー;成語大辞典;主婦と生活社;によると
『日本の江戸時代の慣用句。
【意味】老人が冷たい水を飲んだり浴びたりするの意味から、老人が自分の年と体を顧みずに、若い人のように激しい運動や危険なことなどをすること。老人が無理をして元気さを示そうとすることのたとえ。
【解説】老人が、冷たい水をがぶがぶ飲んだり若い人と同じように激しい運動や仕事をしたりすることは体によくない。それなのに、自分の年を顧みず元気のよい振る舞いをするとき、自嘲ぎみに用いる。また、それをまわりの者が冷やかしたり、注意したりするのに用いる。江戸いろはカルタにこのことわざが取り入れられている。ーー文字絵づくし、奥村政信画、絵本、江戸中期か
【関連語】年寄りの力自慢、老いの木登り。』

”水飲めブーム”を信じて、沢山の陰性食品をとり、ー『年寄りの冷や水』ーを地でいき、とんでもない目にあっている方々を紹介し、東洋医学指導•治療とその結果をしめします。

(症例1)S.Y.;72歳、男性
C.C.;右手関節痛と腫脹
P.I.;6ヶ月位前から、右手関節痛が出現。朝が特に悪く起きるのに手をつけない。
夜中にウズクこともある。洗面、歯磨きなどねじるのが良くない。食事や書字など日常生活上の支障がひどくなり受診。
治療&経過;陰性食品(朝;牛乳、人参ジュース、昼;緑茶2杯、夕;焼酎お湯割り2杯コーヒー2杯)を制限し、鍼治療は調気(四関穴、三気海)、頸背部の凝りに置針。患部は八邪、肘関節に灸頭針。1週間後大分良い。夕方の焼酎お湯割り2杯を止めるとよくなりますよと助言。2週間後、1/3にしているが、良い。更に2週間後、良い。1/3にしているとストレスがたまる。痛いのと、晩酌の欲望とを天秤にかけてどちらをとりますか?と尋ねるとーーしばし沈黙。晩酌の欲望をとり当院の売上に協力するのと、晩酌を止めてあなたが儲かるのとどちらをとりますか?ともう一度尋ねると自分が儲かるほうが良いとのこたえでした。2週間後、どうもないとーーー廃薬治癒。
【コメント】東洋医学の世界では『朝方の不調は、夕食から寝る前の陰性食物の影響』だと考えます。この方は最初は『朝方の不調は、夕食から寝る前の陰性食物の影響』は全く信じられず何十年も晩酌しているのにーーー。私に対して「そげな事は初めて聞いた」と笑い飛ばしていましたが、痛みから逃れたく、夕方の焼酎お湯割り2杯を自制されました。さらに自制を続けられ、それと共に痛みが軽減し、『こげなこつもあるったい』と一言。東洋医学の世界では、痛みは《冷えると痛む》がtrue真実で、治療法はあたためるですが、この方の様に、本当の原因を除いてあげると、治って行かれます。

(症例2)S.F.;81歳、男性
C.C.;右肩があがらない
P.I.;2ヶ月前に脚立より落ちて右肩の骨折をした。骨はつながり、毎日リハビリをしているが、右肩があがらない。こわった感じがあり痛みもある。娘から経過がおかしいから、治療法を変えたらと薦められて10/27受診。
治療&経過;陰性食品のチェックをすると、朝水1杯、緑茶9杯/日、寝る前に牛乳1ℓ出来るだけ陰性食品を制限と指示。鍼治療は右手に八邪、肩関節周囲に灸頭針、頸背部の凝りに置針。上病下取•陰陽交差に従い、左の上口、承山に透針して右肩の運動療法。鍼治療直後に、『感じが違う』と一言その後、右肩がスーットあがるようになり、不思議そうに、『これはなんだ?知らんかった』と更に一言。10/29受診。牛乳他止めている。肩は上がっている。『2ヶ月もリハビリしていたのが、1回であがり、不思議でしょうがない』と。『生まれて81年、知らんかった』と。
【コメント】自分の一番弱い所(外傷があればそこに)に、体質の冷えが影響してくるというのが東洋医学の考え方です(私の独断と偏見が多々加味されていますが)。この方は「何でも飲む」と豪語されていましたが、牛乳他止められて、肩があがるようになりーーTVやマスコミが『水をとれ』を真に受けて、骨粗鬆症の予防に寝る前に牛乳をのもうを守られたのが災いしました。冷えの体質を捕まえてしまいました。”冷えは万病の元;桑原桑原ーーー!!”

(症例3)S.N.;70歳、女性
C.C.;腰下肢痛(ふくらはぎがビャーンとする)
P.I.;半年前位から腹痛と両方のふくらはぎの痛みが出現するようになった。MRIで神経がハッキリ圧迫されているのが原因と言われ、薬で治らなかったら手術しかないと言われた。毎日毎日ふくらはぎがビャーンとして、じゅつなか。親戚から紹介されて受診。
治療&経過;陰性食品(朝;バナナ+ヨーグルト、入浴後;野菜ジュース1杯、水1ℓ/日寝る前;リンゴジュース1杯)を制限。鍼治療は調気(四関穴、三気海)、足に八風、肘関節の膝三穴に置針し、遠位置針ー患部運動療法、頸背部の凝りに置針。漢方薬は裏寒に附子理中湯、気血両虚に十全大補湯、腰下肢痛に桂枝加朮附湯、八味丸を投与。1週間後ふくらはぎがビャーンとする訴え消失。右はかなりよい、左はふくらはぎが痛む。九味檳榔湯を頓用。更に1週間後、左も良い、どうかするとほとんど忘れている事が多い。
【コメント】MRIで神経がハッキリ圧迫されているのが原因で、腰下肢痛(ふくらはぎがビャーンとする)が生じると思い込まれていましたが、東洋医学のアプローチで陰性食品が制限すると、2~3日目から症状が違ってきたそうです。知らずに、健康のために善かれと考えて取っている陰性食品が災いしていました。高齢になってからの陰性食品摂取は本当に『年よりの冷や水』へ一直線となります。

(症例4) E.Y.;61歳、女性
C.C.; 胃痛と腰痛と右頸部痛
P.I.;毎年9月頃位から胃痛と腰痛と右頸部痛が起こる。翌年の3月ころまでよくなったり悪くなったりを繰り返す。又生後まもなくから今まで毎年11月中旬になると霜焼けができる。それもどうにかして欲しい。治らないしかゆくてたまらない。
胃痛と腰痛が起こったときの食事内容をチェックするとミカンを大量に食べた時との事が判明。尋ねると、幼少時よりミカンを食べて体が黄色になっていた。多いときはミカン10個くらいはスーット食べていた。
治療&経過;陰性食品(ミカン、コーヒー)の制限を指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)。頸部は胸鎖乳突筋の圧痛強く、横刺。頸背部の凝りに置針。漢方薬は腹診で臍周囲の冷感強く、裏寒として附子理中湯合大建中湯、八味丸などを投与。臍周囲の冷感は3ヶ月位してやっととれてきました。かなりの冷えです。胃痛と腰痛と右頸部痛は治療に反応し、軽減しましたが、時々訴えられます。おかしいと思い尋ねると、ミカンを温めて1個食べた後に症状がでているようです。それを中止して貰うと、症状がでなくなりました。
【コメント】冷えを捕まえた方は、風呂桶が満杯状態で何か刺激があると、一番弱い所へ、水があふれ出す様に、冷えが入り込み症状をていします。この方は胃痛と腰痛が起こった原因がはっきり分かり大喜びですが、大好きなミカンが腹1っぱい食べれないと少しガッカリされていますが、ーーー11月中旬になり冷えてきました。毎年11月17日が鬼門で手指に霜焼けが出来ますが、今年は様相が変わりました。気温10℃以下の寒冷暴露をしても霜焼けが出来ません。去年までとは全然違うとーー「霜焼けの原因もヒョットしたらミカンですか?」とある日質問があり「何で?」と聞くと、「ミカンを止めて自分の体の不具合が全部よくなったから」と返事があり、「ピンポン、東洋医学の凄さわかったね」と答えました。『冷えは万病の元』はやはり本当だとつくづくおもいました。

(症例5) T.K.;76歳、女性
C.C.;台所仕事で立っていられないくらい足腰が痛む
P.I.;1年前より、腰下肢痛出現。ヘルニアが原因と言われ、内服治療しているが、台所仕事で途中で休まないと行けない。治療しているが徐々にひどくなっている感じがする。痛みが引かなければ、手術と言われている。手術は年だししたくないので、漢方や針灸でどうにかなりますかと依頼あり。
治療&経過;東洋医学では『冷えると痛む』と考えると説明し、年と共に陰に傾くから体を冷やす陰性食品(茶、ミカン)を制限と指示。鍼治療は調気(四関穴、三気海)、肘関節の膝三穴に置針し運動療法、頸背部の凝りに置針。漢方薬は裏寒に人参湯合附子末、腎虚瘀血に八味丸合駆瘀血剤を投与。1週間後かなり良い。2週間後、台所仕事しても休まなくて良い。1ヶ月後ほとんど日常生活に支障なし。
【コメント】この方も(症例4)同様、ミカンが主原因でした。毎食後のミカンを止められて症状が軽減しました。途中でミカンを食べられて痛みが出現し納得されました。『冷えると痛む』は本当で、『年よりの冷や水』若いときと同じように食事をしていると、酷い目にあうとーーーー。
他にも沢山の『年よりの冷や水』の例があります。コーヒー、茶、柿、梨、牛乳、バナナ、トマト等などーーー

当院について

自然
50歳をすぎて始めた東洋医学の治療効果--西洋医学だけの時よりも患者さんの治り方があきらかに違う。
人が本当に治るというのはこんな治り方をするのかと感激しさらに東洋医学のふかみにはまりました。
整形外科以外の他科疾患--例えば眼科、耳鼻科、精神科、皮膚科などの症例もすこしづつ増えて本当に治っていきます。
そんな方々の声があります。
患者さんと私や当院のスタッフはその事を知っていますが、それ以外の人はほとんど知りません。患者さんの了解を得て『患者のこえ』の作成を思いつき、それを公開しようと考えました。色々やってみたが--、体質とあきらめている。年のせいとあきらめている。等等--東洋医学の門をたたいてもらえれば一助になるかもしれません。

医院概要

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【院長】樋口 理
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